2011年度都市計画実習 社会的ジレンマ班 | |
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おわりに |
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結論 我々の班では、はじめは風評被害の軽減を目的として研究を進めていたが、過去のJCO臨界事故の比較からもわかるように、実際に人体に影響が出る可能性がある規制値を超えた農作物も出ている。そういう意味で我々が一概に風評被害であると断定することのできない、非常に複雑な問題であった。 我々はポスターとリーフレットを用いたリスクコミュニケーションにより正しい知識を提供することにより、分析・考察でも述べたように、リスク認知の二因子、未知性・恐ろしさを低減し、消費者に主体的な判断を促すことが出来た。 尚、今後の課題としては以下のようなことが挙げられる。 ・サンプルの属性の方よりが出てしまったこと(今回は筑波大生が大部分を占めている) ・調査の対象を消費者に絞ってしまったこと ・ポスターの他のコミュニケーションツールにコミュニケーションツールを限定してしまったこと ・アンケートの細かい個人情報、分析結果をリスクコミュニケーションに活かしきれなかったこと 提案 @消費者意識を発信する仕組みづくり 今回の事前アンケート調査では、茨城県産の野菜を実際に買い控えているか、という質問に対して、アンケートの対象となった筑波大生(サンプル数306)の約8割が野菜を買い控えていないという結果が出た。消費者の買い控えによる風評被害が問題とされる中で、このような結果は意外であり、また同時に卸売業者や小売業者など流通の過程で、茨城県産の農作物の取引が制限されていることも伺える。(実際にJAつくばの方へインタビュー調査した時にも、震災直後に流通過程で出荷を拒まれるという事態がしばし起こっていたとお話いただいた。)そこで、実際にどの程度消費者が買い控え行動をしているのかをアンケート調査を行うことで把握し、小売や卸売業者に対して、消費者の購買意識を伝えるネットワークシステムが必要ではないかと考えた。まず消費者に対して消費者庁などの公的機関が購買意識に関するアンケート調査を実施する。そのアンケート結果を小売や卸売に伝えることで、小売、卸売業者が消費者に適切な商品提供を行うことが可能となる。市場の仕組みにおいて生産者→卸業者→小売業者→消費者への情報提供システムが確立している一方で、消費者側の意見を小売や卸に活かすためのシステムはまだ確立していないように思える。消費者の意見を小売、卸業者に反映することは、消費者のニーズを高め、適切な商品提供へとつながるのではないだろうか。また、現在消費者庁では、震災による風評被害対策として、「FUKUSHIMAを正しく理解しよう」プロジェクトを展開している。その具体的な対策の1つに“消費生活ウォッチャー”システムの導入が検討されている。このシステムは消費者の意識を把握し、それを消費者行政に反映させることを目的としており、実際には購買意識などについてのアンケート調査を実施するものである。このシステムは私たちが提案するものに近く、消費者の意識を発信する仕組みづくりは現実的で、実現可能なものと考えられる。 ![]() A放射線に関する知識の周知 今回行ったリスクコミュニケーションでは、リーフレットを有効に活用することで消費者の未知性を軽減させるなど効果が見られた。そこで今回私たちが行ったコミュニケーションの幅を広げ、筑波大学外の人にも放射線に関する知識に触れる機会を与えることに意味があるのではないだろうか。具体的な案としては、今回の延長線上としてリーフレットをより多くの人に配布することや、専門家による勉強会の開催などが挙げられる。また、新聞に放射線の関する情報を今後も継続して掲載し、放射線がどういうものなのかを知る機会を身近につくることで、放射線に対する未知性が低減され、農作物の購買などに対して自主的に判断できるようになるのではないだろうか。 B線量検査の徹底 今回の研究では、農家の方へのインタビューを通じて、現在の線量検査が一部の農作物に限定され行われていること、またJA単位での線量検査が行われていないことも明らかとなった。しかしながら、農作物の線量検査品目を充実させる必要があるのではないだろうか。また、検査済みの農作物に関しては、それを証明するラベルを貼ることを提案したい。左に示したものがその例として考えたものである。その農作物が放射線量の検査済みであること、また具体的に計測した線量などの情報を記載し、消費者はその情 報を得た上で、購買するかどうかを判断してもらうのである。一方で、現在の線量検査が追いついていないことから、今後線量検査を徹底することが困難であること、またラベル表示の受け取り方は消費者個人によって異なり、消費者が考えた結果としてその農作物を買い控えることも考えられる。実現可能性としては、特に線量を示すラベルの表示は難しいかもしれない。 C放射線に関する研究の更なる促進 今回の風評被害の発端をたどると、やはり“原子力発電”に辿り着く。今後、このような事故を防ぐにあたっても原子力や放射線に関する研究はますます必要性を増すのではないか。また、放射線の影響を受けた農作物をどのように対処すれば、線量を軽減できるのか、農作物の表面に付着した放射性物質を取り除くことはもちろん、今後心配される土壌汚染からの影響も視野に入れた除染方法などの研究も必要とされるであろう。 参考文献 関谷直也 「風評被害」の社会心理〜「風評被害」の実態とそのメカニズム〜 藤井聡 社会的ジレンマの処方箋 岡本浩一 リスク心理学入門〜ヒューマンエラーとリスクイメージ〜/ 堀洋道 山本真理子 松井豊 編 『心理尺度ファイル』 藤谷築次 岸本裕一 生鮮食料品消費購買行動の京阪神3都市間差異 株式会社ノイルド 社会環境研究所リスク認知の形成要因等に関する調査 謝辞 今回の実習で、インタビューに快くご協力していただきましたJAつくば市の飯竹忠様、農家で野菜ソムリエの資格をお持ちの市村典子様、つくばの風の松岡尚孝様および各関係者様に厚く御礼申し上げます。実習の発表前の最終確認にお付き合いいただいた、公共心理研究室、交通研究室のみなさま的確なアドバイスをいただき、ありがとうございました。最後に、実習中に厳しく的確なご指導を頂き、実習時間外にもお付き合いして頂いた谷口綾子先生、TAの加藤務さん、本当にありがとうございました。 付録 ■中間発表 パワーポイント(.pptx) レジュメ(.docx) ■最終発表 パワーポイント(.pptx) レジュメ(.doc) ■アンケート 事前アンケート(学生用)(.docx) 事前アンケート(一般用)(.docx) 事後アンケート(学生用_実験群)(.docx) 事後アンケート(学生用_制御群)(.docx) 事後アンケート(一般用_実験群)(.docx) 事後アンケート(一般用_制御群)(.docx) ■リスクコミュニケーションに用いた資料 ポスター(.pdf) リーフレット(.pdf) |