アンケート調査の中で予算不足が原因の一つとして多く挙げられたため,各自治体の財政力が災害対策実施状況に影響を与えるのではないかということが考えられた.そこで,総務省の発表する財政力指数を用いて分析を行った.
今回用いた財政力指数[7]は,総務省の発表する数値であり,各自治体の基準財政収入額を基準外政需要額で除したものの直近3年間の平均値である.
各質問に対して「対策をしていない」と回答した自治体と,全項目に対し「対策をしている」自治体の財政指数の分布を箱ひげ図で示した.それに加えて,対策を「している」自治体と「していない」自治体の財政指数について平均値の差の検定を用いて関係を調べた.その結果,住民周知に関しては予算不足が原因で「していない」自治体と対策「している」自治体の平均値の差に有意差が見られ,財政力の低い自治体にとって人員不足が対策の障壁であることがいえた.続いて,避難所運営に関しては,人員不足,専門知識不足をそれぞれ挙げた自治体とのt検定における有意確率が,それぞれ0.01%,0.09%であり,特に大きな影響を受けることがいえる.一方,マニュアル未整備を理由に挙げた自治体とは有意差は見られなかった.最後に,物資・外部支援に関しては,どの項目に対しても対策「している」自治体との有意差が見られず,物資・外部支援の対策は財政力に大きな影響を受けるといえる.
したがって,自治体の障壁に対しては①住民周知の人員不足に対しての財政的支援,②マニュアル整備についての一律的な支援,③避難所運営及び物資・外部支援に関する自治体間の財政力の差を埋めるための方策が必要であると考える.
これまでは,「財政力が高い地域は対策ができている」という前提のもと調査を行ってきた.一方で,財政力が低くとも「対策をしている」自治体が存在することも今回の調査で明らかになった.例えば,大問1・3に対しすべて「している」と回答した中で財政力が0.2に満たない自治体も見られた.