感染症に備えた避難所開設と避難所運営の対応については以下の図1が実施状況を示している.すでに実施している対策が多くみられる一方,「『3密』回避のための新避難所の設置」,「避難施設管理者との調整で必要とされる確認」項目の一部,「感染者発生に即時対応可能な環境の整備」,「避難所の長期的な運営準備」の4つの対応で特に実施が遅れていることが分かった.
必要だが実施できていない割合が多い対策とその理由について以下のように考察した.
感染症対策に備えた新たな避難所開設について,ヒアリング調査ではいずれの市も検討していたが,アンケート調査では現状できていない理由に,「利用可能な公共施設不足」と約8割が回答し,十分なスペースの確保ができない状況が伺えた.よって,避難所での「3密」を防ぐために新しい避難先を要している自治体は,民間の施設など連携を通じて公共施設の代替となる施設を確保する必要がある.
避難所運営側との調整確認状況については,項目「施設ごとのレイアウト設定」(図1)及び「部屋開設の優先度」(図2)の確認ではマニュアルの未整備,「避難所閉鎖後の施設消毒の確認」(図3)では対応に当たる人手不足と専門知識不足が主な対策未実施の要因であった.
また,5割ほどの自治体が未実施と回答した「感染者発生に即時対応可能な環境整備」(図6)についての設問では,同じく感染が疑われる避難者の発見・隔離対応準備には専門知識の不足と人員不足が未実施の主な要因となった.これより,それぞれの対策を実施するまでに,感染症対策を含むマニュアルの改訂と専門知識の共有、資材の調達を迅速に行えるように各自治体へのサポートが必要であると考えた.
他にも長期間の避難所生活に備えた避難所運営への対策に関しては様々な要因があり,主に人員不足や資材不足などが理由として挙がった.自由記述欄には,長期の見通しが立てにくいため対応しにくいという声もあった.よって,見通しが立てやすいようなマニュアルの充実化とそれに伴った予算の増額が必要だと考えられる.
総じて,自治体が感染症拡大に備えた避難所開設・避難所運営の調整をするにあたり,自治体内で対応可能な人員と専門知識の動員不足や限られた利用可能な公共施設,実対策にあたるまでのマニュアル改定に時間が要することが障壁となっていることが判明した.