5-1.アンケート調査を始めるにあたって

 これまでのヒアリングより、学内移動・駐輪・盗難・放置自転車などの自転車に関する問題が 明らかになった。ここから、アンケート調査を行うことで現在の自転車の利用実態を把握し、筑波大生が感じている 問題点を整理することにした。

5-2.アンケート調査の概要

 学生の学内移動を調査するために第1・2・3・体芸エリアの教室を選択し、学年による違いを考慮し大学院生までを対象とした。面前記入法を用いて各講義の終了後にアンケートを行った。
・5月30日(月)2限
心の実験室(2H101) (131人)
都市・地域・環境を探るⅠ(3A416) (69人)
性と生殖の看護学(5C216) (84人)
・5月31日(火)2限
数理解析(3A204) (39人)
・6月3日(金)2限
物理数学(1H201) (13人)
・6月10日(金)2限
画像論(5C216) (43人)
また配布回収法を用いて、3F棟・総合研究棟B棟の大学院生を対象にアンケートを行った。
・6月7日(火)5限時に配布し10日(金)3限時に回収した。 (59人)

 合計438人分のアンケートを回収することができた。

5-3.アンケート質問内容

 質問内容を大きく分けると、以下の3つに分類することができる。
〈移動〉
・主な通学手段とそれにかかる時間
・所有している交通具について
・普段の移動時の利用経路と交通手段
〈駐輪場〉
・駐輪場所を選択する際に重視すること
・当日の前後の講義教室、利用経路と交通手段
・現在の駐輪場所
〈盗難・防犯〉
・自転車の盗難・防犯・メンテナンスについて

5-4.アンケート結果

〈移動1〉
Q:大学内の通学ルートを教えてください
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        図5-4-1:学年別移動経路
 学内移動にペデを選択する割合は、1年生で81%、2年生で61%、3年生で68%、4年生で21%、 大学院生で15%となった。一方、学内移動にループを選択する割合は、1年生で18%、2年生で33%、3年生で28%、 4年生で69%、大学院生で73%となった。
 この結果から、学年が上がるにつれて学内移動にはループを選択する割合が増える傾向にあることがわかった。

〈駐輪場1〉
Q:普段駐輪場を選択する際に優先する事項を教えてください
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        図5-4-2:駐輪場における優先事項
 駐輪場を選択する際に「講義場所に近い」ことを優先する学生が最も多く、7割となった。

Q:前もって棟毎に停めるところを決めていますか
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        図5-4-3:駐輪場所の想定
 登校する前に自転車を止める場所を決めているという学生が8割以上いることが分かった。

Q:もし駐輪場が混んでいたらどうしますか
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        図5-4-4:駐輪場混雑時の対応
 「別の空いている駐輪場を探す」と答えた人が最も多く57%となったが、駐輪場の混雑の原因となる 「構わずはみ出ても駐輪する」と答えた人がその次に多く30%いることが分かった。

次に、駐輪場を選択する際に優先する項目と、駐輪場が混んでいたときの行動パターンが関係しているのかを調べる ためにクロス集計を行った。
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  表5-4-1:駐輪場の優先項目と駐輪場混雑時の対応についてのクロス集計
 表5-4-1から、「講義場所に近い」と「屋根がついている」を優先すると答えた人は、駐輪場が混んでいたときの行動 の傾向が似ており、「構わずはみ出ても駐輪する」割合が比較的高いことが分かる。また、駐輪場が「空いている」 ことを優先すると答えた人は「別の空いている駐輪場を探す」割合が最も高いことが分かった。

〈防犯・盗難〉 Q:自転車の盗難にあったことがありますか
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        図5-4-5:自転車盗難被害経験
 自転車の盗難にあったことのある学生は16%いることがわかった

Q:鍵をいくつかけていますか
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        図5-4-6:自転車の鍵の数
 77%の学生は自転車の鍵は1つであると答えた。

Q:鍵をかけ忘れることがありますか
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        図5-4-7:鍵のかけ忘れ頻度
 学生の約半数は鍵をかけ忘れることがあることがわかった。

 次に、盗難にあったことがある回数と、かけている鍵の数に関係があるかを調べるためにクロス集計を行った。
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        表5-4-2:自転車盗難被害回数と鍵の数についてのクロス集計
 表5-4-2から、盗難にあったことのある人(41+10+8=59人)のうち、鍵を2つ以上かけている人(5+2+1=8人)は14%しかいないことがわかった。

同じように、盗難にあったことのある回数と、鍵をかけ忘れる頻度に関係があるかを調べるためにクロス集計を行った。
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        表5-4-3:自転車盗難被害回数と鍵のかけ忘れ頻度についてのクロス集計
 表5-4-3から、盗難にあったことのある人(40+10+8=58人)のうち、60%にあたる人は鍵をかけ忘れやすい人(1+1+4+1+2+17+5+4=35人)であることがわかった。

〈移動2〉
Q:きょうの前後の講義教室や食堂を教えてください。またその場所からとその場所への交通手段、利用経路につい て教えてください。
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        図5-4-8:移動経路・手段別ODマップ
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        図5-4-9:学内移動の利用経路割合
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        図5-4-10:ペデ上移動の手段分担率
 図5-4-8より、長距離で学外に起点あるいは終点がある場合は主にループ道路が利用されているが、学内移動ではペデストリアンを利用する場合がほとんどであるようだ。図4-1-9より、学内移動でペデストリアンを利用する場合は7割にも及ぶことがわかる。
 また図5-4-10によると、距離が長くなるにつれ徒歩の割合が減り自転車が増加するが、400m(約5分)以内の移動でも約半数の学生しか徒歩を選択していないことがわかる。

〈駐輪場2〉
Q:今現在あなたの自転車を駐輪している場所を教えてください
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        図5-4-11:滞在場所別自転車駐輪場所の分布
 数や程度に差はあるが、どの場所でも、その授業が行われている建物の付近に駐輪が偏っていることがわかる。やはり目的地への近さというものが、駐輪場所を選ぶうえで重要となっているようだ。

5-5.アンケート調査についての分析・考察

〈移動1〉
 学年が上がるとループを移動経路として選択する割合が増えた。これは4年生以上がループに近い3F棟・総合研究棟B棟の 研究室での活動が主となるためではないかと考えられる。ここから、ペデストリアンデッキ上の混雑は主に3年生以下の 学生によって引き起こされていることとなり、授業間の教室移動の多い3年生以下にもループを使ってもらえるような工夫 が必要であるといえる。

〈駐輪場1〉
 「講義場所に近い」駐輪場が最も優先順位が高く、人気であるといえる。また、駐輪場が混雑している状況でも 「構わずはみ出ても駐輪する」人も3割いることがわかった。このことから、講義場所に近い駐輪場を増設することは できないか、また駐輪場をきれいに使ってもらえるような工夫が必要であると考えた。

〈防犯・盗難〉
 クロス集計の結果から、自転車盗難の被害にあってもその後で対策をとっている人(鍵を2つ以上かけている人)は14%に 留まっていることがわかった。また日ごろから鍵をかけ忘れやすい人が盗難にあいやすいことがわかった。このことから、 駐輪場において盗難対策をしやすい環境が必要であると考えた。

〈移動2〉
 学内移動でペデストリアンが多く利用されるのは、ループ道路を利用するより速い、もしくは距離が短い、快適であるなど の考えがあるのだろう。交通を分散させるには、そういった学生のイメージを変え、学内移動でループ道路を利用すると いう選択肢を加える必要がある。
 徒歩移動が400m以内でも約半数というのは、後の移動のことを考慮して徒歩を選ばないという場合もあるだろう。 しかし大半は、やはり自転車のほうが速いという考えがあるからであろう。自転車移動での混雑、駐輪の手間を考えれば、 徒歩のほうが速く、快適になる場合もあるということを知らせる必要があるのではないか。

〈駐輪場2〉
 授業が行われる建物の近くに駐輪するということだが、駐輪台数調査でもわかったとおり、建物に近くても空いている 駐輪場がある。つまり、その存在を知らないか、そこが近いということを知らない学生が多いということである。駐輪の偏り をなくすためには、これらを知らせる必要があるのではないか。