論旨
私たちスマートキャンパス班はまず実習テーマを決めるにあたり、筑波大学をより“スマート”なキャンパスに近づけるべく、
まずはKJ法を用いて学内の現状を今一度見つめ直してみることにした。
その結果、学内には時代の変化や学生の行動に満足に対応できていない部分が多く見受けられ、キャンパスの改善の余地がうかがえることがわかった。
そして、それらの様々な問題を筑波大学キャンパスリニューアル計画に基づいて分類してみると、施設、エネルギー・資源、交通の3つの観点に分けられたが、
今回は班員の間でも特に意見があがった学内の自転車にまつわる問題を扱っていくことにした。
まず始めに学内における交通問題を把握するために、施設部、学生生活課、支援室、交通安全会、総務部でそれぞれヒアリングを行った。
その結果、学内の交通についての問題として、放置自転車、学内の移動経路、駐輪場、盗難についての問題が特に挙げられることがわかった。
放置自転車の問題点としては、撤去するまでに時間がかかること、3月末~10月まで放置自転車が駐輪場に残ったままであるということが明らかになり、
放置自転車の撤去システムに問題があるのではないかと私たちは考えた。
また、学内の移動経路、駐輪場、盗難に関しては、更なる実態の詳細を把握することが必要であると感じた。
そこで、まずは学内の駐輪場の現状を自分たちの目で確かめるため、カウンターによる計数調査を行った。
その結果、自転車の総台数に対する駐輪場の容量は確保されていること、駐輪場の利用状況にばらつきがあり、
学生に認識されていないだろう駐輪場が多いということが分かった。
次に、学生が学内交通について感じている問題や実際にどんな行動をとっているかということを整理するため、アンケート調査を行った。
その結果、主に以下のことが分かった。
・駐輪する際に教室への近さを優先したり、枠外にはみ出してでもとめたりする学生が多い
・5分以内といった短い移動でも約半数しか徒歩を選択していない
・1年生の多くはペデを利用する傾向にある
・盗難被害にあっても対策をとる人は少なく、盗難対策をしやすい環境が必要である
これらの調査から明らかになった問題への改善の方策として私たちは以下の3つの提案を考えた。
・「たてる」:縦置き型駐輪ラックの導入
・「そめる」:地図上での色分けによる情報提供
・「はる」:自転車登録制
一つ目の「たてる」は省スペース化、違法駐輪の減少を目的としたものである。
縦置き型駐輪場は、壁面にラックを取り付け、そこに自転車を立てて駐輪するものであり、省スペース化が期待される。
また、これを用いることにより建物近くの駐輪場の増設、今まで違法駐輪が多かったスタンドのない自転車の駐輪場所確保、美観の向上も可能となる。
実習後に大学内で縦置き型駐輪ラックを設置可能な場所を検討している。
二つ目の「そめる」は、駐輪場・ペデの混雑の分散、徒歩移動の促進を目的としたものであり、今回は特に3A棟に掲示するものを作成した。
具体的には、以下の3つの内容である。
①3A棟から歩いて5分で行ける建物を距離別に色分けしたマップ
②プレ調査の結果より、平砂宿舎から3A 棟まではペデよりも走りやすいということを示したループ利用促進のマップ
③3A棟の入り口から1分以内で行ける駐輪場を混雑率別に色分けしたマップ
色分けしたマップにより視覚化し情報提供することで、私たちが提案する行動を学生が自ら選択することを促す。
最後の「はる」では放置自転車の迅速な処理を目的とした自転車登録制の導入を提案する。
これは東京工業大学で現在実際に行われている事例を参考にしたものであるが、登録システム、撤去体系を筑波大学の規模に合わせて細かく定めることで、
撤去にかける時間・手間、駐輪スペースの無駄の削減を目指す。
また、この制度を導入することで、登録者には大学周辺の自転車屋で受けられるメンテナンス割引、
自転車屋には広告費の優遇・メンテナンス補助金の提供など様々なメリットが生じるようになっている。
これら3つの提案を踏まえたうえで更に中長期的な提案をする。
例えばIC駐輪場の導入、スマートフォンアプリの活用、ループ整備などである。
利便性の高いシステムの提供や走行環境の向上を図っていくことで、スマートモビリティの実現、
更にはスマートキャンパスの実現に貢献することが可能となるのではないかと私たちは考えるのである。