t検定、重回帰分析の結果から仮説と照らし合わせると、以下の図のようになった。
この図より、属性から意識に影響する要因として、仮説はほぼ正しかったといえるのではないだろうか。
t検定より、特性不安・性別・居住形態別に行動や意識を見た結果、それぞれの属性間で買い物、外食回数や、意識、また意識の緩み度合いに有意差が見られた点がいくつかあった。
そういった属性を対象に買い物回数を減らす工夫や、意識の緩み度合い・スピードを緩やかにさせる施策をとることで、「出る杭」を打つことができるのではないか。また、その施策には主に感染防止意識を組み込み、緊急時には罪悪感に働きかける要素をもった施策を打ち出すことが効果的といえる。
重回帰分析の結果から、感染防止意識の増加と罪悪感の増加が外出の抑制として働くことが分かったため、それら2つの意識に働きかけることが効果的であるといえる。
そこで私たちは社会情勢に合わせて、対策を変えることが重要であると思う。現在の社会としては自粛を緩和するムードであり、感染防止に気を配らせながら外出を促している状況である。そのため、現在行うべきは感染防止意識を増加させる働きかけである。
また、もし仮に現在の社会情勢が変化し、感染者が爆発的に増え始めるなどすれば、外出を強く抑えることが必要になる。そのときに行うべきは罪悪感を増加させる働きかけであるだろう。
以下に罪悪感、他人評価、感染防止意識に働きかける具体的な対策を挙げている。
−罪悪感に関して−
北折(1998):お願い、普通の禁止、強い命令、被害の提示、制裁の提示の5つのメッセージタイプのうち、被害の提示を入れたメッセージが最も効果がある。
→店頭でコロナウイルスに関する注意喚起を行う上で、被害の提示をメッセージに入れると罪悪感を生起させることができる。
−他人評価に関して−
・EX.1)Instagram「おうち時間スタンプ」
「おうち時間スタンプ」を使ったストーリーを載せることで他のユーザーがソーシャルディスタンスを実践している様子がわかる。
→今回の分析結果から他人評価を高めることで行動の抑制に効果があるとわかったので、Instagramの取り組みは効果的だと言える。
・EX.2)茨城県・つくば市の政策
感染防止意識を高めようとするものは、次のように多数見受けられた。
【茨城県にお住いのすべての皆様へ】
・「平日・休日を問わず,不要不急の外出自粛」(4/14~5/6の間)
【広報つくば臨時号 新型コロナウイルス感染症に関する情報】
・「1.つくば市内での外出は曜日や時間を問わず最小限でお願いします。
2.東京都市圏への移動は極力控えてください。
3.緊急事態宣言の対象地域から帰省された方は2週間の自宅待機をしてください。」
「一人ひとりが力を発揮する場面」
「つくば市はもちろん、日本にとって極めて重要な期間」
【新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために3つの密を避けましょう(つくば市HP)】
・「3つの密を避けましょう。」、「「新しい生活様式」(を)(中略)ご自身の生活に取り入れてみましょう。」
【今こそ始める感染症に負けない身体づくり(つくば市HP)】
・「今こそ、感染症に負けない身体をつくる健康習慣を始めましょう。
しかし、罪悪感を高めるものは次のようなものしか見当たらなかった。
【家庭ごみの捨て方のお願い(つくば市HP)】
・「以上のことを心がけていただくことにより、ご家族だけでなく、近隣の方々や廃棄物処理業者の方々にとっても、新型コロナウイルスなどの感染症対策となりますので、市民の皆さまのご協力をお願いします。」
【広報つくば臨時号 新型コロナウイルス感染症に関する情報】
・「つくば市はもちろん、日本にとって極めて重要な期間」
確かに罪悪感を持つような記述を、前面に出して広報をするのは難しいのだろうが、「あなたの行動は周囲にも影響する」という事実を記載するだけでも罪悪感をもたらす効果はあるだろうから、そのような記載をすべきではないだろうか。
−アンケート対象−
今回の結果は筑波大生90名のアンケート対象者に限ったものであり、社会の全体像までは見えたとは言えない。
今後アンケート対象を広げることで、より正確にマクロ(社会全体)とミクロ(属性・個人単位)での要因を明らかにできると考えられる。
−アンケート内容−
今回の調査では質問しきれなかった
・情報取得レベル
・情報取得源(テレビ、SNS、HPなど)
・状態不安(コロナに対する恐れ、当事者意識)
について質問を設けることで、さらに正確に行動変容の要因が判断でき、社会全体の対策につなげることが出来る。
−状況把握−
つくば市などの行政や、自分の所属する団体(会社・学校)の掲示する情報の収集を行い、その情報がどれくらい市民に周知されているのか、正確に解釈され行動に移せているのかなど、情報の「受け手」と「送り手」のギャップを明らかにする。
そしてそのギャップを解消する方法が実践的な提言につながる。
↓
どのような情報が市民の行動を変化させ、そのために情報を正確に伝えるにはどのような手法が最も効果的なのかを解明することで、実践につなげられる。
本実習を進めるに当たりまして、非常に多くの方々のご協力をいただきました。
特に授業内でアンケート周知のための時間を設けてくださった先生方をはじめ、調査や分析にご助言頂いた先生方、円滑に実習を進めるための環境を整備してくださった技術職員の方々。
また、3週間のパネル調査に参加・協力いただいた学生の方々に、班員一同、心より御礼申し上げます。
筑波大学
システム情報系 上市秀雄 様
白川直樹 様
谷口綾子 様
人文社会系 清水知子 様
数理物質系 伊藤雅英 様
芸術系 渡和由 様
生命環境系 松井圭介 様
大学職員、学生の皆様
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最終レポート | ダウンロードはこちら(file.pdf) |
Giancarlos Parady, Ayako Taniguchi, Kiyoshi Takami:Analyzing Risk Perception and Social Influence Effects on Self-Restriction Behavior in Response to the COVID-19 Pandemic in Japan: First Results,2020 | https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3618769 |
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岩本美江子, 百々栄徳, 米田純子, 石居房子, 後藤博, 上田洋一, 森江堯子,状態-特性不安尺度(STAI)の検討およびその騒音ストレスへの応用に関する研究,日本衛生学雑誌,43 巻 6 号,pp1116-1123,1989 | https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh1946/43/6/43_6_1116/_article/-char/ja/ |
北折充隆:社会規範からの逸脱行為に対する違反抑止メッセージの効果に関する研究,名古屋大學教育學部紀要. 心理学,Vol45,pp65-74,1998 |
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjesp1971/40/1/40_1_28/_article/-char/ja/ |
小泉 直子, 藤田 大輔, 二宮 ルリ子, 中元 信之:State-Trait Anxiety Inventory(STAI)の統計学的検査項目減数化によるスクリーニングテスト,産業衛生学雑誌 1998 年 40 巻 4 号 p. 107-112, | https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/40/4/40_KJ00001990548/_article/-char/ja/ |
つくば市 HP:新型コロナウイルス感染症に関する情報 | https://www.city.tsukuba.lg.jp/shisei/1010123/index.html |
J-CAST ニュース:【コロナ年表】ひと目で分かる新型コロナ騒動と世界・日本の動き, |
https://www.jcast.com/2020/04/24384938.html |