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2.3 提案実現のための調査


2.3-1 調査目的
 本調査の目的は以下の3点である。これにより果樹を植えるという提案に関してその実現性を明らかにすることを狙いとする。
@ 植えるのに適した樹種の検討
A 学内での植える場所の検討
B 果樹の管理方法・体制の検討

2.3-2 現地調査
 筑波大学内とその周辺において実際に植えられている果樹を確認するため、2013年5月末〜6月上旬に旧竹園三丁目公務員宿舎周辺と筑波大学内各所で現地調査を行った。その結果、竹園周辺ではモモ、ウメ、クリなど、ミューズガーデン(芸術学系棟北)では3種類のブルーベリー、3K棟前庭にはサクランボ、大学西バス停裏にはぶどうが植えられているのが確認された。学内のものにおいては以下の図2.9に実際に現地の写真(山根優生撮影)を載せた。

2.3-3 ヒアリング調査
 筑波大学に果樹を植樹するにあたり、植えるべき樹種の選定や管理に関する注意点を明らかにするためヒアリング調査を行った。日時は2013年5月31日(金)14時から16時半、対象は生命環境系・生物資源生産学領域の瀬古澤由彦助教である。  瀬古澤助教からの果樹の管理に関する助言を以下にまとめた。
@ 高品質を求めないなら様々な種で可能
A 四季を感じられる落葉樹がいい
B 手間・コスト面を考え、農薬は使わないほうがいい
C 果実は回収すること
D 虫害に強い種、寒さに強い種を選ぶ
E 定期的・永年的な管理を考える

 また、瀬古澤助教のアドバイスで学内に植える果樹としてフェイジョアを勧めていただいた。フェイジョアはあまり一般的に知られていないが、特徴として、常緑の果樹木であり5〜6月に花を付けること、実は秋に食べごろを迎え、西洋なしとももを合わせたような味であること、寒さに比較的強いことなどが挙げられる。またフェイジョアは刈り込みによって自由な形に剪定できること、実だけでなく花びらも食べられること、図2.10(右:「自然農法に憧れて」より引用/左:山根優生撮影)に見られるように花は赤く、実は緑であることも着目すべき点である。これらの特徴から提案に相応しい果樹と考え、植える候補の一つとした。

2.3-4 文献調査
 樹種を検討するにあたり、虫害、鳥害、病気について知るため、文献調査を行った。
1)虫害について
害虫には葉や幹を食べてダメにしてしまう食害虫と枝や葉の成長を阻害してしまう吸汁害虫の二種類がおり、コガネムシやカイガラムシに代表される食害虫の対策は、こまめに葉などをチェックし、発見し次第ブラシで落とすこと、コガネムシについては酢をまくことで駆除を行うことができる。 一方アブラムシに代表される吸汁害虫は殺虫剤をまいて駆除することのほかに、無農薬で駆除するにはアブラムシの苦手なハーブ類を周りに植えることで対策できる。

2)鳥害について
つくばにおいてよく確認されるのは鳩・ムクドリ・カラスの3種であると考え、これら3種に対する鳥害についての調査を行った。考えられる鳥害の内容は、食害(鳥が果実を食べてしまう)と糞害の2点である。対策としては鳥を果樹に寄せ付けないことが第一である。具体策としてカラスとムクドリはマイナスイオンを苦手とするため、マイナスイオンを発生させるマジックテープを果樹につけることで寄せ付けないようにできる一方、鳩にはマイナスイオンは効果がないため、鳩の苦手な磁石や反射光を出す物の設置やニコチン水をまくことにより対策する。

3)樹木の病気について
果樹がかかりやすい病気の主な原因はカビや細菌である。代表的なものは、として葉や実が黒っぽくなる症状が出ることで知られる炭疽病、黒星病、すす病の3種が挙げられ、それぞれに適した薬を散布することで防ぐことができる。

虫・鳥害、または病気による樹木の異常は早期発見による対処が必要とされる。我々は通行人などの目を最大限に活用することで果樹の異常を見つけ対処し健康状態を保つことが可能であると考えた。このことを考慮し、果樹を植える場所の選定条件の一つを「人通りの多い」地点であることとした。

2.3-5 アンケート調査
 アンケート調査は2013年6月6日(水)1,2限の「土地利用・地区整備計画」と6月7日(木)5,6限の「現代まちづくりの理論と実践」の授業で行った。これによって得られた有効回答数は77となり、その内訳は男性46名、女性31名であった。  アンケートでは始めに、果実のある木とない木、花の咲いた植え込み、緑だけの植え込みをそれぞれ組み合わせて計8枚の異なる形態の景観写真を用意した。これらについて「楽しい」と感じる順に1~8位までの順位を付けさせ、集計結果を果樹の景観が好まれる度合の指標とした。その集計結果を示したものが図2.11である。この図中の赤い丸で示した景観の組み合わせにおいて果樹のある景観のほうが果樹のない景観より人気があることが分かった。一方で1位と4位では果実の無い景観のほうが好まれるという結果となった。この結果から、一般に色味のあるみどりの景観が好まると考えられる一方で色の氾濫した景観は逆に好感度が下がるといえる。

 更に石の広場前に夏みかんの木を植えたシミュレーション画像を作成し、「楽しさ」を4段階で評価させた。結果として約63%の回答者が修景後の景観を、良いまたは非常に良いと回答した。図2.12はその際に用いた地図と修景写真である(地図:「google map」より引用/写真:山根優生撮影、加工)。
 以上から筑波大学生は果樹のある景観を楽しいと感じる人が多いことが確認できた。このことから果樹のある景観はおおむね学生に支持されることが予想できる。

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