高校生共同まちづくり
1.背景
高校の存在と活動について
土浦市内には10校の高等学校があり、その数は県内2位です。これは土浦市の人口が県内5位であるのに対して多いといえます。
土浦第一高等学校・附属中学校では探究学習という時間があり、各自で課題を設定して探究をする授業が展開されています。2022年度は中学1年生・高校1年生・2年生の一部がSDGsの観点から課題を設定しています。まちづくり、特に土浦市の課題を取り上げているグループも多く存在しました。
この活動の課題点として二点あげられます。
第一に、高校生や教職員への負担の大きさです。教員は探究学習活動で常に前例のないことを教えることが求められており、土浦第二高等学校では新たに令和4年度から探究活動が開始したものの「現在の教職員への負担はマックス」と言及しています。また、生徒も議題を掘り下げるほど時間を費やす必要があるという面で、部活動や他の学業との両立は厳しく、同校では、興味のあることを文字通り「探究する」ほど深め、発信している生徒は1名にとどまっていると言及していました。
第二に、せっかくまちづくりというテーマを取り上げているのにも関わらず、継続性がないことがあげられます。高校生は1年間で発表をまとめることが求められ、主体的な活動であっても1年間を区切りとして終了しているものが存在します。これは生徒側の問題ではなく、探究学習の仕組みや高等教育の在り方における課題といえます。具体的には、さらに行政や他の組織などが介入し、継続性を持たせることが求められていると考えました。
このことで”未来”の土浦に世代を受け継いでいくこと、「世代をめぐらせること」を目指します。
広報の連携不足
土浦市の活性化やまちづくりに関係する活動は、市内各地で行われています。しかし、その情報は十分に市民に届いていないといえます。例えば土浦第一高等学校の生徒の活動である「私の好きな土浦」 は、フォトコンテストなどを通じて土浦の魅力を積極的に発信していたものの、市役所の商工観光課として幅広く認知・宣伝されているわけではありませんでした。 また、土浦第二高等学校では、高齢者向けのフレイル予防動画作成の取り組みをしていましたが、市のYouTubeチャンネルへの投稿とどまっており、実際に必要としている人に十分に情報が届いていないことが考えられます。
さらに、市の「アクティブタウン土浦」の動画作成や、VSC株式会社のいばらきVチャンネル内での土浦の魅力発信などがあるものの、これらは十分に連携しきれていないのではないかと考えます。
令和二年度市民満足度調査では「地域の特性を生かしたまちづくり」の満足度がほかの項目に比べ著しく低く、平成27年度からの低下率は0.17ポイントで全項目の中で最も大きくなっています。活動が正しく広報され、情報が行き届くことが不可欠であると考えます。
2.概要
はじめに、以下では地域活動家を、学生ではなく、行政の立場でもない、土浦の活性化のために活動をしている人と定義します。土浦の活性化のための取り組みは、職業として行うものも、無報酬として行うものも含むものとします。
本章ではこれまでの高校生、行政、民間の地域活動家が個別で行ってきたまちづくりに関する活動を一体化して行うことを提案します。
上の図のように、高校生のSNS活用スキルやITスキル、行政の市民からの信頼感、地域活動家の活動を実現するスピード感というそれぞれの強みを生かして、効率的なまちづくり活動を実現します。アウトプットの場として、アルカス土浦やURALA内の県南生涯学習センターを市が設けます。具体的には、定期的な発表会や展示を開催します。また、現在連携しきれていない広報の一体化も取り入れます。本事業「高校生共同まちづくり」事業としてのSNSアカウントやホームページを作成し、一括運用します。
3.効果
この提案には3つの効果とそれによる波及効果が期待されます。
第一に、この事業により、現在の高校生のまちづくり活動の課題であった高校生と教員の負担の軽減があげられる。教育現場では、指導要領にないことを教えることが行政や民間の市の内情を知っている主体の介入で助けられます。
第二に活動の情報の集約により、継続性と実現可能性の向上も期待されるといえます。高校生にとってはこれまで提案にとどまっていた広報も、地域活動家の手助けで継続したり、行動を起こしたりすることにつながりやすいと考えます。
第三に、広報の拠点を集約化することで、情報が市民に行き届くことが期待されます。
以上3点の効果が高校生を中心に土浦市への愛着を形成し、その波及効果として、10年後、20年後に同じ活動をしている高校生を、応援・支援する雰囲気が醸成されることで、土浦を学びがめぐる学生のまちとして活気づけることも期待されます。