1−1.現状
JR常磐線土浦駅周辺地区は、市内の商業の中心であり、URALAやペルチ土浦などの商業施設が集積している。しかし、つくば市の発展や郊外の大規模ショッピングセンターのオープンなどの影響を受け、中心市街地の空洞化が顕著になっている。 2003年、駅前のにぎわいの創出として「土浦駅前北地区第一種市街地再開発事業」(以下「北地区再開発計画」)による複合施設棟及び住宅棟からなる再開発ビルが計画されたが、建設資材の高騰や、事業参加の公募が無かったことから、計画の見直しがされている。現時点での計画としては、新図書館などが入る予定の複合施設棟の単独整備計画が持ち上がっている。 また現在、駅前の通過交通による渋滞が問題になっており、これを解決すべくいくつかの都市計画道路の建設が計画されている。
1−2.課題
現地調査などから得られた土浦地区の課題として、まずまちの元気がない、という印象が大きい。また、駅前の「顔」となる施設・景観がなく、土浦駅をイメージする風景がほしい。中心市街地のシャッター商店街化、駅西側の慢性的な渋滞も大きな課題である。
1−3.まちづくり方針
以上の現状と課題を踏まえ、土浦地区のまちづくり方針は 「絆みえるまち」 とする。土浦駅周辺の一体的な整備を通して、地域住民の絆を深め、活発に外部にアピールすることを目指す。 さらにここでは、駅周辺の土地利用を以下の5つのゾーンごとに分け、各地区が異なる役割を担う効率的なまちづくりを目指す。今回の提案では、特に重要だと考える@北西部再開発エリアA東部エリアB商店街エリアの3地区について言及する。
1−4.提案
1−4−1.駅前北西エリア整備「きずなプロジェクト」 土浦駅前の「顔」を創出すべく、北地区再開発計画と絡めた駅前の一体的な再開発事業を提案する。
T 西口周辺の再開発 T−A 駅前広場「きずな公園」の整備 再開発事業の一環として、右図で示した地区に駅前 広場を整備する。土浦駅、再開発ビル、モール505、 ウララなどに囲まれた、水環境豊かな都市公園を整備 することにより、駅から北側施設への視認性、各施設間の回遊性の向上が期待でき、 土浦駅の顔と呼べる空間の創造を目指す。
T−B モール505 この施設は駅近くに立地しながら、駅との延長線上に高層マンションや低層密集店舗などの未利用地をはさむため、視認性やアクセスの面で損をしている。今回の再開発プロジェクトにより視認性、アクセスの改善が見込まれるため、さらなる施設の有効活用の方法として、日常的に若者の利用が期待できる専門学校や、地域の主婦や高齢者を対象としたカルチャースクールの誘致を提案する。それに付随して、学校帰りの学生が立ち寄れるような飲み屋など、専門学生や再開発ビルの利用者向けの店舗も整備する。また、現在URALAにある生涯学習プラザのような、高校生向けの学習スペースも用意する。 また、現在のモール505は薄汚れた外壁や、無秩序に設置された看板などにより、見る者に不快な印象を与えてしまう恐れがある。駅前の再開発によって、土浦駅西口から一望できるようになるモール505を現在の姿のままにしておくことには問題があると考えた。 そこで、透明感のある白い外壁、大きく開かれた窓など、誘致を目指す専門学校の新校舎をイメージした修景を行った。さらに、周辺の劣悪な道路環境の整備も考えている。
T−C 再開発ビル 再開発ビルに関しても、現在市が計画している「北地区再開発」を踏まえた新しい計画を提案する。基本的には市の計画と変更はないものの、大きく変わる点は、駅前広場の整備によって立ち退く商店や住宅の移転分を増床することである。駅至近のビルに入っているパチンコ店や周辺の飲み屋などは、再開発ビルの地下への移転を行い、顧客需要に応えながら景観を損なわない商業立地が可能となる。
U 通過交通に対するロードプライシング 土浦駅西口の渋滞緩和のために、西口に進入する自動車に対して500円のプライシングを導入する。なお、適用圏域内の居住者、公共交通、タクシー、駅前商店の業務用トラックなどは適用外とする。これによって通過交通を抑制し、駅前の道路混雑の緩和を図り、快適な歩行者空間の実現を目指す。 ロードプライシングによる影響を見るために、JICA-STRADAによる混雑度比較(左:ロードプライシング無、右:ロードプライシング有)を行った。図より、ロードプライシングによって、土浦駅西側の道路混雑が減少することが分かる。
V 土浦駅東口エリア整備 V−A 自動車用ロータリーの整備 西口のプライシングに伴って、東口の交通量は増加すると考えられる。特に、出勤・退社時間帯の送迎目的の自動車が、西口の分まで東口に集中する恐れがある。東口の送迎目的の自動車は、すでに駅前のロータリーいっぱいに存在しているため、何らかの対策が必要になる。 そこで、東口前の平面駐車場の土地に、自動車用ロータリーを整備することを提案する。これにより、送迎目的の東口に集中する自動車を受け入れることができる。現存する平面駐車場の容積については、東口立体駐車場の空き駐車分でまかなうことができる。
V−B ペデストリアンデッキの整備 西口のプライシングによって、周辺施設の多くの利用者が東口の立体駐車場を利用するようになると思われる。しかし、立体駐車場は駅の利用者を想定したものであり、西口へのアクセスには大変不便である。その解決のために、東口の立体駐車場から西口の再開発ビルに伸びるペデストリアンデッキの設置を提案する。
1−4−2.商店街シャッターペイント「きずなロード」 シャッター商店街の最も望ましい解決策は、商店の活性化によって活気あるまちを実現することであろう。しかし、郊外や隣接都市に大規模ショッピングセンターが建設され土浦駅前の空洞化が顕著になっている現状を見る限り、その理想を実現することは限りなく難しい。
このような現状を踏まえ、シャッターペイントによる町並み景観整備計画「きずなロード」を提案する。この提案は、地域の小中高生、専門学校生、プロのペインターなどに依頼し、駅周辺でシャッターを降ろしている商店に様々なシャッターペイントを施すことで、通りに新たな色を付け、彩り豊かな明るい町並みの整備を目指すものである。提案する制度は以下のとおりである。 (@)地区ごとに、適当なシャッターペイントのテーマを設定し、それぞれの地区の色を生み出す。 (A)定期的にシャッターペイントの描き換えイベントを実施する。
T シャッターペイントの地区分け モール505付近を「びっくり通り」、中城通りを「なつかし通り」、中央通りの駅側を「つちうら通り」、中央通りの亀城公園側を「わくわく通り」と名付けた。 それぞれの通りのコンセプトは、以下のとおりである。 【モール505】…トリックアートなど「見て楽しめる」ペイント ※モール505には専門学校などを誘致するため、誘致期間内の暫定的な対策とする 【中城通り】…「歴史の趣」を感じるペイント 【中央通り】…「土浦を象徴する花火や桜」のペイント、近隣の小中学生によるペイント
U シャッターペイントのイメージ図
U−A 「びっくり通り」のシャッターペイントイメージ
U−B 「なつかし通り」のシャッターペイントイメージ
V−C 「つちうら通り」のシャッターペイントイメージ
V−D 「わくわく通り」のシャッターペイントイメージ
1−5.計画についての考察
きずなプロジェクトは非常に大規模なものになるために、事業の妥当性を判断するために費用便益分析を行った。費用便益分析は、「H.19年度 市街地再開発事業の費用便益分析マニュアル」を基にしている。
きずなロードについては、地区別にテーマを設定することで各地区においてシャッターペイントを通した絆が生まれ、地区内の統一された町並み形成が実現できる。さらに、その町並みを通して、市民や地域の住民が地区への愛着を持ってくれることも期待する。 また、定期的に描き換えイベントを行うことで常に新鮮な感覚を与え、彩りのある町並みを維持していくことができる。さらにこのイベントによって、ペイント参加者と商店主の間で交流の場ができ、それが新たな絆を生む機会になると考えられる。
以上の政策により、新治地区においては人と人、周辺都市との新たな「絆めばえるまち」の実現を目指す。