4−1.現状
平成18年に土浦市に統合された旧新治村を対象とするこの地区は、筑波山麓の農村の様相を呈している。主な農産物はナシ、ブドウ、カキと果物が多い。新治地区は観光資源にも恵まれ、朝日峠のスカイスポーツ、竜ヶ峰の桜並木、小野小町の里、県道199号線沿いの大果樹園群(通称、フルーツライン)がある。常磐自動車道土浦北I.Cへのアクセスがよく、近年発展を続けるつくば研究学園都市や、常磐線のターミナル駅である土浦駅などにも車なら20分以内でアクセス可能なため、「都会の隣の農村」といったイメージがある。
4−2.課題
現在新治地区では農業従事者の割合が高くなっているが、少子高齢化の進行により耕作地の放棄、後継者不足などが問題となっている。
4−3.まちづくり方針
以上の課題を解決するためのまちづくり方針として【絆めばえるまち】を掲げる。この地域を出会いの場として 活用し、男女の新たな絆を生み、芽生えた絆がこの地に定着するよう、以下の計画を策定する。
4−4.提案
農業婚活「きずなマリッジサポート」 現在、全国的な「婚活」ブームとなっており、自治体が出会いの機会を提供する事例も増えている。また、「ギャル農業」など若者による農業活動も注目を集めている。そこで、新治地区での農業婚活「きずなマリッジサポート」を提案する。計画の概要は以下のとおりである。 (@)参加希望者は、経歴、趣味、希望する条件といった基本情報を市に登録する (A)市は、集められた情報に基づき条件の近い人で交流できるようスケジュールを組み、登録者に案内する (B)参加者は農業プログラム(期間は1日から長期まで複数のパターンを用意)に取り組み、収穫した作物を使った料理を囲んでパーティーを開催する (C)その過程でカップルが成立する (D)成立したカップルには新治地区の居住に対して税制の優遇などを行い、定住をうながす このプロジェクトでは市外からの参加も積極的に受け 入れ、要望に応じて駅からの送迎、宿泊施設の確保といったサービスを提供する。
4−5.計画についての考察
「きずなマリッジサポート」により誕生したカップルが新治地区に定住することにより、後継者不足問題が改善され、耕作放棄地が減少し、地区の農業が活性化する。市が行うのはおもに情報の管理と提供で、あとは地元農家や宿泊施設などに委託するため、あまり資金をかけることなく税収アップを見込める。また、参加者にとっては行政なので民間よりも安価で、安心して参加できるといったメリットもある。 ここで、このプロジェクトの実現性および効果についての分析をコーホート要因法により行う。人口データは平成21年10月1日現在の新治中地区5歳階級別人口を用い、生残率、純移動率、子供女性比、0〜4歳性比の仮定値は、将来人口推計の土浦市のデータを一律に適用する。 婚活イベント実施の効果として、月2組カップルが成立すると仮定すると、5年で120組のカップル誕生し、そのうち半数が新治に定住するならば、120人の人口流入が見込める。子供女性比を5年ごとに10、7、5、2、1ポイント上昇させると、以下のような結果になり、人口維持が可能になる。
【図】コーホート要因法による将来人口推定結果
以上の政策により、新治地区においては人と人、周辺都市との新たな「絆めばえるまち」の実現を目指す。