背景・目的
全体の背景
2020年7月3日現在、新型コロナウイルスの感染は拡大を続け、世界全体における感染者数は1000万人を超え、死者数は約50万人に上った。 新型コロナウイルスの感染は拡大を防止するため、⽇本国政府は4月16日に緊急事態宣言を全国に向けて発令し、国民に外出自粛を要請した。また、厚生労働省は5月4日に3密対策として「新しい生活様式」[1]を公表するなど、緊急事態宣言が解除された現在も私たちの生活は変化を強いられている。 ⼀⽅で、新型コロナウイルス感染拡⼤は結果的に、私たちの⽣活や都市のあり⽅に新しい変化をもたらしてもいる。テレワークをはじめとするオンライン化、ソーシャル・ディスタンシング、混雑緩和、環境汚染改善などが代表例として一般的に挙げられている。歴史的に見ても、伝染病は古くから都市化や都市インフラ整備と密接な関係にあり、感染症の問題はまさに、都市・地域の問題でもある。 本調査では、新型コロナウイルス感染拡⼤を巡るこれらの状況をふまえつつ、資料等の収集・解析、調査実施、および都市間⽐較を通して、都市・地域の現状と問題点を客観的に捉え、将来の展望を描き出すことを目的とする。
作業フレーム

事前調査
背景の中でも、オンライン化に伴う移動の変化に注目した。そこで、将来の交通需要予測を行い、今後の交通計画について検討することを目標とし、それを達成するために文献調査、及びアンケート調査を行った。コロナウイルス感染拡⼤を巡るこれらの状況をふまえつつ、資料等の収集・解析、調査実施、および都市間⽐較を通して、都市・地域の現状と問題点を客観的に捉え、将来の展望を描き出すことを目的とする。
■文献調査
〈外出自粛がもたらした交通需要の変化〉
公共交通、自動車交通の両者に影響が出ているという報告が多くなされている。例えば、日本モビリティ・マネジメント会議[3]は公共交通における減収額を最低3.5兆円と推計している。

〈情報通信技術による交通の代替可能性〉
厚生労働省が働き方の実態調査を目的に行った「新型コロナ対策の全国調査」[8]によると、オフィスワークにおけるテレワーク実施率が約14%(4月1日)から約27%(4月13日)へ増加した。これは情報通信技術が在宅勤務を可能にしていることを示唆する。
このようにCOVID-19の蔓延は、交通需要の減少や、オンライン化による移動を伴わない生活様式に移行する機会を与えている。
■アンケート調査
COVID-19による交通需要の変化を調査するために、緊急事態宣言が発令される前後における移動手段や施設利用に関するアンケート調査を行った。
アンケート調査概要 | |
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対象地域 | つくば市 |
対象 | 筑波大学理工学群社会工学類3年生 |
期間 | 2020年5月17日(日)~5月21日(木) |
方法 | Google Form |
回答者/th> | 50人 |
質問内容 | ① 個人属性 ・居住地の変化 ・居住地の特性 ・自動車保有の有無 ② 目的別 (買い物, 飲食店, アルバイト, サークル) ・利用施設までの片道所要時間 ・交通手段 ・移動頻度 ・利用形態など |
事前調査結果
ここでは、有意な変化の判断基準としてT検定を採用して分析を行った。
① 施設利用や活動の頻度
非常事態宣言前後で、「飲食店」「アルバイト」「サークル」においては有意な減少、「買い物」においては減少傾向(t=1.58)が観察され、1週間あたり平均3回から2.4回に減少した。

② オンラインを利用した活動頻度
「オンライン上でのサークル活動」においては有意な増加が、「通販」においては増加傾向(t=-1.48)が観察された。

③ 各施設までの「片道所要時間」の変化
移動に要する時間は「サークル」においては有意な減少が観察されたが、「買い物」や「飲食店」「アルバイト」について大きな変化は観察されなかった。

④ 交通手段の変化
4項目を通じて交通手段に大きな変化は見られず、自転車の割合が最大であった。




事前調査のまとめ
COVID-19の蔓延により交通需要に変化が生じていることや、ICTによる交通の代替可能性を確認した。また、筑波大学の学生に対して実施したアンケートによって、実際に学生生活における買い物交通がICTによって代替されていることが観察され、それ以外の目的での移動においてはICTによる交通量の変化は観察されなかった。
事前調査を踏まえた最終テーマ
テーマ:「Withコロナの交通を考える ~Win against the hazard~」
事前調査の結果、感染症リスクを考慮した交通制度やデザインを考え、今後の人々の快適で安心安全な移動を実現することを目的とした提案を行うことを目標とする。また、それを可能にする提案、及び他地域への適用可能性(横展開)についても検討する。
しばらくCOVID-19の終息が見込めないため[12]、最重要課題として感染症リスクが考慮された今後の交通について考えることとしたため、主題を「With コロナの交通を考える」。また、COVID-19に負けないための提案をするという意思を込めて副題を「Win against the hazard」とした。