LINE運用を行った際、「市のパトロールは従来の新規発見から、報告を受けた破損個所の修繕のみを行うことに目的を変更して行う」として考えます。
(下図参照)
実験結果を分析した結果、「学生エリア」は、さらに2つのエリアに分けて効果試算をしました。実験期間中の報告数の平均がパトロールの修繕数の平均を上回ったエリアを「暫定的エリア」(黄色の線内地域)、統計的に将来実験 期間以上の長期にわたってパトロールの代替が可能であ るエリアを「持続的エリア」(赤字地域)とした。
従来のパトロールが破損1か所を発見するのにかかっていた時間[𝑇1]とLINEで報告された破損1か所を回るのに必要な時間[𝑇2]の差を計算し、LINEの運用を実施した際にどれだけ時間が短縮されるか、短縮された時間を人件費やガソリン代で金額換算するとどれほどとなるのかを効果としました。以下は計算式説明です。
費用は報告一つに対して報酬スタンプ代200円としました。
以上の値を用いて、271.52時間もの市のパトロール業務時間を削減できた場合、人件費は約1,096,940円削減、ガソリン代は約76,025円の削減となりました。報告数は30件であったため、費用はLINEスタンプ代5,000円(200円分LINEスタンプ×25件数)でした。
持続的エリアでの実証期間中の費用対効果は累計約1,167,966円もの値となりました。
さらに持続的エリアでLINEの運用を1年間実施した場合の削減コストを計算します。これにより、LINEの運用を長期的に実施した場合の効果を求められ具体的に実施を検討する際に大きく役立ちます。なお実証期間中に得た日数と報告件数の値と、2年間分(2016年6月~2018年5月)の市のパトロールにおける修繕数の推移を比較して、1年間の各月予想報告数を求めました。LINE案を持続的エリアで1年間実施した場合の年間報告数は約191件となりました。
1年間での予測削減コスト実証期間中での費用対効果の計算と同様の計算を行います。
その結果、年間削減コストは約2074時間、人件費約8,380,782円、ガソリン代580,846円となりました。費用はLINEスタンプ代38,200円となりました。累計すると費用対効果は約8,923,428円となるに至りました。
LINE運用を1年間行った際の修繕数は本来の業務時間では不可能なもの、つまりLINE運用によって可能になったことであるため、この結果は正確には市役所がパトロールによってLINE案と同様の成果を上げようとした場合と比較しての削減コストが892万円であることを意味します。
今回の実証実験はほぼすべての筑波大学学群生に対して周知が行えたため、効果試算で得られた値は同時期および将来にLINEの運用を実施した場合の値に極めて近いといえることが本研究での中でも特別に意義があるものとなりました。
つくば市の道路維持管理業務改善のために学生に向けて報告手段としてのLINE運用を考案しました。
実証実験の結果、報告手段としてLINEを導入すれば学生の報告数が増加し市役所パトロールと連携することで年間890万円の効果が見込めることが分かりました。以上から私たちは、報告への報酬を与える、大学生に向けた道路破損報告先としてのLINE運用を提案します。