本実習の背景

背景

 近年、インターネットの広い普及によりネット通販の利用量は急成長を続けている。国交省の調査によると電子商取引(EC)市場規模は2013年時点で約11.2兆円であり、2009年からの5年間で約1.8倍拡大していることがわかっている。 このEC市場の拡大の背景には、スマートフォン・端末タブレットが広く普及したことでいつでもどこでもネット通販を利用できることや、少子高齢化などが挙げられ、今後もネット通販のシェアは拡大していくと考えられる。

 しかし、この現状に対し問題が深刻化しているのが宅配業界である。ネット通販利用の増加に伴い宅配便取り扱い実績は2009~2013年の5年間で約4.3億個(13%)増加している。なかでも、宅配業者の頭を強く悩ませているのが荷物の再配達である。 国土交通省のヤマト運輸を対象とした調査では、全ての配達の内、一度目の配達で配完できなかった荷物は全体の19.6%であることがわかっている。 既存の研究を見てみると平成26年度に環境省が佐川急便を対象に行った調査では、宅配便配達の走行距離の内25%は再配達のために費やされており、それに伴い年間約418,271tものCO2が排出されている(スギの木約1億7,400万本の年間CO2吸収量に相当)。 宅配ドライバーの労働力に着目してみても、年間9万人分の労働力に相当する時間が再配達に費やされている。 ​

 国もこの再配達問題を重く受け止めている。 2017年1月に日本経済新聞より公表された記事によると、国は平成29年度から駅や商業施設などで荷物を受け取れる「宅配ロッカー」の普及を促すため、ロッカーを設置した事業者に対して補助金を与える制度を始める。 このように宅配便の再配達問題は今や無視することのできない深刻な問題なのである。