本論

実態調査

1 ヒアリングによる実態把握

 現在大学側が不法投棄に対して行っている具体的な対策を把握するため、学生生活課へのヒアリング調査を行った。調査結果から、平成20年度以降宿舎敷地内での不法投棄が大きな問題となっていることが分かった。また大学は宿舎入居時のゴミの捨て方の説明や、ポスターの掲示などの対策を行っている。  現在不法投棄が見られる箇所は本来ゴミの集積を意図したものではないが、毎年入居者の退去が増える3月下旬と9月下旬には大量のゴミが投棄されるため、業者に依頼してゴミの処分を行っている。

2 現地調査による実態把握

 実際にどれくらいの頻度で宿舎ゴミが不法投棄されているのかを調べるため観測を行い、平砂・追越宿舎及び一の矢宿舎内の計8箇所で宿舎ゴミの不法投棄が確認された。平砂・追越宿舎において最もゴミの不法投棄が多いのは平砂4号棟前であった。また、一の矢宿舎では、7日から8日にかけて13号棟前の増加が目立ったが、それを除けば比較的どの場所もゴミの投棄に差はなく、一の矢宿舎は平砂・追越宿舎と異なりゴミの投棄が分散していることが分かった。平砂4号棟前と一の矢13号棟前は当初より多くの宿舎ゴミが捨てられており、既存のゴミが不法投棄を誘発している可能性がある。
 また、宿舎に不法投棄されているゴミのうち、約6割が宿舎ゴミだった。さらに既存のゴミが目立つ箇所では、ゴミの不法投棄が多いことと、手が加えられている空間では宿舎ゴミの不法投棄が比較的少ないという傾向が見られた。

3 学生を対象とした意識調査

 不法投棄に関する学生の意識を把握するため、 筑波大学の学生を対象にアンケートを用いて意識調査を実施した。

   
意識調査の概要
目的
学生の「粗大ゴミ不法投棄」に対する意識調査
実施日
2016年5月9日(月)
実施授業
都市・地域・環境を探るⅠ、都市計画情報実習
有効回答数
117部(回収率:100%)
内容
居住経験の有無 ・学生宿舎に住んだ経験
粗大ゴミの投棄方法 ・正しい捨て方を知っているか
・不法投棄の経験
生活ゴミの投棄方法 ・正しい捨て方を知っているか
・普段守っているか
不法投棄の要因 ・規則を守ろうと思うか ・守らない理由
不法投棄の対策 ・有効な対策 ・リサイクル
回答者の属性 ・性別 ・所属 ・出身地
 
 その結果粗大ゴミを捨てた経験のある人の8割が、不法投棄によって粗大ゴミを処理したという回答が得られた。また不法投棄の経験の有無に分けて粗大ゴミ処理方法の認知度について調べたところ、不法投棄をしたことがない人の方が認知度は低いことが分かった。


粗大ゴミを捨てた経験のある人の投棄方法

 また粗大ゴミの正しい処理方法を知っているかどうか尋ねたところ、過去に不法投棄した経験のある人の方が、過去に不法投棄した経験のない人よりも認知度が低い傾向にあることが意識調査によって分かった。この結果から、そもそも学生が不法投棄をするのはルールを知らないことが原因で、ルールの認知度が高まれば不法投棄は減るのではないかと考えた。



不法投棄経験の有無と正しい捨て方の認知度のクロス集計

仮説

 実態調査から得られた情報を基に、不法投棄を減らすための効果的な方策を解明していくための仮説を3つ設定した。

仮説1:「正しい処理方法が認知されると宿舎ゴミの不法投棄行為は減少する」
仮説2:「放置されている宿舎ゴミが減ると宿舎ゴミの不法投棄行為は減少する」
仮説3:「整備された空間をつくると宿舎ゴミの不法投棄行為は減少する」

 仮説1については、意識調査より、不法投棄の経験者の多くは宿舎ゴミの正しい捨て方を知らなかったことから設定した。仮説2は、現地調査より、整備されていない環境に不法投棄は多く発生していたことから仮説を導いた。最後に仮説3は、現地調査より、既存のゴミの量が多い箇所ほど不法投棄は多く発生していたことよりこの仮説を設定した。

検証方法

 宿舎における実験と、学生対象のアンケート調査を行い、仮説1~仮説3の検証を行う。

1 アンケート調査による仮説の検証方法

 筑波大学の学生に対して、不要物の処分方法・再利用などに対する意識についてのアンケート調査を実施する。

   
アンケートの概要
実施目的
不要物の処分方法などに関する意識調査
調査対象
筑波大学学生
(日本人:240、留学生:99、国籍無回答:36)
調査期間
2016年6月6日(月)~6月14日(火)
内容
個人属性
不要物の処理方法
正しい処理方法の認知
再利用サービスの利用状況
空間の変化に対する不法投棄の意向
有効回答数 375部(回収率:93.3%)
(男:247、女:117、性別無回答:11)
 
 調査結果の各項目を単純集計及びクロス集計し、それぞれの関連性を分析し整理する。その結果を用いて仮説1~仮説3の検証を行う。

2 実験による仮説の検証方法

 各宿舎の不法投棄発生箇所で空間に変化を施し、毎日定点観測を行った。

   
実験の概要
実施目的
空間の変化と不法投棄の関係を調査
調査期間
2016年5月7日(土)〜6月13日(月)
実験内容
平砂4号棟前 ロープガード、ゴミ移動
追越13号棟前 看板設置、ゴミ放置
追越保育所前 ロープガード、ゴミ放置
一の矢13号棟前 ゴミ放置
一の矢18号棟前 ゴミ移動
一の矢12号棟前 芝生の敷設、ゴミ移動
一の矢38号棟前 ゴミ移動
一の矢駐車場横 ゴミ移動
 
 定点観測で得られた宿舎ゴミの増加数をグラフ化し、t検定を用いて実験の効果を分析する。その結果を用いて仮説2、仮説3の検証を行う。


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