提案

ここまでの調査では、既存の対応策の検討と、落書きの発生しやすい空間がもつ特性の分析を行なってきた。 これらを踏まえて、つくば市での落書き対策として有効と思われる方法を実際につくば市で実施し、その効果を観測した。

1.提案〜落書き再発防止実験〜

 落書き再発防止の壁画制作は,いくつかの自治体が実施し効果をあげている。つくば市では周辺の小中学校と協力した壁画の制作が検討されたが,実際に壁画を制作した後壁画の上に万が一落書きが再発すると,子供たちが受けるショックが大きいと懸念されており,実現には至っていない。その問題に対応して,地元の小学生に落書き防止のポスターを書いてもらい,引き延ばして掲示する案があがっている。ポスターの掲示は,壁画制作に比べてコストが非常に安く,作業も容易なので,壁画制作よりも多くの再発ポイントで実行することができる。そこで,実際にこの方策が落書き防止効果をもつのか,検証を行なった。また,再発ポイントへ継続的に監視の目があることを強調するため,プランターを設置し,花の管理を行なった。

実験概要

日時:2014年5月23日(金)~6月19日(木)
場所:松見公園公衆トイレ
方法:A3用紙の手描きポスター7枚を掲示。さらに,花のプランター4つを周辺に配置し,毎日様子を観察する。(同時に花の世話も行なう。)


実験結果

 対象とした場所は落書きの再発が特に早く,今まで消去活動を行なっても数日後には再発していたが,実験期間中に落書きはされなかった。ポスターの掲示とプランターの設置・管理が,この場所に監視の目があることの象徴となり,落書きの再発を抑制していると考えられる。

実験の様子

▲ 実験の様子

2.考察・まとめ

 分析結果より,スナックや居酒屋などの飲食店が密集している繁華街は,頻繁な人の出入りにより匿名性が高く,落書きがされやすい環境であることがわかった。また,落書きのされる対象に関しては,看板や自販機よりも配電盤の方が高い確率で落書きをされていることと,多くの落書きが看板の文字やイラストにかぶせるのではなく,余白の部分に書かれていることから,何も書かれていない,自由に大きく書けるものの方が落書きの対象に選ばれやすいと考えられる。

落書きのされやすい環境では,このような落書きのされやすい対象を減らす必要があり,その方法として,落書き防止のポスター掲示や,プランターの設置など,その場所に対する監視の目があることを可視化することが有効であることがわかった。