実態調査
落書きの対応策を考えるために,前項で述べたファクターのうち, 落書きの分布に関する「情報」を収集し,落書きがされやすい「場所」の特性を明らかにするための調査・分析を行なった。
1.天久保・春日地区における落書きの分布調査
匿名性の高さからマナーが低下するとされる繁華街と,住宅地との落書き被害の差を明らかにするため,大学周辺地域のうち, 繁華街である天久保地区と,住宅街である春日地区の,立地的に近い2地域を対象地域として選定した。
調査概要
対象地域:天久保1~3丁目および春日1~4丁目
日時:2014年6月3日(火),4日(水),6日(金)
目的:天久保・春日地区における落書きの全数調査,および天久保1丁目における落書き多発箇所の空間的特性の把握。
方法:天久保・春日地区全域において落書き箇所を調査し,天久保1丁目において自販機・看板・配電盤の設置箇所,飲食店を含む建物について各対象の地点を調査。
調査結果
地区ごとの落書き箇所数は表のとおりである。
天久保地区 | 春日地区 | ||
---|---|---|---|
4丁目 | 4 | ||
1丁目 | 131 | 1丁目 | 10 |
2丁目 | 43 | 2丁目 | 1 |
3丁目 | 47 | 3丁目 | 1 |
2つの地区を比べると,圧倒的に天久保地区で落書きが多く, その中でも天久保1丁目は特に落書きが集中していた。落書きの種類は,スローアップが数カ所あった以外全て単色のタグだった。 また,落書き箇所にともにステッカーが貼られていることも多く, 同じステッカーが何枚も貼られていたり,複数種類のステッカーが同じ場所に貼られていたりする場所もあった。
2.天久保1丁目における落書きの因子調査
落書き箇所の最も多かった天久保1丁目について, 落書きがされやすい空間の特性を明らかにするためさらに詳しい調査を行なった。 フィールドワークで調査を行なった項目とその選定理由,調査結果の概要を以下に示した。
①防犯カメラ設置箇所
落書きを抑制する因子として想定されるため。時間貸駐車場やマンションを中心に,対象地域で24カ所発見。
②飲食店箇所
事前の現地調査より,飲食店の周辺に落書きが多い傾向が見られたため,落書きの誘因である可能性がある。スナックや居酒屋などが北大通に近い街路に集中。
③看板箇所
事前調査により,落書きをする対象に選ばれやすいと考えられたため。対象地域内108の看板のうち29%に落書きを発見。
④配電盤箇所
③と同様。対象地域内43の配電盤のうち70%に落書きを発見。
⑤自販機箇所
③と同様。対象地域内38の自販機のうち34%に落書きを発見。
これらの因子に関して、次項でGISとSPSSによる分析を行う。