分析

天久保1丁目における調査結果を用いてGISとSPSSによるデータの分析を行ない、落書きが発生しやすい空間の特性を明らかにする。

1.GISによる分析

 GISにより、対象とした地区内の落書きが持つ特性を2次元的に表した。次に挙げる図は、天久保1丁目における落書きの密度分布である。 CPTEDの考え方によれば、大通りから1本入った街路では、周辺からの監視が弱まるために犯罪が行なわれやすいとされ、実際に天久保1丁目においても、北大通から1本入った道に最も落書きが集中していた。 落書きは北大通に近い地区に高密度で分布していることが見て取れる。また、これを飲食店の密度分布と比べると、2つの分布が非常に似ていることがわかる。 同じ大通り沿いでも飲食店の少ない東大通沿いの落書き密度がそれほど高くないことからも、落書きの発生に飲食店密度が強く関わっていると考えられる。

   ▲ 落書きの密度分布(左)と飲食店の密度分布(右)


 続いて、防犯カメラによる落書きの抑制効果について分析する。防犯カメラは飲食店周辺に設置されていることが多く、その相関による影響をなくすため、 防犯カメラと飲食店それぞれの周囲15m圏内の落書き密度の比較を行なった。その結果、防犯カメラの周辺は、落書き密度が飲食店の周囲の約半分になっていることがわかった。

▲ 落書き地点と防犯カメラ設置箇所・飲食店の15m周囲



2.SPSSによる分析

 各因子と落書きの発生に相関があるか調べるために、防犯カメラ・飲食店・看板・自販機の密度、幹線道路からの距離を独立変数、落書きの個数を従属変数として、街区ごとにSPSSによる重回帰分析を行なった。分析式と結果の表を以下に示す。

y = ax1 + bx2
y:落書き箇所数
x1:防犯カメラ設置箇所数,x2:飲食店数

モデルの要約
モデル R値 R2乗値(決定係数) 調整済R2乗値(調整済決定係数) 推定値の標準誤差
1 .940a .884 .869 3.01653796

 a. 予測値: (定数),防犯カメラ個数, 飲食店個数。


係数a
標準化されていない係数 標準化係数 t 有意確率
防犯カメラ個数 -.848 .404 -.183 -2.098 .052
B 標準誤差 ベータ
(定数) 4.630 .990 4.678 .000
飲食店個数 .518 .047 .964 11.024 .000

 分析の結果,調整済みR²が0.869,防犯カメラ数,飲食店数がともに有意であると言えたため,防犯カメラは落書きを抑制し,飲食店は落書きを誘発することが分かった。