2−1 事業目的
水と緑は私たちの生活環境の中でかけがえのない自然の財産である。近
年、宅地開発などにともない自然緑地の減少、事業所排水や一般家庭から
の生活排水、ごみの不法投棄などでの河川・湖沼環境は悪化を続けている
。特にその影響を受けてしまう霞ヶ浦の水質汚濁、富栄養化は、土浦市に
おいても深刻な問題となっている。このことから、水質汚濁の原因となる
汚濁負荷量を減少するため、公共下水道を整備するとともに、霞ヶ浦を含
む河川の清流復活にむけて市民の浄化運動など、意識の啓発をはかる。ま
た、土浦市の公園・緑地は、都市公園35ケ所・71.2haが開設され、市民の
憩いの場やレクリエーションの場となっており、また、災害時の防災、避
難場所として欠くことのできない都市施設の役割を有しているが、土浦市
の公園・緑地は、都市公園法の基準の6.0F/人より低い5.1F/人の水準に
なっている。
それらをふまえていくと、地域の豊かな自然環境を生かし、緑の拠点と
なる森林公園などを整備するとともに、豊かな水辺空間において、親水公
園や遊歩道の整備などを行い、身近に緑や水と親しめる環境づくりを進め
る。その一環として、親しみやすい霞ヶ浦を目指し、湖岸整備事業を行う
。また、日常生活の中で安全かつ快適にスポーツ・レクリエーション活動
に親しむ空間を形成するため、土浦駅東口前を起点とし、湖岸を囲む親水
公園とも連接する、土浦−つくばつくば自転車道の整備を進めていく。
2−2 事業計画
霞ヶ浦湖岸整備事業は8.8haに及ぶ計画地であり、霞ヶ浦湖岸の豊かな
水辺環境や水辺空間を創造していくだけでなく、緑と共に水にもふれあえ
る親水公園とする。それは、霞ヶ浦湖岸約3kmの自転車・歩行者道を軸と
した展開であり、霞ヶ浦湖岸の様々な風景を連続的に楽しめる空間にもな
る。また、それと連結する自転車道として、土浦ーつくば自転車道(筑波
自転車道)の約4.5kmを計画し、約1kmごとに自転車道の利用者や周囲の住
民や地域の連結点にもなり、親しめる休憩や憩いの場であるポケットパー
クを配置する。親水・環境保全事業を進めるにあたり、以上の公園・緑地
などの計画を補完するかたちで、公共下水道の整備も進めていく。
2−3 具体的計画
親水・環境保全事業を大きくわけると、次の3つに分かれる。
(1)霞ヶ浦湖岸整備事業(湖岸ロード)
親水公園や歩行者・自転車道の整備、水と緑に親しめる空間
(2)土浦−つくば自転車道(筑波自転車道)
安全かつ快適にスポーツ・レクリエーションに親しめる空間
(3)公共下水道整備事業
水質汚濁の原因となる汚濁負荷量の減少を目ざす
次からは、これら3つの事業計画について具体的に述べていく。
(1)霞ヶ浦湖岸整備事業(湖岸ロード)
霞ヶ浦湖岸を囲むように整備される全長約3kmの歩行者および自転車専
用道路「湖岸ロード」は、親水公園としての機能も有し、道幅は約5mで、
道を含める公園幅は細いところで20m、最大のところでは30mあり図4−2
のようになっている。そして、計画面積は8.8haを計画している。
図4−2 湖岸整備事業の「湖岸ロード」と親水公園
この「湖岸ロード」を計画している霞ヶ浦湖岸の現状は、土浦市の北
側である写真4−3のような所では、防岸壁のうえを砂利道が通ってお
り、その内側をれんこん畑がうめている。
写真4−3 霞ヶ浦湖岸の現状
「湖岸ロード」を整備すると、写真4−4のようになると予想される
。この「湖岸ロード」を歩行したり自転車で走ることで、霞ヶ浦湖岸の
美しい景観を楽しむことができることを考えれば、霞ヶ浦湖岸は、日常
生活の活動が親しめる空間となる。
写真4−4 「湖岸ロード」整備後の予想写真
この「湖岸ロード」は、図4−5のように、南の起点は霞ヶ浦総合公
園であり、湖岸を北に進んでいき、土浦駅東口前を通り、川口運動公園
をへて、手野地区へと続いている。また、土浦駅東口前において、土浦
−つくば自転車道ども連結しており、駅前からの市民の歩行、自転車に
よるアクセスの拠点ともなる。
図4−5 湖岸整備事業の計画図
(2)土浦ーつくば自転車道(筑波自転車道)
土浦駅東口を起点として、筑波山を含む豊かな森林などがある水郷国
定公園を通る「土浦−つくば自転車道」は、岩瀬町まで続いており、全
長約40.1kmを計画している。これは、図4−6のようになっている。
図4−6 土浦−つくば自転車道の計画図
その土浦市内の約4.6kmの区間においては、起点である土浦駅東口で
は親水公園などの「湖岸ロード」に連接しているほか、約1kmごとに
ポケットパークを配置し、都市化が進む土浦市の中でも貴重で安全な
快適で緑とふれあえる空間を形成していく。
写真4−7 土浦−つくば自転車道・市街地内の予想写真
写真4−8 土浦−つくば自転車道・市街地調整区域の予想写真
(3)公共下水道整備事業
下水道は、都市環境を整備・改善し、公衆衛生の向上に寄与するだ
けでなく、河川・海域などの公共用水域の水質の保全に資することを
目的としていて、流域下水道、公共下水道、都市下水道がある。
流域下水道は2以上の市町村の区域における下水を排除するもので、
かつ終末処理場を持つものである。事業は原則として都道府県が行っ
ている。土浦市の場合茨城県の施行による霞ケ浦湖北流域下水道事業
により、土浦市、石岡市、阿見町、美野里町、千代田町、出島村、新
治村の公共下水道から出る下水を霞ケ浦浄化センターに集め処理する
ことになっている。この事業は、終末処理場及び幹線管渠の一部を除
き供用が開始されているが今後ともその整備促進が望まれている。
公共下水道は、主として市街地における下水を排除し又は処理する
ために地方公共団体が管理するもので、終末処理場を持つか、又は流域
下水道に接続するもので、下水を排除する管渠の大部分が暗渠である
ものをいう。
都市下水道は、主として市街地における下水を排除するために地方
公共団体が管理している下水道で、公共下水道及び流域下水道を除い
たものをいう。
これらの下水道計画の上位計画として流域別下水道整備計画がある
。この計画は、公共用水域の水質汚濁防止を図っていく上での、当該
流域全般にわたる最も合理的な下水道整備に関する基本計画である。
▼土浦市の下水道整備の現状
土浦市は上で述べたように、県が実施している霞ケ浦湖北流域下水
道事業により公共下水道から出る下水を霞ケ浦浄化センターに集め処
理している。土浦市の平成7年における公共下水道の普及率は、約2
000haの整備済みの区域において63.2%であり水洗化率は8
3.0%である。これは、全国の10万人規模の都市の平均的なもの
であり、霞ケ浦とその流入河川の水質を保全あるいは向上させるため
には十分なものではない。霞ケ浦とその流入河川の水質を向上させる
ためには、茨城県の施行による霞ケ浦湖北流域下水道事業の整備促進
を望むとともに、土浦市の公共下水道で独自の終末処理場を新設する
などの対策が必要である。
また、浸水の防止は下水道の重要な役割の一つであり、雨水の防止
に加え貯留・浸透などの流出抑制や河川整備と連携した計画的な下水
道整備が必要である。しかし、都市化の進展によって、雨水の不浸透
区域が拡大し保水機能が低下する傾向にあって、降雨時には一時的に
市街地に流入する多量の雨水や生活廃水により、浸水被害が発生し生
活環境上の支障となっている。
表4−9 霞ヶ浦湖北流域下水道事業の概要(1995年)
|
土浦市 |
全体 |
計画面積(ha) |
4,783.6 |
10,424.2 |
計画処理人口(人) |
172,100 |
354,024 |
計画汚水量(G/日) |
117,780 |
266,435 |
表4−10 公共下水道の整備状況(1995年)
|
行政区域 |
整備済区域 |
面積(ha) |
9,155 |
2,004 |
人口(人) |
132,201 |
83,489 |
水洗化人口(人) |
− |
69,296 |
普及率(%) |
− |
63.2 |
水洗化率(%) |
− |
83.0 |
▼土浦市の下水道整備の具体的構想
1996年において、政令指定都市の平均で97%が普及しており、
建設省都市局では、第8次下水道整備7箇年計画により、1996年に
おける全国で約55%の普及率を、2002年には66%に引き上げる
ことを目標に下水道の整備を推進している。土浦市では、下水道整備の
認可区域が2965haあり、そのうち2004haがすでに整備済み
である。この認可区域内の人口は総人口の約92%であり、建設省都市
局の第8次下水道整備7箇年計画では2002年までに11%の増加を
目指していることから、霞ケ浦の浄化を重要課題とし県南地域の中心で
ある土浦市では、2002年までに17%引き上げて普及率を80%に
することを目標とし、さらに認可区域内の人口は総人口の約92%であ
ることから、2010年には認可区域内のほぼ全域の整備を目指し普及
率を90%にすることを目標とする。
霞ケ浦湖北流域下水道事業のうち、土浦市は人口の49%、汚水量の
44%という大部分を占めている。土浦市の公共下水道の整備が上記の
ように2010年に普及率90%を達成した場合処理人口は1.5倍にな
り、霞ケ浦湖北流域下水道事業による霞ケ浦浄化センターの容量が不足
する場合も考えられる。そこで、流域下水道は原則的に都道府県が施行
することになっているので茨城県と調整するとともに、土浦市が独自の
公共下水道の終末処理場を新設する。
▼土浦市の下水道整備計画
1.公共下水道の整備促進とコスト縮減
認可区域のうち未整備の961haの整備を進め、清流ルネッサンス
21の指定に基づく、備前川、新川流域の整備をする。整備を促進する
具体的な対策としてコストの縮減を図る。対策の内容は以下のようなも
のである。
・マンホールの設置基準の見直し、塩化ビニル製マンホール採用
・工事の平準化
・掘削発生土・再生材の使用拡大
・管渠接続工法の見直し
・埋設深の見直し
・発注方法の見直し
2.浸水防止
短期的対策としては、浸水被害の早期解消を図るため、公共下水道雨
水幹線を整備し、新川ポンプ場の能力増強を図る。雨水排水対策だけで
なく農地保全等の観点から未整備の都市下水路を整備し、特に整備率が
20%以下である中、西根竹の入、木田余、殿里西、菅谷東の路線を重
点的に整備する。
長期的対策としては高度雨水情報提供システムを導入する。これは、
浸水危険区域内の住民に対して、雨量・水位等に関するきめ細かいリア
ルタイムな情報を提供することにより、住民自身による浸水時被害軽減
の取り組みを支援するシステムである。建設省によって創設された「高
度雨水情報提供システムモデル事業」により、施設の整備に補助が受け
られるので、これを利用して高度雨水情報提供システムを導入すること
を促進する。
図4−11 高度雨水情報提供システムのイメージ図
3.費用効果分析
下水道の整備には多大な費用がかかるが、公共事業の執行には、透明
性・客観性の確保、効率性の一層の向上を図ることが求められている。
さらに、不況による財政事情の悪化もあり、多額の事業費を費やすこと
に住民の理解を得ることが必要である。また、事業の推進には住民の協
力が必要であり事業の推進を図るためにも住民の理解を得ることが必要
である。そこで、住民の納得と協力を得られ、費用に対する効率性の向
上を図るために費用効果分析を行いこれを住民に公表する。
分析手法は平成9年12月に日本下水道協会に設置された「費用効果
分析手法検討委員会」において策定された「下水道事業における費用効
果分析マニュアル」を利用する。このマニュアルでは、下水道施設の整
備及び維持管理費等にかかる費用と、下水道整備によって発現する効果
のうち貨幣価値換算が可能なものについて評価した便益を算出し、それ
らの比である「費用分析比(B/C)」を用いて定量化している。
◆公共下水道事業における試行事例
定量化を行った効果項目
生活環境の改善:中小水路の覆蓋化費用
便所の水洗化 :浄化槽の設置・維持管理費用
公共用水域の水質保全:水質汚濁で失われる公共用水域の存在価値
:水質汚濁による上水、工業用水の浄化費用
:農業用水の汚濁による農業被害額
浸水の防除:浸水被害の軽減額
その他効果:処理場等の用地を公園等に活用できる価値
表4−12 費用効果分析結果
|
B/C |
青森県川平市 |
1.86 |
静岡県菊川町 |
1.46 |
三重県名張市 |
2.19 |
岡山県真備町 |
1.81 |
佐賀県多久市 |
1.87 |
図4−13 望ましい水循環の構築
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