環境・農業・防災 住宅・コミュニティ・まちづくり・防犯・福祉・景観 市民協働・教育・人材育成
人口・財政・公共施設等
人口
土浦市の常住人口は戦後一貫して増加傾向にあったが、2000年代に入ると人口の成長は停滞し2010年代に入ると人口は減少に転じた(図1参照)。人口の増減は死亡数から出生数を差し引いた自然増減と、流入数から流出数を割り引いた社会増減の二つに大別される。自然増減は2008年に減少に転じた後、その減少幅は増加している。出生数に影響を与える出生率は低い水準にとどまっており、2013年の時点で1.33(全国平均1.43)である。人口置換水準とされる2.08を大きく下回っており、大きく改善する見込みはない。
社会移動に関しては2001年ごろまで一貫して純増が続いていたがその後純増と純減が激しく入れ替わる時期がつづいた。その後2010年以後一貫して純減が続いている。社会移動の純増と純減が大きい自治体を示したのが図2である。これを見ると土浦市は茨城県の北や東から人を受け入れ、南や西に人を流出させている。土浦市の言葉を借りると「人口のダム」となっていることがわかる。しかしながらこの状態が今後も続くという保証はない。人口の発地となっている茨城県北部は近い未来に地域が崩壊する可能性が高いとみられている地域である。そのためいずれこれらの地域からの流入はとまり、より東京および東京に近いエリアに人が吸い取られていくという構図が拡大していくことになる。
図3は国立社会保障・人口問題研究所による報告書を参考にしてコーホート推計法を用いて行った土浦市の将来人口予測である。2060年には土浦市の人口は約9万1000人となり現在の2/3の水準も割り込む。また少子高齢化も激しくなり、老年人口1人につき生産年齢人口1.26人となる。このような激しい人口形態の変化は社会全体にとって大きな負担となり、ひいては市民の生活を破綻に追い込むことが予想される。
財政
次に土浦市の現状の財政について考える。財政を性質別に分けると16項目に分けることができ、その中で課題があると考えらえる項目は公債費、人件費、物件費、維持補修費・普通建設事業費、扶助費である。それらの項目について分析していく。国債費は平成27年度に急増している。原因として新図書館施設整備事業及び美術品展示施設整備事業や、新治地区小中一貫教育学校整備事業などの大規模事業があげられる。人件費は類似団体(我孫子市、木更津市、焼津市)と比べて高くなっている。物件費は過去5年間右肩上がりである。原因として新たに整備した施設の維持管理経費の増大があげられる。維持補修費・普通建設事業費は類似団体と比べて高くなっている。原因として維持補修費は一人当たりの公共サービス量が多いことが、普通建設事業費は大規模事業が影響していることが考えられる。扶助費(児童、高齢者などに対して行う社会保障制度の一環)は高齢化によって増加している。
土浦市は近年歳入よりも歳出のほうが多いという現状があり、下のグラフ を見ればわかる通り今後もこの傾向が続くと考えられる。その際、財政調整基金という計画的に財政運営を行うための貯金を切り崩しているのだが、このままだと平成33年にはこの基金が枯渇することがわかっている。我々の目標としてはグラフ のように基金残高を残すことである。また、最終的な目標としては表1に書かれている長期的な課題を解決することがあげられる。しかし、財政調整基金がなければ長期的な課題に取り組む資金がない。よってまずは短期的な課題に取り組むことが必要なのである。
課題まとめ
- 人口の流出
- 少子高齢化
- 財政破綻の危機
- 公共施設の維持管理
交通・インフラ・アセットマネジメント・都市構造
交通
土浦市における交通の現状は、交通分担率において自動車が全体の64 %を占めており、全国平均を上回っている(図11)。また、公共交通利用者も年々減少傾向にある。図12は土浦市内のJR各駅の1日平均乗客数推移を現したグラフであり、土浦駅、荒川沖駅で特に大幅に減少していることがわかる。
土浦市の交通における課題として市民の声を聞いたり現地の様子を見たりして、
・バス路線が需要に沿っていない
・公共交通が不便(本数が少ない・運賃が高い)
・市民の公共交通に対する関心が低い
・乗り合いタクシーが利用しづらい(予約が面倒)
・複数の交通手段の結節が弱い
・車があれば便利だが車がないと不便
といった点が挙げられた。
バスをはじめとする公共交通利用者が多くないために交通網の維持が困難な状況にある。また、公共交通が不便であることによって、自家用車の代替手段が乏しくなり、交通弱者(学生や高齢者などを含む、車を持たない人)の移動手段の確保が困難になっている。少子高齢化や人口減少が予測される中でこれらの諸問題の解決が必要とされる。また、自家用車利用が多いために交通渋滞が発生しやすいという状況にある。
図13は市内における公共交通不便地域を現した地図であり、この図を見ると立地適正化計画において居住誘導する区域や人口密度が高い地区においても公共交通によってカバーされていない地域が存在していることがわかる。
都市構造
都心部と定義されている土浦駅を起点とした中心市街地の現状として、以下のことが挙げられる。
(1)歩行者交通量
中心市街地活性化計画によると市街地内の歩行者交通量が平成24年までは減少傾向であったが、近年は回復している。
市街地内の空き地店舗数が年々増加しており、市街地に連続性が失われている。
アセットマネジメント
現在土浦市においては市役所・市立図書館など都市施設の新規整備が相次いでおり、その他都市施設においても過不足なく供給されているものと考えられる。そのほか上下水道普及率なども高く、インフラストラクチャ―も十分に整備されていると考えられる。土浦市市民満足度調査を見てもそれらへの不満が低いことから市民もその恩恵をあずかっていると分かる。
ただし、今後に目を向けるとインフラは課題として市財政に大きくのしかかるものと考えられる。これらインフラ設備は40年を目安に老朽化に対する改修・交換の必要性があるためだ。これまでのインフラ整備は新規造成に注力出来ていたのに対し、今後は1980年代ごろから造成された橋脚やトンネル、上下水道配管などの改修が求められる時代になるであろう。図1より、現状の施設量を維持し負担額を同じにした場合、年間で1.73倍の負担が生じ、現在と同じ負担額で改修更新を行う場合は57.8%のみの改修しかできない、という試算がなされている。 市による公共施設等総合管理計画では、本課題に対して耐震補強等長寿命化や点検による未然の故障を防ぐなどの対策を挙げており、今後施設等中長期管理計画の策定が急務とされている。しかし、それらの対策がどの程度予算への効果が表れるか不透明であり、図17に挙げた逼迫した予算状況において上記の方策だけで対応できるとは考えづらい。万が一改修が間に合わないなどの事態が発生すると、昨日まで使えていた橋や水道が使えなくなるなどという事態も想定されうる。 また、インフラ設備の今後の維持方針として市の歳入との関係を考えていく必要もある。市町村税の主要な財源として固定資産税が挙げられるがこれは地価をもとに土地所有者とそこに建つ家屋に課税されるものである。今後予想される人口減少によりそれらそのものの歳入減が見込まれるが、地価もといそれの基準となる路線価はインフラ設備や都市施設などとの距離によって算出されており、インフラ機能の削減や維持管理の不備などが今後歳入減に繋がる恐れがある。 今後はそれらインフラにおけるサービス範囲の削減など人口減や財政負担にあわせた居住地の集約化、維持するインフラ設備の取捨選択に迫られる可能性を考えていく必要がある一方、主要財源への影響を考慮する必要もあるため、財政と都市やそのサービスの規模、人口を合わせた長期的に持続的でバランスの取れた設備量や改修方針が求められている。
課題まとめ
- 自動車社会
- 土浦駅周辺の賑わいの喪失
- インフラ維持費の持続的な確保
産業構造・観光+歴史
商業
茨城県における就業人口者数の産業比率は,第1次産業が5.9%,第2次産業が29.8%,第3次産業が64.6%と第3次産業が占める比率が全国平均と比較して低い傾向にあるのに対し、土浦市における就業人口者数の産業比率は第1次産業が3.1%、第2次産業が22.4%、第3次産業が67.9%と第3次産業が占める割合が高い。また、平成26年度の商業統計調査によると、土浦市は卸売業、小売業の事業者数、従業者数、年間商品販売額ともに茨城県では3位の規模を誇っており、県内有数の商業地域であることが言える。
このようにかつては栄えていた土浦市であるが、中心市街地の衰退を筆頭に年々商業機能が失われてきてしまっている。商店数、従業員数、年間商品販売額は年々減少傾向にあり(表2参照)、平成15年度においては商業地地価下落率が全国1位を記録したこともある。
昭和を中心に次々と開業した大型商業施設も売り上げが伸び悩み次々と閉店に追い込まれてしまっている(表3参照)。また、大型商業施設の撤退に伴い、モール505や商店街の個人商店の空き店舗数の数も年々増加傾向にある(図1参照)。
このような中心市街地の衰退の流れに際し、土浦市民も現状に満足していない。平成27年度の土浦市民満足度調査によると、中心市街地の賑わい対策、駅前の開発、公共交通機関などの中心市街地に関する項目において満足度が著しく低かった。
以上の現状に至った背景として考えられる要因は他都市の発展や郊外への大型商業施設進出である。近年、隣町であるつくばが急速に発展し、その後イオンモール土浦などの郊外ショッピングセンターも台頭してきた。このように土浦市の中心市街地以外にも近郊に商業施設が数々立ち並ぶようになり、商業拠点の分散が起きてしまった。これがいわゆる「中心市街地の空洞化」である。 土浦市は平成27年に市庁舎移転や図書館整備事業等の中心市街地活性化基本計画を推し進めており、一定の成果を得始めている。回復の兆しを見せつつある中心市街地の空洞化にさらなる施策を施すことでかつての賑わいを取り戻す必要があると考える。
工業
茨城県は、2007年~2016年にかけての過去10年間、常に全国1位の企業立地面積を誇り、工業大県としての地位を確立している。土浦市も例外ではなく、製造品出荷額は太平洋岸に位置する神栖市、日立市、ひたちなか市などの工業都市に次いで県内7位となっている(表4参照)。また,土浦市内には、神立工業団地、東筑波新治工業団地、テクノパーク土浦北、おおつ野ヒルズという4つの工業団地が立地し、おおつ野ヒルズを除く3団地はすべての区画が完売しているなど、活況を呈しており、コカ・コーラや東レなどの大手企業も数多く立地する(表5参照)。また、土浦市は都心から1時間圏内という立地、常磐自動車道や首都圏中央連絡自動車道による交通の利便性など、立地的な優位性が非常に高い地域であるということができる。
このように、工業に関しては一見満足のいく状況に見える。しかし、土浦市の外に目を向けるとそう楽観的にはいられないような現状もある。それは、茨城県内外において、製造業の盛り上がりの兆しがみられる地域が多く存在するということである。 茨城県内においては、平成29年2月26日の圏央道境古河IC~つくば中央IC間の開通により、茨城県内区間が全線開通したことから、圏央道沿線地域の交通状況が大きく改善された。これによって物流の活性化がなされ、土浦市にとっても一定の影響があるものの、かねてから大企業を多く抱える阿見町や、坂東市の新興の工業団地が今後勢力を伸ばしていくことが予想される。こういった地域の中には、土浦市の工業団地と比較して分譲価格が非常に安価なところも存在し、これらの地域には多くの企業が集積していくと考えられる(表6参照)。
以上の現状を踏まえたうえで、現在の土浦市の動向に目を向けてみると、土浦市はすでに完売している3つの工業団地への投資よりも、おおつ野ヒルズの分譲に熱心な状況であることがヒアリング調査によりわかった。県内や北関東のライバルにあたる市町村が力をつけつつある中で、このままの姿勢では土浦市の工業のさらなる発展の可能性を潰してしまう。さらには、他の市町村に対する相対的な優位性を失い、現在土浦に立地する企業の流出にもつながりかねないと考えられる。
観光
土浦市の観光基本計画では,歴史的町並みの整備などを推進するとされているが、これは良策とは言えない。まず、観光資源を2種類に分類することができる。「勝負できるもの」と「勝負できないもの」である。「勝負できるもの」というのは、土浦独自の魅力があり、そこを訪れない限り旅行者が経験できない資源である。「勝負できない資源」とは、旅行者の発点から同等もしくは近い距離に類似の経験できる空間があるものだ。土浦市の勝負できる資源とは3大花火大会として知られる「土浦全国花火競技大会」や筑波山・霞ヶ浦などのロケーションに恵まれた「りんりんロード」などがあげられる。一方、「勝負できない」観光資源としては、まず、第一に歴史的町並みが挙げられるだろう。茨城県を訪問する観光客は、約40%が関東から訪れている。しかし、関東には小江戸川越や水郷さわらなどの歴史的町並みの観光地として地位を確立している地域がある。圏央道の開通によりこれらの地区へのアクセスも格段に上がっている。もし、観光客が歴史的町並みを楽しみたいと思ったとき、土浦市に訪れるのと同じくらい時間で訪れることができる佐原や川越を選ぶのではないだろうか。貝塚公園もこの例に倣う。このような資源が勝負できない資源である。
また、近年、観光の形態が大きく変わっている。これまではツアーに申し込んだり、職場の慰安旅行に参加するなど、団体での観光が中心だった。そして、これらの団体旅行は、訪問先ではなく、発地、観光へ行く人々の出発地点でプランを作る。着地側の情報を得るには旅行会社を介するのが、適当だったのだ。しかし、インターネットの発達により、観光客が個人で訪問先着地の情報を得られるようになった。観光客は、インターネットやSNSから情報を集め、個人の希望にあったルートで旅行を行うようになった。そのため、旅の目的や訪問先はそれぞれ違う。例えば、同じ大洗を訪れる人でも、アニメの聖地巡礼のために訪れる人とサーフィンをするために訪れる人がいる。アニメの聖地巡礼とサーフィン客では、目的もルートも異なってくる。そして、観光客に対して、旅行会社ではなく着地・訪問地側が情報を提供できるようになったのも、インターネットの普及によるメリットである。この時代の変化に合わせて、街も対応を変える必要がある。大衆に向けて情報を提供しているだけでは、コアな趣味・目的を持つ層に対するアピールが弱くなる。一度、このような人たちの心を掴むことができれば、リピーターになることも期待できる。大衆ではなく、規模は小さいがコアなファンを確実に増やすことのできる施策を練る必要がある。
土浦市における観光の課題は、土浦市のポテンシャルを生かしきれていないことである。土浦市における平成27年度の観光入込客は、1,460,300人である。しかし、その多くは以下の表7の3つのイベントに集中しており、イベント以外での観光入込客数は年間40万人、1か月あたりにすると約3万人の人が土浦市を訪れている。
また、土浦駅近辺に、まちかど蔵という歴史的小径があるが、現在では観光客はまばらで、活気はあまり感じられない。同じ歴史的町並みを持ち、都心から電車で1時間以上かかる千葉県香取市の観光客数は6,946,952人であり、土浦市における歴史観光のポテンシャルが低いことがうかがえる。
課題まとめ
- 中心市街地の空洞化
- さらなる成長のチャンスを逃している
- 観光資源を活かしきれていない
環境・農済・防災
環境
・地球温暖化
土浦市の環境問題の一つとして地球温暖化問題を取り上げる。温室効果ガスによる環境影響は、広域及び長期にわたる過剰な温室効果ガスの排出により大気中に蓄積された温室効果ガス全体によって地球規模で発生しているものであり、排出量の総量削減が喫緊の課題になっている。地球温暖化問題は全世界の課題であり、土浦市もその例外ではない。そのため土浦市の中で削減可能な二酸化炭素の排出を抑制していくことが求められる。図1のグラフは土浦市の二酸化炭素排出量削減の目標を示したものである(図3)。2020年には現在の排出量の6.2%、2050年には73%の二酸化炭素排出量を削減する目標を掲げている。しかし、現状、土浦市の温室効果ガスは現在も増加傾向にある。土浦市地球温暖化防止計画(1)では現状の推移から2020年の排出量の予測がされており、中期目標の排出量249万tを上回る、282万tとなることが推計されている。
・公害問題
公害問題は年々増加傾向にあり、内訳として悪臭、騒音、振動が高い割合を占めている。このような公害問題が起こる要因として近隣関係の希薄化とモラル、マナーの低下が考えられる。市民一人一人の意識の改善が課題解決には重要である。
・水辺環境
土浦市第二期土浦市環境保全計画(2)は土浦市の目指すべき将来像を「人と自然が共存し、暮らしつながる水郷のまち つちうら」としている。つまり霞ヶ浦の環境は土浦の環境問題の中で重要度の高い問題であるといえる。現在(平成28年)の霞ヶ浦の水質はCOD値(水中に有機物などの物質がどのくらい含まれるか示す指標)は7.14㎎/L、全リンの値は0.06㎎/L、全窒素の値は1.04㎎/L(3)。国の環境基準値は、COD値は3.0㎎/L、全リンの値は0.03㎎/L、全窒素の値は0.4㎎/L(4)であり、霞ヶ浦が汚い湖であることは明らかである。しかし、霞ヶ浦は形状の理由からも汚くなりやすい湖であることやすでに多くの水質改善策がとられていることも踏まえ、茨城県が定める「第7期霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画」(5)では霞ヶ浦の水質についてCOD値は7.4㎎/L、全リンの値は0.084㎎/L、全窒素の値は1.0㎎/Lを目標値としている。つまり、霞ヶ浦の現在の水質は国の環境基準は大きく超えているものの、茨城県が霞ヶ浦の水質改善に求める目標値はCODと全リンについては達成している。
また、同調査で霞ケ浦の環境問題について男女別に集計を行うと女性の方が関心が低い。また、年代別の集計では30.40.50代の関心が低いことが分かった。つまり30.40.50代の女性、一般的に言えば主婦層が霞ケ浦の環境問題について関心が低いのではないかと考えられる。
・動植物の保全
土浦市は、平地林や谷津田からなる里山、筑波山麓の豊かな山林を保有している。しかし一方で、これらの緑も都市化などにより年々減少している。それに対し、宍塚の里山では地元住民や行政など多様な主体が総合的な保全活動を展開しており、宍塚の里山環境は全体的に良好な水準と言える。
農業
土浦市全体の26.4%(3240ha)は耕地面積で占めている。全国平均が12%であることを考えると、土浦市において農業は大きな存在であることがわかる。また、農業就業人口も2130人おり、1204もの農業経営体数が土浦市内で存在する。農業生産額は近年では横ばいであるが、合計で96億2000万円にも及ぶ。
その中でも、図25において露地栽培に含まれるレンコンは土浦市農業の代表的な作物である。実際、土浦市のレンコンは日本で生産量1位を誇っている。レンコン以外にも、土浦市では様々な作物が栽培されている。先程述べたレンコンは霞ヶ浦沿い、新治の山間部の方では花きや果樹、そして、他の場所では稲や蕎麦、そして様々な野菜が栽培されている。
しかし、れんこんが有名であるなど農業が盛んである一方で、抱えている課題も多くある。以下では、課題を大きく二つに分けて示す。
ひとつめの課題は、新規就農者不足の問題である。図26のように、土浦市の農業就業人口は年々減少しており、今後もこの傾向は続くと推測できる。
また、農業就業者を年齢別に見ると、近年の農業の高齢化は顕著に表れており、2015年で65歳以上の割合が6割を超えている。また、この傾向は今後も続くと考えられる。図8は、土浦市の農家に後継者がいるかどうかを質問し、後継者がいると回答した人の割合とその所在場所を表しているグラフである。2000年と2015年の間に農業の担い手の割合が半分になっていることが分かる。以上より、農家数の減少、農家の高齢化、後継者不足の課題から新規就農者不足という大きな課題を導き出した。
2つ目の課題は、耕作放棄地の問題である。耕作放棄地とは農作物が1年以上作付けされず、農家が数年のうちに作付けされる予定がない田畑のことを指す。この耕作放棄地が増加することにより様々な問題が発生する。まず日本は食料自給率がそもそも低い国である。耕作放棄地が増加することで食料を生産する場所が減少することを意味するのである。また、土地が荒れることにより景観の悪化やそれに伴う害虫・害獣の発生が考えられる。これにより周辺地域への外部不経済が発生し土地の価値の低下を招く恐れもある。さらに農地が持つ雨水などの貯水機能などが低下し大雨による洪水防止機能の低下も考えられる。このように耕作放棄地によって多くの問題が考えられるといえる。
図のように土浦市の耕作放棄地面積は増加している。また不耕作年数が長い農地が多いのも課題の深刻な部分である。理由としても高齢化が大きな要因であることがうかがえる。図10より土浦市の耕作放棄地の面積率も全国、北関東と比べて上回っている。
これらのことから土浦市の農業の課題として、農家の高齢化、農家の減少、後継者不足による新規就農者不足と耕作放棄地の増加が挙げられる。
防災
・地震
まずは地震である。2011年に発生した東日本大震災では死者・行方不明者は0名で人的被害はほとんど受けることがなかったが、住宅は図31のように被害を受けた。東日本大震災は東北地方の三陸沖で発生した地震であったが、茨城県南部地震や福島県東方沖地震といった地震や、どの地域でも発生する可能性のある直下型地震というリスクもある。これらの地震が発生した際には東日本大震災以上の大規模な被害を受ける地震が発生する可能性がある。
図32は、市内において揺れやすさを示した地図である。茨城県南においてM7.3の直下型地震が発生した場合には、市内の多くの区域で震度7を観測するということが見て取れる。
・水害 水害は河川の増水や氾濫による洪水等の外水氾濫と排水路の雨水処理能力を超えて溢れる内水氾濫があるが、今回はより発生時の被害想定の大きい洪水に焦点を当てることとする。土浦市においては桜川と霞ヶ浦の氾濫による浸水想定がなされている。国が作成した桜川洪水浸水想定によると土浦駅前を含む中心市街地も浸水の被害を受け、3.0m以上つまりは建物の2階相当まで浸水する地区もあると想定されており、中心市街地を含む流域周辺で被害を受ける可能性がある。 ・土砂災害 最後に土砂災害についてであるが、市内には100箇所以上の土砂災害危険箇所が点在しており、主に真鍋周辺や高津周辺の段丘の斜面地、新治地区の北部に集中している。これらの地区の危険箇所の中には現在人家が立地している箇所が多くあり、土砂崩れやがけ崩れ等の斜面崩壊が起きた場合に家屋倒壊や人命に危険が及ぶ可能性がある。 ・災害全般に対する対策 続いては、土浦市の防災費予算についてである。前提として防災費がどの範囲の費用を示すのかを定義することが難しい。例えば、老朽化した橋梁の補修工事を行ったときに、それは見方によれば道路整備費であり、また、震災時に崩落しないためと考えれば防災費と考えることもできる。こういったことを踏まえ、今回は防災と関連があるものに関しての予算をまとめた意味での予算を見ていくことにする。
2011年に東日本大震災が発生し防災に対する意識が高まったことも影響し、図13に示すように防災費の急増が確認できる。2013年と2017を比較すると、4倍以上にまで増大していることがうかがえる。その多くはハード面の防災対策に割かれている。ここで、実際にはどのようなハード面の防災対策に費用が割かれているのかを具体的な例で見てみる。
土浦市の予算ページを参照すると、事業の一部が記載されていた。具体例の一つ目は地域防災対策整備事業である。内容は、防災井戸や防災行政無線の整備、非常用のペットボトル飲料水備蓄、防災井戸浄水装置保守点検である。この事業に対しての費用は約9500万円と非常に大きな額となっている。続いては、既存建築物耐震化促進事業である。これは、既存の建築物の耐震化を促進するというものである。耐震診断士の派遣、改修工事費の補助といった内容であるが、それだけでも約2900万円の費用がかかってしまっている。最後に橋梁耐震対策事業である。これは、橋梁の耐震化を目的とした事業である。道路整備の側面を持つ事業であるが約5800万円と決して安くはない予算が割かれていることがわかる。
これらの災害の対策を大きく分類すると、堤防の整備などを通じて直接的に被害を抑制する「ハード対策」と、避難訓練などを通じて被害削減のための意識付けを行う「ソフト対策」に分けることができる。直接的に被害を抑制するためには構造物を建設する必要があり、そのための莫大な費用を確保する必要がある。国土交通省の試算によれば、堤防を1km建設・維持管理するための費用は約6億円(14)である。桜川と霞ケ浦のみでも流域は20.8億円であり、総額で約125億円の投資を行う必要がある。
現状として、市がそのための予算を全て捻出することは困難であり、河川や霞ケ浦を管轄する県や国に依存しているということが浮かび上がってきた。しかし、「発生頻度が非常に低い」という災害が持つ特性上、将来的に市や国が支出を行い続けるとは限らない。
これらのことから、市民一人一人が的確なソフト対策を認識し、行動することができることが求められている。
課題まとめ
- 自然環境の評価の低さ
- 地球温暖化
- 新規就農者不足
- 耕作放棄地の増加
- 対策の大部分がハード寄り
住宅・コミュニティ・まちづくり・防犯・福祉・景観
商業
商業施設分布を見てみると、新治中地区の北部や一中地区の西部に商業施設が少ない。市民満足度調査「商店やマーケットでの日常の買い物」について、一中地区及び新治中地区は他地区と比較して満足度が低かった。これらのことから、商業施設が不足している地域の住民は、日常の買い物が不便だと感じていることが分かった。 以上より、商業としての課題は「日常の買い物が不便な地域がある」とした。
防犯
1000人当たりの刑法犯総数に着目すると土浦市は、47都道府県中10位に位置付ける茨城県の中でも2位であり、人口に対する犯罪が多い自治体である。各地区をみると刑法犯総数の多い地区と少ない地区が混在しているため、多い地区での刑法犯総数は特に着目するべきである点であると考えられるが、市民満足度調査で特に防犯が問題と考えていないという結果が出ているため、防犯面に問題意識をあまりもっていないことも課題と考えられる。
福祉
高齢者福祉施設に関して、特別養護老人ホームは市内に20カ所あるが、各施設あたり37~85名の待機者がいる。また、市内に約4カ所ある介護老人福祉施設についても各施設あたり2~9名の待機者がいる。土浦市の約100件の介護施設の定員を調べ、全中学校区で施設の受け入れ人数合計を把握し要支援者・要介護者数に占める割合を下記の式より算出した。
その結果、全中学校区において要支援者・要介護者数が施設の受け入れ可能な人数を上回ることが分かった。
さらに、福祉サービスの中でも、総合相談支援事業1870件・介護相談員派遣事業3432件・心配事相談事業210件と相談事業へのニーズが高い一方で、専門性の高い職員の確保が難しいのが実態である。
よって福祉における土浦市全体の課題として介護の担い手がいないことが考えられる。
交通
土浦市全体を見ると、公共交通網の整備が進んでいない地区が多く存在しており、自動車社会が形成されているという現状が見て取れる。停留所までの徒歩圏に入っていない地区は、農地や山岳地帯、工業地域などといったような人口が少ない地区となっていることもあり、公共交通網の整備を行う地区の選定が必要であるように思われる。
景観
各地区の景観を見学、考察した結果、歴史的要素や自然、商業といった様々な要素が各地区の景観を特徴付けていたが、今回は土浦市民の意見である市民満足度調査も参考にし、要素の中でも重要とされているものを分析した。その結果「湖や川をきれいにする対策」という項目の満足度が各地区において低かった。霞ヶ浦に面する中学校地区以外の地区でも同様の傾向がみられるため、私たちは景観として霞ヶ浦や桜川、花室川といった各中学校地区の水辺空間の要素が重要な課題であると考えた。
課題まとめ
- 日常の買い物が不便な地域がある
- 刑法犯総数が多い
- 高齢者福祉(介護)の担い手が少ない
- 中心市街地までのアクセス
- 水辺の景観
市民協働・教育・人材育成
市民協同・教育・人材育成
まず一つ目は「市民協働そのものに対する問題」である。土浦市はそもそも市民協働の定義を定めていなく、市民協働を広めるパンフレットのようなものもないため、市民全体で市民協働に対する考えが統一されていないことがわかった。 二つ目は「協働の担い手の高齢化と強い固定観念」である。高齢社会である土浦市では高齢者の権限が強く、NPOが動きづらい傾向にある。また市民協働の担い手もほとんどが高齢者で、土浦市民情報サイト「こらぼの」 に掲載されている団体を調査したところ、団体構成年齢の約70%が60歳以上と言う結果が得られた。またヒアリング調査からそれらの高齢者は土浦市の現状に満足しており、地域への問題意識が薄いことも分かった。 三つ目として「市民協働における行政システムの問題」が考えられる。行政が抱える課題を市民に明示できていないことや、各課の連携が取れていないことから、市民協働がまちの課題解決に直結していないことがわかった。「まちづくりファンド」の応募件数も事業開始時期は好調であったものの、年々その数は落ち込み平成29年度は1件に留まっている。図5はその推移である
課題としては、
①市民協働を活性化させる手軽な方法がない
土浦市で協働事業を行うには、少し複雑で面倒なプロセスを踏む必要があることや市民協働を始めるにあたって覚悟が必要となること、さらに提案を団体でする必要があるため提案へのハードルが高いことがあげられる。これらのことから「手軽に些細な気づきを個人単位で発信できるような場所が不足している」と言える。
②市民協働の新規事業が少ない
「まちづくりファンド」における新規事業応募数は年々減少しており、新規事業が少なくなっていることがわかる。
③市民協働参加者の属性が偏っている
図36は土浦市民活動情報サイトの「こらぼの」に掲載されている団体の構成員の主な年齢層の割合である。これを見ると60代の団体が7割も占めている。また市へのインタビューより市の行うワークショップの参加者も高齢者に偏っていることがわかり、若者の市民協働への参加を促す必要があるといえる。
以上の三つの課題を踏まえて、今後土浦市には「幅広い世代が気軽に市民協働に参加できる環境」が求められていると言える。
課題まとめ
- 手軽な活性化方法がない
- 少ない協同新規事業
- 参加者属性の偏り