街構想 ~にぎわいで愛着のもてる商店街~
- 中心市街地の活性化は、地域愛着の醸成にも肯定的な影響を及ぼしうるということが分かっている(鈴木ら,2011)
- 一方で、満足度調査において「中心市街地のにぎわい対策」や「駅前開発など中心市街地の整備」の項目は、
- 重要度は高いものの、満足度は低いという結果を示している。
- 土浦駅から450mほどの場所にあるモール505は、かつては中心市街地の商業の中心としてにぎわったが、現在では空きテナントが増え、
- 2Fの空き店舗率(=空き店舗数/総店舗数)は55.6%、3Fは50%と、フロアの半分以上が空き店舗となっていることが分かった。
平成26年土浦市中心市街地活性化基本計画によると、年度別歩行者交通量調査結果は右図のようになり、平成24年度に少し持ち直してはいるものの、平成19年から5年間減少傾向にあることが分かり、定量的に見てもモール505は以前と比較して市民からの需要が減少していると言える。 |
![]() 図5-1 年度別歩行者交通量調査結果 |
提案:モール505リニューアル
- 商店街に期待される物理的機能として
- 「おしゃれな雰囲気のある商店街」、「専門店や個性的な店のある商店街」、
- 「ひと休みできる場所のある商店街」といった項目が挙げられる(髙橋ら,2014)。
- 昭和60年代に建てられ、老朽化も進むモール505においてにぎわいのある商店街を形成するために、
- 既存の建物をリノベーションにより大型複合商業施設として整備することを提案する。

図5-2 モール505リニューアル イメージ図
![]() 図5-3 ニューウェイ縮小区間(※) |
最初の段階として、モール505の1Fをリノベーションし、同時に駅からの動線の整備、 ニューウェイの区間縮小といった、モール505の周囲も含めた環境整備を行う。ニューウェイの縮小区間に関しては左図に示す。 旧ニューウェイが土浦駅東口まで延びるのに対し、区間縮小後のニューウェイはモール505の建物を一部取り壊し、国道125号線に下りる形で整備される。 |
- 提案の核として、コンセプトカフェ街、まちの駅、お試し店舗の3つが挙げられる。
- まず、コンセプトカフェ街とは、すでにモール505に存在するテクノロジーカフェや、土浦市・霞ケ浦周辺で人気のサイクリングをコンセプトとした自転車カフェなど、いわゆる普通のカフェとは一味違ったおもしろいカフェを集めたカフェ街のことである。
- また、住民によって運営され、住民の交流の場、発表の場として利用できるコミュニティカフェも備えることで、
- 同じ趣味や興味を持つ人が集まったり、そういった人たちと住民が交流したり、という効果が期待できる。
- 先に述べたような商店街に期待される物理的機能を備え、ここでの交流が、人々の愛着形成に繋がると考えられる。
次に、まちの駅だが、すでにモール505でまちの駅と呼ばれるほっとOneをさらに魅力のある施設へと整備する。観光案内所や休憩所といった今ある機能に加えて、前述した農家の学校「にいはり」で作られた野菜を学校の生徒が販売する直売所や、現在まちかど蔵で行われているレンタサイクル機能を付ける。 | ![]() 図5-4 まちの駅 主体関係図 |
![]() 図5-5 お試し店舗 主体関係図 |
最後のお試し店舗は、アフター6(会社が終わった後の午後6時から営業すること)や会社が休みの休日だけ営業などライフスタイルに合わせて、モール505内の空き店舗を利用してお試しで起業することができる。 本来なら起業には様々なハードルが伴うが、お試し起業をすることで起業者は経営ノウハウを獲得や住民との交流、商店街との良好な関係作りが可能になり、起業のハードルを下げることが出来るだろう。 |
5,20年後の展望
- およそ5年後は、個性的なお店に住民が集まること、観光案内所を通じて駅から歴史の小径までの中継拠点となり
- 観光客の動線が作られていくことなどが予想される。住民は観光案内所・休憩所・野菜直売所といった施設の運営や、レンタサイクルの管理など
- 商店街への新たな関わり方が増える。住民がただ訪れるだけでなく、商店街形成に参加しやすい、商店街づくりを目指す。
- 利用者としてもまちの駅に立ち寄ることで、住民同士の交流を越えた、観光客と住民との交流を生みだすことができると予想される。
- およそ20年後は、商店街や土浦市にとっても、頭を悩ませている中心市街地における空き店舗問題を解消する糸口となる。
- お試し店舗利用後、実際に起業したいという利用者に対してはモール505内や、中心市街地の他の空き店舗を安い賃料で紹介する仕組みを
- 整えることで、構築された良好な関係を崩すことなく中心市街地の活性化を実現できるだろう。
- モール505はかつてのように街の中心として栄え、住民と観光客でにぎわう拠点になると予想する。
-
図5-6 街構想イメージ
モール505をリニューアルすることで、よく知っている馴染みの商店街が再生される。そこで開催されるイベントでの交流が促され、
個性的な商店街が作られていくことで愛着が生まれる。またそれが住民のイベントへの参加やコミュニティカフェの利用を促すほか、
商店街を管理したりイベントを企画したりする住民の参加行動を喚起する。
このようなサイクルで、モール505において我がまちという意識が生まれる。
図5-7 我がまち形成へのアプローチ(街構想)