土浦の中心市街地として、「モール505」をプロジェクトの対象とする。
モール505は昭和40年に開業した日本最大級の長さを持つ505mの商店街であり、
高架下に交流の場となる広場を有している。
かつては土浦市を代表する商業施設であり、土浦市の都市部を構成する重要な要素であると考えた。

市全体を見ると、モータリゼーションの進展や郊外へ大型店の進出により、
定住人口の減少と商店街の魅力低下が進行している。
図4よりH19年まで(土浦イオンができるまで)の事業所数の減少は明らかであり、モールの店舗数が減少している。
実際にモールを訪れるとシャッターの下りている店が多数存在していた。

また、土浦都市開発株式会社常務取締役伊藤光二郎様にお話しを伺ったところ、
モール505について、以下の2点の問題点が浮かび上がった。
@モール505の現在の利権者は現状の改革に意欲的ではない
A空きテナントへの店舗誘致が容易でない
この理由として現在の利権者には高齢者が多く、変革を求める若い人の声に耳を傾けないということと、
モール505最盛期時代の貯えがあり固定資産税等の維持費用を負担と感じていないということが理由にあげられるそうだ。
これらの問題を解決し、モール505の改善を図り、都市部の魅力向上につなげるため提案を行う。
モール505の魅力向上、活性化のため以下の2つを軸とした提案を行う。
(1)地主・権利者の意識改革
(2)建物改修事業
(1)改修事業前の利権者の意識改革
ヒアリング調査より、モール改善のためには土地所有者の意識改革が必要であると考えた。
そこで、意識改革を促すものとして以下のような提案を行う。
a.利権者に対して固定資産税増税による現状維持の危機感の植え付けを行う。
b.改善事業への積極的参加を促す。参加意欲を受けられれば実際の事業へとつなげる。
c.改善事業参加へ積極的になれない利権者には、所有権を手放すことを促して、固定化を回避する。
市の政策として固定資産税の増税を行い、利権者にモール505改善の必要性を感じてもらい、
市と利権者が協力して改善事業を進めていけるような体制をつくる。
また、新たなテナント誘致をスムーズに行うため、商工会との連携や助成金制度も行う。
助成金によって新規開業を支援することで、モール505での店舗開業を促進して活性化につなげたいと考えている。
固定資産税増税による負担が解消されるよう、利権者がテナントを誘致する際の補助や誘致後の運営への助成を行い改善事業に参加する意義を示し、
より多くの利権者に理解してもらうことで、一体となってモール505の魅力づくりができるような体制を整えていきたいと考える。
(2)建物改修事業
現状のモール505は写真のようにシャッターの下りている店が多く、外観も汚れてきているため、新たなテナント誘致は難しい状況である。
また、店舗が点在しており利用者にとっても使いにくい環境となっている。そこで、新規事業者がテナント候補地として選択しやすい環境を提供するとともに、
利権者が誘致に積極的になれること、利用者のことを考えたモールそつくることを目標とし、以下のようなルールを定める。
1.シャッターの禁止
2.利用者の目的に合わせた店舗配置の導入
3.交流空間(たまり場)の導入
モール505の現状
1つ目のシャッターの禁止に関しては、モール全体の景観を向上させることが目的である。
閉店時シャッターを下ろすことで、その店舗だけモールから切り離される状況はモール全体の景観に穴を開けることにほかならない。
これを防ぎ、常にモールの構成要素としてあり続けるために、店全体のデザインを制限する。
写真のように閉店時も店の中が見えるようなものを取り入れることで閉塞感をなくし、
歩きやすい空間にするためテナント側に働きかける。各店舗がモール全体のことを考え、
外観に工夫することでモールの景観が向上し、魅力づくりにつながっていく。
利用者にとって歩きたくなる空間とし、さらに新規テナントにとっても店を出したくなる空間とすることを目指す。

修景前 修景後
2つ目の店舗配置は利便性の向上を目指していたルールである。現在のようにただテナントを配置するのではなく、
雑貨屋や飲食店など気軽に立ち寄れる店舗は1・2階に、クリニックや事業所など目的を持って行く店舗は3階に配置する。
3階部分は何か目的がなければ行きづらい場所であり、逆に1・2階部分はウィンドーショッピングを目的とした人も多く行き交う場所だと考え、このような配置を提案する。
3つ目は他のプロジェクトとの協調を取り、たまり場として活用できるラウンジを配備するものである。
1階部分に誰でも使える空間をつくることで、モール利用者同士の交流や近隣に住む人々の交流を生み出すことを目的とする。
なおこれらの費用は先の増税分と県や市の助成金をもとに行われ、利権者・商工会・市が三位一体となって事業の推進を行う。
地主や地権者の意識改革を行い、たまり場プロジェクトとも協力することで商業の場だけでなく、交流の場としての機能も持つことができるようになる。
また、同プロジェクトの移動販売が新治地区など農村部を中心にしている事と対比して、本プロジェクトは都市部を対象にしている。モール505の活性化により、土浦駅を中心とした地域が活性化する。よって土浦の都心としての魅力が向上する。