マーケット・メカニズムによる近未来型の交通渋滞管理法

 交通渋滞を抑制し既存の道路インフラを効率的に活用するためには,交通需要を適切に調整するための施策が重要です.本研究では,道路の予約制と予約の取引マーケットを組み合わせた近未来型の交通渋滞管理法「ネットワーク通行権取引制度」を提案し,制度導入後の(均衡)状態において社会全体の総交通費用が最小化されることを理論的に証明しています.また,均衡状態を達成するための“インテリジェント”なシステム(利用者の選好に基づき出発時刻・経路選択や通行権取引を行うシステム)の設計にも取り組んでいます(図はその概念図).さらに,以上の知見と自動運転や MaaS (Mobility as a Service) といった技術進展を踏まえた次世代交通システムのあり方についても研究を行なっています.

<主要 & 最近の業績>(*は研究室の指導学生)
K. Wada, T. Akamatsu & S. Kikuchi: Convergence of day-to-day traffic dynamics under tradable bottleneck permits, Urban Transport XIV. Urban Transport and the Environment in the 21st Century, Vol.14, pp.579-588, 2008.
K. Wada & T. Akamatsu: A hybrid implementation mechanism of tradable network permits system which obviates path enumeration: An auction mechanism with day-to-day capacity control, Transportation Research Part E: Logistics and Transportation Review, Vol.60, pp.94-112, 2013.
T. Akamatsu & K. Wada: Tradable network permits: A new scheme for the most efficient use of network capacity, Transportation Research Part C: Emerging Technologies, Vol.79, pp.178-195, 2017.
P. Wang, K. Wada, T. Akamatsu & T. Nagae: Trading mechanisms for bottleneck permits with multiple purchase opportunities, Transportation Research Part C: Emerging Technologies, Vol.95, pp.414–430, 2018.

道路ネットワークの交通流特性解析と交通制御

 現在,道路ネットワークの個別リンクの交通状態把握やそれに基づく制御は実施されている一方で,ネットワーク全体の性能を向上させる実用に耐えうる制御手法は確立されていません.本研究は,道路ネットワークの交通状態・性能を巨視的に表現するためのMacroscopic Fundamental Diagram(MFD)の特性解析を実証・理論の双方から行なっているほか,道路ネットワークの交通信号群を連動させて制御する系統制御の最適化(図は最適信号パターンの様子)に関する研究も行なっています.

<主要 & 最近の業績>(*は研究室の指導学生)
P. Wang, K. Wada,T. Akamatsu & Y. Hara: An empirical analysis of macroscopic fundamental diagrams for Sendai road networks, Interdisciplinary Information Sciences, Vol.21, No.1, pp.49-61, 2015.
K. Wada, K. Usui*, T. Takigawa* & M. Kuwahara: An optimization modeling of coordinated traffic signal control based on the variational theory and its stochastic extension, Transportation Research Part B: Methodological, Vol.117(B), pp.907-925, 2018.
K. Wada, K. Satsukawa*, M. Smith & T. Akamatsu: Network throughput under dynamic user equilibrium: Queue-spillback, paradox and traffic control, Transportation Research Part B: Methodological, Vol.126, pp.391-413, 2019.

高頻度鉄道システムの単純化モデリングとその応用

 首都圏における高頻度鉄道システムは,膨大な通勤需要への対応を可能とする一方,「慢性的な混雑と列車遅延」という副作用を引き起こしています.本研究では,この問題の全体像を簡便かつ的確に捉えるために,乗客の時間集中(出発時刻選択)という需要側の要素と,駅・線路上における列車混雑・遅延という供給側の要素の相互作用を表現する,ミニマルかつ解析的な取り扱いが可能な「鉄道流率 vs. 鉄道密度 vs. 乗客(需要)流率の関係を表す(Fundamental Diagram)モデル」を提案しています.これは,鉄道システムの動的分析において通常別々に扱われる需要と供給の問題を統合したユニークなモデルであり,現在,実データを用いたモデルの検証を進めるとともに,システム全体についての一般的知見を導くこと,その知見に基づく需給双方の交通マネジメント戦略を提案することを目標に解析を行っています.
 また,鉄道における自動運転技術の高度化(高速な分割・併合技術)を前提とした新たな鉄道運行スキームについても提案し,連続体近似モデルに基づく理論分析を進めています.

<主要 & 最近の業績>(*は研究室の指導学生)
T. Seo, K. Wada & D. Fukuda: Macroscopic models of urban rail transit for dynamic assignment, arXiv:1708.02147, 2017.
J. Zhang* & K. Wada: Fundamental diagram of urban rail transit: An empirical investigation by Boston’s subway data, hEART 2019: 8th Symposium of the European Association for Research in Transportation, Budapest, Hungary, 2019.
J. Zhang*, K. Wada & T. Oguchi: Morning commute in congested urban rail transit system: A macroscopic model for equilibrium distribution of passenger arrivals, arXiv:2102.13454, 2021.
T. Seo, K. Wada & D. Fukuda: Fundamental diagram of urban rail transit considering train–passenger interaction, Transportation, 2022.
岸川知樹*, 和田健太郎:高速な連結・解結を前提とした新たな高頻度鉄道運行スキーム, 土木学会論文集D3(土木計画学), Vol.77, No.5, pp.I_1109-I_1119, 2022.

動的交通ネットワーク流の理論

 渋滞現象を正しく表現可能な動的交通ネットワーク流モデルは,きめ細かな需要管理施策や ITS (Intelligent Transportation Systems) の評価といった現代的な交通計画あるいは交通運用上の課題に対応する理論的基盤として開発されました.しかしその一方で,その数理特性や解法に関しては不明な点が多く残されています.本研究は,システムを記述するための座標系を,通常用いられる時間-空間(オイラー)座標系から時間-車両(ラグランジュ)座標系に変換する,というアプローチによりこの問題に取り組んでいます.現在まで,いくつかの限定されたネットワークに対して,均衡状態の唯一性や均衡交通パターンの規則性,均衡状態や社会的最適状態の大域的安定性を理論的に証明することに成功しています.また,対象とする問題の最適輸送理論との数学的同型性の指摘(図はこの研究関連のもの)やゲーム理論におけるあるゲームのクラスとの関連付けを行うなど,従来にない視点によるモデルの解釈を提示しています.

<主要 & 最近の業績>(*は研究室の指導学生)
T. Akamatsu, K. Wada & S. Hayashi: The corridor problem with discrete multiple bottlenecks, Transportation Research Part B: Methodological, Vol.81, No.3, pp.808-829, 2015.
K. Satsukawa*, K. Wada & T. Iryo: Stochastic stability of dynamic user equilibrium in unidirectional networks: Weakly acyclic game approach, Transportation Research Part B: Methodological, Vol.125, pp.229-247, 2019.
和田健太郎:動的交通均衡配分理論の近年の進展, 土木学会論文集D3(土木計画学), Vol.76, No.5, I_21–I_39, 2021.
T. Akamatsu, K. Wada, T. Iryo & S. Hayashi: A new look at departure time choice equilibrium models with heterogeneous users, Transportation Research Part B: Methodological, Vol.148, pp.152-182, 2021.
K. Satsukawa, K. Wada & D. Watling: Dynamic system optimal traffic assignment with atomic users: Convergence and stability, Transportation Research Part B: Methodological, Vol.155, pp.188-209, 2022.
板橋昂汰*, 和田健太郎:需要分布を内生化したタンデムボトルネックにおける出発時刻選択均衡, 土木学会論文集D3(土木計画学), Vol.77, No.5, pp.I_1045-I_1055, 2022.
H. Fu, T. Akamatsu, K. Satsukawa & K. Wada: Dynamic traffic assignment in a corridor network: Optimum versus equilibrium, Transportation Research Part B: Methodological, Vol.161, pp.218–246, 2022.

交通流理論

 道路における交通渋滞現象を解析する,あるいは,その対策を立てる基盤となる交通流理論を発展させるべく,マクロな視点に基づく流体力学的モデル(Kinematic Wave (KW) モデル)を中心に研究を行なっています.現在までで取り組んだのは,(i) 確率的なKWモデルの開発,(ii) サグ部(*)における渋滞現象の説明理論の構築,です.(i) は,信号待ち時間に大きな影響をおよぼす交差点への車両のランダムな到着を表現するために開発を行い,現在はその一般化に取り組んでいます.(ii) は,サグ渋滞中における交通容量低下(Capacity Drop)現象を説明する新たな理論をKWモデルの一般化により構築したもので,現在は実証データによる理論の検証や自動運転車両による渋滞削減制御ロジックの開発を進めています(図は提案モデルと実データの比較の一例).

(*)勾配が下から上りに変化する区間,国内の都市間高速道路渋滞の大部分を占める

<主要 & 最近の業績>(*は研究室の指導学生)
K. Wada, K. Usui*, T. Takigawa* & M. Kuwahara: An optimization modeling of coordinated traffic signal control based on the variational theory and its stochastic extension, Transportation Research Part B: Methodological 117(B), 907-925, 2018.
K. Wada, Irene Martínez & Wen-Long Jin: Continuum car-following model of capacity drop at sag and tunnel bottlenecks, Transportation Research Part C: Emerging Technologies 113, 260-276, 2020.
和田健太郎, 甲斐慎一朗, 堀口良太:高速道路サグ・トンネル部における渋滞発生後捌け交通量を改善する走行挙動, 交通工学論文集, Vol.8, No.2, pp.A_1–A_8, 2022.
和田健太郎, 邢健, 大口敬:高速道路サグ・トンネル部における渋滞発生後捌け交通量の低下メカニズム, 交通工学論文集, Vol.8, No.3, pp.1–10, 2022.

研究室紹介

Introduction of TSS lab. (in English)