6.今後の課題


6-1. 授業と連動させたシェアサイクルの需要予測

シェアサイクルの需要予測について、今回はOD表のデータをもとに、とりあえず全体で必要な台数を300台と予測している。しかし、シェアサイクルの利用が1方向に偏ることによるリバランスの問題、すなわち、曜日や時間帯によって、それぞれのステーションに止めてある台数に偏りが出ないかどうかや、そもそも300台で足りるのかどうか、これらについてはOD表データだけで予測を出すのは難しい。そこで、CEGLOCでの授業(外国語)や体育について、時間帯ごとの受講人数を時間割ごとに集計し、そのデータをもとにシェアサイクルの需要予測をする必要がある。

6-2. 提案した制度を試験運用する機会

提案の実現のためには、利用者である学生や管理などのステークホルダーにこの制度を受け入れてもらう必要がある。そこで、制度を試験運用する機会を大学全体で実施する必要がある。例えば、「ペデストリアンデッキノーチャリデー」なる日を設定し、学生にこの制度を体験してもらうことで、自転車でループ道路を使うことになっても極端に不便にはならないことを実感でき、提案の理解につながると考える。そもそも、こうした試験運用やその後の本運用には、特に学内交通全体の管理者である大学側の理解と賛同を十分に得る必要がある。これには、私たちが今回の実習で蓄積したデータを元にした制度の必要性を示した上で、先行事例も交えて説得をすることが重要であると考える。

6-3. 制度の導入コスト推定

GPSの購入や自転車塗装・メンテナンスにかかる費用など、シェアサイクル導入にかかるコストや、駐輪場増設にかかる費用など、制度導入にかかるコストについて、より詳細に推定する必要がある。

6-4. シェアサイクルの盗難防止

シェアサイクルの盗難については、基本的には利用者のモラルに依存する。しかし、他のシェアサイクル導入事例において盗難やほかの場所への放置が続出したケースを考えると、利用者へのマナー周知だけに頼るのは、得策ではないと考える。

 シェアサイクルの盗難を防止するためには、GPSの導入に加えて、次のような方策が必要である。
・会員登録制にし、各利用ごとに利用者を特定できる仕組みにする。
・鍵をかけておく。ただし、面倒なく簡単に鍵を解除できる仕組みにする。
・罰則を設け、返却をしない利用者に対しては制裁金を科す。

「鍵をかける」については最終発表における提案と矛盾してしまうが、鍵の解除が「筑波大生限定で」簡単に行うことができれば、それほど不便にはならない。

 

これらを満たし、かつ導入コストを極力抑える方法としては、自転車シェアサービス「COGOO」の導入があげられる。これは、京都大学や千葉大学など、6つの国立大学で導入されているシェアサイクルのシステムである。 ただし、コストが高くなるなどの課題もある。

7.エピローグ~理想のキャンパス空間~

ここまで述べてきた通り、ペデストリアンは大学交通において重要な役割を果たしている。
しかし本来ペデストリアンには、ただの道、としての機能だけではなく、人々が滞留しそこで時を過ごす場としての機能もある。本提案が実現できれば、この機能をもっと活用できる、と考えている。
そこで、提案が実現した時のペデストリアンを、学生がより主体的に、活発的に使っていくことができる空間に変えていきたいと考えた。我々は、2,3学エリアを「にぎわいの場」、石の広場を「休息の場」、1学エリアを「象徴の場」として各場所の理想の空間の使われ方を提案したい。

2.3学 ~にぎわいの場~

「にぎわいの場」とした2,3学エリアの中でも特に、もともと多くの自転車が駐輪してあった3A棟前は提案実現後にはとても広い空間が残る。その場所に学食のテラス席を作ることやそこでバンドなどの演奏会を昼休みに開くことを提案したい。多くの自転車がなくなり閑散とした空間となってしまうのを防ぐとともに、学食の混雑解消に手助けとなることも考えられる。

石の広場 ~休息の場~

「休息の場」とした石の広場は、とても広い空間があるにも関わらず、あまり積極的に使われることがなかったが、ペデストリアンデッキ上に歩行者が増えることが予想されるため、この機会にうまく活用することができるのではないかと考えた。イスやテーブルを設置したり、日陰のできるテラスを用意したりすることを提案したい。そばにある図書館やスターバックスとともに一休みする場所として活用することやキッチンカーをより積極的に利用することで、多くの人が休息する場とすることができると考えられる。

1学 ~象徴の場~

「象徴の場」とした1学エリアは、キャンパス創設時に南北からの人々の動線が交わる場(狭間)としてキャンパスの中心的な場所として捉えられており、意図的に狭い空間になっている場所である。そのため目立つモニュメントやアート作品を芸術専門学群の学生などに作ってもらい設置し、筑波大学のキャンパスにおいて象徴的な場所とすることを提案した。また自転車の駐輪がなくなり広いスペースができる1A棟前にテラスを置くことやシェアサイクルの修理場所を置くことも加えて考えられる。