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調査

調査にあたり

外国人居住者、留学生、日本人学生を対象としたアンケート調査と、筑波大学周辺の店を対象としたヒアリング調査を行うことを決めた。
そこで調査の対象とする店舗を、外国人の来店が多く、なおかつ今後留学生雇用の可能性がある業種に絞る必要があった。
予備調査として行っていた留学生へのヒアリングで、アルバイト先にコンビニやアパレルが多かったことと班員の経験から考え、
調査する対象の業種を、ファミレスコンビニ・スーパーアパレルの3業種に決定した。
コンビニとスーパーを1業種としてまとめて扱ったのは、営業の形態が近く、区別する必要がないと考えたからである。

アンケート調査、ヒアリング調査について

表1.アンケート調査概要
目的 つくば市の外国人居住者が各業種の店において抱える言語の問題、留学生の言語能力、およびアルバイト状況について明らかにする
対象 つくば市内の外国人居住者、留学生、および比較対象の日本人学生
方法 日本語/英語対応で作成したGoogleフォームのアンケートをSNSによって拡散
表2.ヒアリング調査概要
目的 外国人顧客への対応、および留学生のアルバイト雇用について、店舗側の考えを把握する
対象 筑波大学周辺のファミレス、コンビニ・スーパー、アパレル、各業種6店舗(計18店舗)
方法 店長または担当の方に協力を依頼。
直接ヒアリング:16店舗、電話対応:1店舗、メール対応:1店舗

以下、アンケート・ヒアリング調査で得られたデータから行った、仮説の検証である。

仮説検証1.外国人居住者はどのように困っているのか

図5、図6は、アンケート調査から分かった、外国人居住者が業種別にどのような場面で困るのかを示したグラフである。
全体的に40~50%の外国人居住者が、言語が分からず困ることがあると回答している。
また、店員の言語が分からず困る頻度は、ファミレス、アパレルで特に高い。
この部分は、留学生がアルバイトとして接客することによって改善できる可能性がある。

仮説検証2.店はどのように対応しているのか

ヒアリング調査の結果、店ごとに外国人対応の考え方が異なることが分かった。
以下、各店舗をそれぞれの傾向に従って3つに分類したものである。

図7.店の分類の図式

表3.対応の考え方による店舗の分類
A.外国人客が少ない場合 外国人の来店が少ないため、外国人客への組織的な対応をしておらず現在の状況に満足している。サステナ班による改善の余地はないと考える
B.対応の改善を検討 ファミレス、アパレルにみられた。外国人客への組織的な対応を行っており、さらなる改善を考えている。留学生アルバイトによる対応改善の余地がある
C.現在の対応状況に満足 該当するコンビニについては、大学近辺にあり日本語が話せる留学生客の割合が高く、客側、店側双方、困ることは少ないようだった。 該当するファミレス、アパレルについては、メニューの外国語表記などによる対応がみられたが、留学生アルバイトによる接客の改善の余地はあると思われる

以上より、外国人顧客が多いファミレス、アパレルの中で、
・対応の改善を検討している店
・現在の対応状況に満足している店
があることが分かった。
これらの店では、留学生のアルバイトによって外国人対応を改善できる可能性がある。

仮説検証3.留学生のアルバイトによって解決できるのか

仮説検証3では、留学生のアルバイトによる言語問題の解決という想定が
現実的に考えて妥当かどうかを、店の視点、留学生の視点それぞれから検証する。

(1)店の視点から分析
店へのヒアリング調査で、留学生のアルバイト雇用に関する質問をした結果、 店ごとに留学生の雇用についての考え方に違いがみられた。以下、その違いに従い各店舗を分類したものである。
A.日本語で日常会話ができれば、期待する能力は日本人と同じ(該当:12店舗)
B.日本語で日常会話ができる上で、多言語能力の発揮に期待する(該当:5店舗)
C.過去の経験から、外国人の方を雇うことに抵抗がある(該当:1店舗)
このうち、A、Bに該当する店舗は、留学生を雇用する可能性があると言える。

(2)留学生の視点から分析
留学生の視点について、
①店が雇う条件とする日常会話レベルの日本語ができる留学生がどのくらいいるのか
②外国人客に対応できる多言語能力を持つ留学生がどのくらいいるのか
③留学生は現状どのようにしてアルバイトをしているのか
の3つの項に細分化して考える。

①留学生の日本語能力

図8は、アンケート調査から分かった、留学生の日本語能力試験の資格者数である。
表4と比較し、約58%の留学生が日常会話レベルの日本語を話すことができると考えられる。
このデータを、筑波大学の国籍別留学生数を用いて拡大すると、
筑波大学の全留学生2,457人中、約1,380人が日常会話レベルの日本語能力を持っていると計算できる。
このように、多くの留学生が店の雇う条件の日本語能力を持っていることが分かった。


②留学生の多言語能力

図9、図10は、アンケート調査から分かった、N1からN3の資格を持つ留学生のうち、英語、中国語が話せる留学生数を示している。
すなわち、留学生のうち、日本語が日常会話レベルかつ、英語か中国語の少なくともどちらか話せる人は51%である。
このように、多くの留学生が多言語能力を持っていることが分かった。


③留学生のアルバイトの実態

図8は、留学生のアルバイト経験についてのアンケート結果である。
ここに掲載していないデータではあるが、現在アルバイトをしていない留学生の多くは、その理由を聞いた設問で「時間がないから」という回答をしていたため、 アルバイトをしていない留学生に無理にアプローチすることはできないと考えた。
以下では、アルバイトをしている留学生に着目して、その傾向を示していく。
図12、図13から、留学生のアルバイト先に偏りがあることが伺える。
特に図13からは、主にコンビニに留学生のアルバイトが集中しているが、ファミレスにも突出して留学生が多い店舗があることがわかる。
留学生の多いところと少ないところで極端に差が生まれていると言える。
下の図14から、この偏りの原因は、留学生が知り合いを同じアルバイト先に紹介することが多いからだと考えられる。
図15は、アルバイト先に求める条件についてのアンケート結果である。
「職場の人間関係が良好」という回答が上位に来ていることと、留学生の多くが知人の紹介でアルバイト先を決めることから、
留学生は職場の雰囲気を重視しているのではないか、ひいては、事前に現場を詳しく知ることができる仕組みがあれば、
アルバイトを始めやすくなるのではないかと考え、アルバイト体験システムの導入を店に提案することを決めた。