現状
経済産業省では買い物弱者を支援するために、3つの方法を示している。
・第1の支援:家まで「商品を届けよう」
→身近な場所で提供できないモノやサービスを移動販売車や仮設店舗、宅配などで届ける
・第2の支援:家から「出やすくしよう」
→家まで乗合タクシーで送迎したり、気軽に乗れるコミュニティバスを運営したりすることで外出しやすくする
・第3の支援:身近な場所に「店をつくろう」
→身近に買い物できる場所で、生活に必要なモノやサービスを提供できる店を作る

つくば市の買い物の現状を知るために、つくば市経済部産業振興課に、ヒアリング調査を行った。 市は、近年進行している高齢化に加えて、地域の商店街の事業所数・商品販売数が減少している状況を受けて、地域の暮らしを支える事業展開を検討し始めた。 調査・検討が進む中で市は、昭和50年前後に集中的に開発された住宅団地が存在し、現在高齢化が著しい茎崎地区を対象として、買い物環境に関する住民アンケートを実施した。
その結果、まず住民の自動車利用について、老夫婦や単身世帯は自動車を利用しない割合が多いこと、また住民の買い物に対する不便感については、年齢が高いほど「不便に感じる」と答える傾向があった。以上から将来茎崎地区の高齢化が進行して車を利用しなくなると、住民はますます買い物に不便してしまうことがわかった。
このアンケート調査を踏まえ、市は、カスミに3年間の期限付きで事業委託し、2013(平成25年)、茎崎地区を中心に移動販売事業を開始した。また、他に現在つくば市で行われている買い物支援サービスには、イオンモールつくばが運行する無料送迎バスがある。このバスは月に1回、茎崎地区とイオンモールつくばの間を往復しており、主に自動車を運転できない高齢者が利用している。さらに、茎崎地区では「友の会たすけあい」というNPO法人も活動している。この団体は、様々な理由で移動するのが困難な人たちに対し、車を使って外出を助ける有償ボランティアを行っている。
調査概要

アンケート調査概要

調査結果
〇ヒアリング調査〇森の里団地では、移動販売と無料送迎バスの運行がなされているものの、「店をつくろう」という第3の支援はなされていない。その利便性を考えれば、住民から見て最も期待される支援であろう。そこで我々は、何が第3の支援の実現の障害となっているのか、また、その実現のためには何が必要とされるのかを探るため調査を行った。まず森の里団地について、より詳細に状況を把握するため、森の里団地の自治会長に対してヒアリングを行った。
入居当時は、活気のある団地であったが、現在、スーパーは約20年も前に撤退し、店舗のシャターは閉められたままである。また、近年まで辛うじて残っていた米屋、野菜直売所、ボランティアによる定期市についても、利用者の減少と売り上げの低下に伴い、廃止・撤退となってしまったそうだ。現状として、団地内には食料品を取り扱う店舗は存在せず、中心部には空きテナントが立ち並ぶ。需要が縮小し、地域サービスが撤退していく森の里団地においては、新規に店舗が出店してくる事は期待できず、仮に参入が起こったとしても、その運営の継続は厳しいだろう。故に、新規店舗の参入・継続のためには、何らかの経済的補助が求められる。
次に、そのような森の里団地を中心として、移動販売事業を展開するカスミに対してヒアリングを行った。 移動販売事業には、市の補助金が投入されているが、その事業化にはまだ至っていないそうだ。衰退の進む地域では、経済的な補助があったとしても、買い物支援が容易に成立するわけではない、ということが示唆される。このことに対し、カスミは、これからの時代は住民や行政、民間などの様々な主体による協働が求められる、と考えていた。これは、移動販売事業に留まらず、我々が目標とする「店をつくろう」の支援にも必要とされる考え方である。
〇アンケート調査〇
まず、現状の森の里団地の住民の買い物環境についての項目である。森の里団地の住民がよく買い物に利用する食料品の店舗は、団地から約5km離れたつくば市外の店舗であった。また、買い物に最もよく使う移動手段については図1の結果となり、かなり車に依存していることがわかった。 次に経済産業省の示す第3の支援についての項目である。図2より団地内に常設店舗が開設する支援が行われた場合、「利用する」と回答した人は約75%であった。しかし、図3より現在実際に森の里団地で行われている買い物支援(移動販売・無料送迎バス等)を利用したことが無いと回答した人は、全体の半分にものぼった。またその理由としては、「現在買い物には不便していない」と回答した人が大半であった。つまり、現状車に依存するなどして買い物に困っていない状況の人は、買い物支援サービスを利用しない傾向があるのではないかと考えられる。 |
![]() 図1移動手段(n=143) ![]() 図2常設店舗の利用有無(n=153) ![]() 図3買い物支援サービスの 利用有無とその理由(n=150) |