1 概要
土浦市は茨城県の南部に位置し、市の北部には名峰筑波山、東部には全国二位の面積を有する淡水湖「霞ケ浦」に面した自然豊かな都市である。
農業が盛んであり、土浦の特産品であるレンコンは出荷量全国一位を誇る。一方、少子高齢化に伴い、第一次産業を中心とした労働人口の低下や依然として多い農作放棄地の問題を抱えている。
また、東筑波新治工業団地やテクノパーク土浦北工業団地などの複数の工業団地を抱え、多様な業種の工場や事務所が多く立地し、県内における産業の中心であると言える。その上、近年開発されたおおつ野ヒルズは、住宅地と工業団地・商業施設の複合地区であり、本地への土浦協同病院の移転等、土浦市の新たな拠点として注目されている。
中心市街地では新市庁舎の移転が決定しており、今後の発展が期待されている反面、全長505mの大型ショッピングモール「モール505」では近年、空きテナントが多く衰退の一途をたどっており、モール505の活性化が課題となっている。
市内北部に位置する新治地区は、平成19年に合併した元新治村であり、高齢者が多く若者の呼び込みや医療福祉・新治‐中心市街地間における交通において課題が残されている。
以上のように、土浦市では、農作放棄地の整理や労働人材の呼び込み・中心市街地の活性化、医療や交通の利便性向上など、多方面における都市機能の改善が必要である。
2 人口
平成13年から平成26年までの土浦市における人口の推移を図1に示す。平成18年2月に土浦市と新治村が合併したことで、一時的に人口数は増加しているが、それ以降、約14万人と停滞している。一方、土浦市と新治村の合併以前より、高齢化率の増加傾向が確認でき、全国同様、土浦市においても高齢化が進行している。
図1 土浦市における人口と高齢化率の推移
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■3.1 工業 図2 工業における事業所数・製品出荷額の推移 表1 土浦市における工業団地の利用状況 ■3.2 商業 図3 商業における事業所数・年間販売額数の推移 ■3.3 農業 図4 農家総数と農家人口の推移 図5 耕作放棄面積の推移 先頭にもどる
■3.4 医療 図6 土浦市における地区ごとの高齢化率 図7 総合病院の位置 先頭にもどる
■3.5 交通 図7 土浦市駅別1日乗車人の推移数 図8 土浦市における交通手段 先頭にもどる
■3.6 市役所移転について 図9 新庁舎予定地 図10 断面構想のイメージ3 産業
図2に工業における事業所数・製造品出荷額の推移を示す。図2より、平成20年までは事業所数・工業製品出荷額ともに順調に増加傾向にあったが、リーマンショックの影響もあり平成21年には事業所数・出荷額ともに大幅に減少してしまった。現在は回復傾向にあるが、依然、リーマンショック前と比較して製造品出荷額は低く、工業の活性化が課題となる。
また、表1に示される土浦における工業団地の利用状況によると、おおつ野ヒルズの工業用地の未利用率が約86%と高い値になっている。今後、おおつ野には土浦協同病院の移転があり、工業用地の未利用率が高いことは、土浦の新たな拠点となることが期待できる中で、大きな課題となっている。
図3に土浦市の商業における事業所数と年間販売額数の推移を示す。図3より、事業所数・年間販売額数ともに平成11年からの13年間で約40%減少しており、土浦市の商業の衰退が確認できる。近年、イオンモール土浦、イーアスつくば、あみアウトレットなどの大型ショッピングモールが市内や周辺の地域に進出したことにより、これまで商業の中心を担ってきた土浦駅周辺の中心市街地は、シャッターの閉まった店舗が目立ち、モール505についても同様に空きテナントが多い現状にある。商業施設としてモール505は大きなポテンシャルがあると考えられ、それを活用してどう土浦の商業を回復していくかが課題である。
土浦市は地形や首都圏に近いなどの恵まれた立地条件を備えており、農業出荷額は約96億8000万円となっている。その中でも霞ヶ浦湖岸の低湿地帯の特性を生かし全国生産量第1位のれんこんや市北西部でのグラジオラスやアルストロメリア、菊などを中心とした花の栽培が盛んであり全国的に有数の産地となっている。また新治地区においては水稲作付けを中心とし、畑作では麦や大豆、そばの作付けを推進している。
農業の盛んな土浦市であるが、近年、農業においていくつかの課題がある。図4に農家総数と農家人口の推移、図5に耕作放棄面積の推移を示す。土浦市内の農家総数・農業人口の減少が確認でき、平成17年から平成22年にかけて、僅かに回復しているものの、昭和61年と比べて依然低い値となっている。また、400haを越える耕作放棄地が存在しており、耕作放棄地の活用が課題となっている。
最近、土浦市の医療福祉において、土浦協同病院の移転新築先がおおつ野ヒルズに決定したことが注目されている。しかし、図7に示される総合病院の位置を確認すると、多くの診療所や病院は土浦中心市街周辺に集中しており、新治地区周辺の土浦市北部に総合病院が存在しないことがわかる。さらに、図6に示される土浦市における地区ごとの高齢化率に着目すると、近くに総合病院が存在しない新治地区において、最も高齢化率が高いことが確認できる。
よって、土浦の高齢化率は徐々に高くなっていくという傾向にあることを考慮すると新治地区における医療機関の需要は今後高まることが予想でき、医療機関の配置などにも目向けて考えなければならない。
図8に土浦市における駅別1日乗車人員の推移を示す。つくばエクスプレスつくば駅を除く3駅において、乗車人員の減少が確認できる。乗車人員の減少の原因として、平成17年におけるつくばエクスプレスの開通のほかに、モータリーゼーションの発展による自動車利用の普及が考えられる。
図9に示す土浦市における交通手段からも、自動車の利用率の高さが確認できる。土浦市の人々の移動手段として自動車に依存しており、それに伴いバスの路線減少など公共交通機関にも影響を与えている。
コミュニティバスの「キララちゃんバス」や土浦のりあいタクシーなど交通弱者への対策も行われているが、高齢化が進む土浦において、公共交通機関の利便性向上は、これからの課題であると考えられる。
土浦市は新庁舎整備事業において土浦駅前のウララへの移転が計画されている。この事業は、新庁舎を市民サービスの工場と中心市街地活性化の中核施設として、にぎわいづくりの役目を果たすために計画され、基本コンセプトとし「中心市街地活性化に資する庁舎」「市民の利便性・快適性に寄与する庁舎」「だれにでも使い易い庁舎」「安心で安全な市民活動を提供する庁舎」「効率的で職員が働きやすい庁舎」「環境にやさしい庁舎」「長期間使い続けられる庁舎」「市民に開かれた議会」「駐車場・駐輪場の整備」の9つを掲げ整備事業を進めている。