都市計画マスタープラン実習 6班

1. 地域区分の設定

図1に本マスタープランの地域区分を示す.土浦市を,
● 中心市街地
● 新治地区
● 荒川沖地区
● 神立・おおつ野地区
の4地区に分けて計画を行う.それぞれの地区において現状をまとめ,まちづくりの方針と将来像およびまちづくりの施策を述べる.

図1 地域区分図

2. 地区別構想

■2.1 中心市街地
2.1.1 中心市街地の現状
 中心市街地の一角である川口ショッピングセンター(以下、モール505)やその周辺では、かつては505mもの長さを売りとして、とてもにぎわっていた。しかし現在では、空き家・空き商店が多く、活気のなさが目立つ。
 一方,「駅前再開発などの中心市街地整備」や「中心市街地のにぎわい政策」など、市街地の活性化に対する施策が取られているものの、住民の満足度が低く(表1 H23土浦満足度調査:施策満足度),中心市街地における施策効果が十分に反映されているとは言えないことがわかる。 モール505のテナント利用状況を図2に示す。これによると、1F部分は8割以上のテナントが利用されているものの、全体の3分の1が空きテナントの状態である。
  また現在土浦市では、中心市街地開業支援事業が行われている。図3に本事業の模式図を示す。本事業では、開業希望者(小売業・飲食業・サービス業)に対して、賃貸紹介(商工会議所)・賃料値下げの賃貸契約(空き店舗および不動産所有者)・補助金交付(土浦市)の支援が行われている。現地でのヒアリングによると、モール505での開業希望者に対して1件が成立、2件が準備中となっているが、空き店舗状況に対して少ないと考えられる。また、開業時の支援のみで活気のない商店街のにぎわい再生につながるのか疑問であり、対象者の拡大と開業のみならず、開業者と連携した活動による活性事業が必要であると考える。

表1 平成23年土浦市満足度調査:施策満足度(全55項目)

図2 モール505の利用状況

図3 中心市街地開業支援事業の模式図

2.1.2 将来像

「"あそび仕事"の創出による,進化し続ける市街地づくり」

 テナントの整備および夢追い人支援策によって,モール505を住居・仕事場・住民の交流の場とすることで,中心市街地活性化を図る。

2.1.3 テナントの整備
 空テナントの活用方法として、自由な貸出期間によるテナントを考える。一部のテナントをアトリエ、飲食業用、事務所に改装し、芸術作品の披露や政策作業、試験的出店などを誘致する。継続して出店を続けることを目的としないため、テナント利用者は、辞めたい時に辞めることができる。また、仕事道具さえあれば、テナント改装工事などの費用を負担せずに即日開業が可能である。  表3にテナントの概要、表4に費用と収益の計算を示す。費用対効果は、1に近く(B/C=1.12)収益性は低いものの、空きテナントの有効活用・市街地活性化を目的とした事業であるため、妥当な事業であるといえる。

表2 テナント概要

<費用>

<収益(20年間)>

2.1.4 ガンバレ!夢追い人応援事業
 現在の中心市街地活性化事業に加え、支援対象の拡大とモール505内で新たに"夢追い人ストリート"を整備する「ガンバレ!夢追い人応援事業」を行う。図4に支援対象を拡大した居住・テナント補助の模式図を示す。開業希望者に加えアーティストを対象者として"夢追い人"とする。まちあそび実行係と商工会議所が連携し、夢追い人に対して、居住およびモール505のテナント補助を行う。  
 また、モール505に夢追い人の自由な活動場"夢追い人ストリート"として整備することで、店舗やモール505自体の魅力向上につなげる。さらに、夢追い人と連携したウォールペイントやナイトイルミネーションなどのイベント(まちあそび)を行うことで、昼夜問わず、子供から大人までのあそび場としての活用を促し、夢追い人・市民による商店街づくりを可能とする。(図5、図6)  
 このようなモール505を拠点とした「まちあそび」によって、中心市街地のにぎわいを創出し、様々な人々の手によって 進化し続ける市街地づくりを目指す。

図4 ガンバレ!夢追い人応援事業の模式図

図5 モール505 1階 修景イメージ

図6 モール505 2階 修景イメージ

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■2.2 新治地区
2.2.1 新治地区の現状
・耕作放棄地と農業従事者について
 図7に土浦市における耕作放棄地について,(a)地区別割合および (b)耕作放棄地となった理由を示す.耕作放棄地全体のうち,新治地区が約5割を占めている.また,耕作放棄地となった理由のうち,農業従事者の高齢化と人手不足が全体の55%を占めている.表3に土浦市における新規農業者数を示す.平成16年から20年の5年間で,新規農業者は合計で39人のみで少ないことが確認でき,後継者育成の施策が不完全であることが示唆される.

(a) 地区別割合

(b) 耕作放棄地となった理由

図7 耕作放棄地の地区別割合とその理由

表3 土浦市における土浦市における新規就農者数


・農地中間管理事業の限界
 現在の土浦市における耕作放棄地(遊休農地)の解消を目的とした農業支援として、新規就農者や事業拡大を考える既存農家への遊休農地の貸出や資金の貸与・技術の講義等を行う「農地中間管理事業」が行われている。しかし、新規就農者の利用は少なく、既存農家の利用がほとんどであることから、後継者不足の解消には至らず、本事業は耕作放棄地の発生防止には繋がっていないことが示唆される。新規就農希望者の利用者が少ない理由として、(i) 新規就農希望者が少ない (ii) 農地の集約が難しく新規就農者向けの大規模農地の貸出が困難ということが挙げられる。 (i)新規就農希望者が少ない要因として、機材の用意や勉強などの準備段階と収益や経験不足などの経営段階の2段階において、参入のハードルが高いことが挙げられる(表4)。

表4 新規就農希望者の少ない要因

2.2.2 将来像

「"あそび仕事"の創出による,活気ある交流づくり」


2.2.3 助けあいファーム事業
 後継者不足の解消・新規就農のハードルを下げることを目的として、既存農家への新規就農者紹介とその後のケアを行う「助け合いファーム事業」を行う。
 図8に本事業の概要図を示す。仲介業者を通して、後継者を必要とし農地を提供する既存農家と新規就農希望者を募集し、新規就農希望者と農家によって"協働"という形式で行う農業を紹介する。ここで協働とは、農家によって提供された農地で新規就農希望者が農家に指導を受けながら、共に農業に従事することを指す。仲介業者は紹介後の経過の観察を行い、両者の関係のケアを行う。
 協働により、新規就農者と既存農家に信頼関係を築かせ、新規就農者にとっては農地・技術・販路の継承によるスムーズな自立を期待でき、既存農家にとっては後継者確保と指導者という形で農業に携わることで、引退後の生きがい、言い換えると"あそび仕事としての農業"を期待できる。表5に本事業によって得られる新規就農者と既存農家のメリットをまとめる。

図8 助け合いファーム事業の仕組み

表5 新規就農者・既存農家のメリット

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■2.3 荒川沖地区
2.3.1 現状:空き家と治安について
 荒川沖地区の実態の把握をするために、現地見学および地域住民へのヒアリングを行った。 表6にヒアリング結果を示す。ヒアリングより、子供にとってのあそび場が少ないことや地域住民のつながりが薄いことが課題として挙げられた。現地見学では、空き家や空き地が多く人通りが少ないと感じた。 また表7に示す平成25年の荒川沖地区交番管轄内の犯罪発生率によると、荒川沖地区交番管轄内において1000人たり17.6件の犯罪が発生しており、全国や茨城県の犯罪発生率と比較して高い。

表6 荒川沖地区におけるヒアリング

表7 荒川沖地区交番管轄内の犯罪発生率

2.3.2 将来像

"空間のあそび"の創出による、ゆとりある居住環境づくり」

 まちにおける空き地や道路の一部を「あそび場」として有効に活用することで、人通りが多く人の目の行き届いた、安心して暮らせる住宅街の形成を図る。以上を踏まえて、将来像として「"空間のあそび"の創出による、ゆとりある居住環境づくり」を掲げる。

2.3.3 駅前商店街の整備
 荒川沖駅西口の駅前商店街は、空き家が多数存在し、人通りが少なく閑散としている。そこで、駅前に地域住民の交流の拠点・子供が安心して遊べる場として整備することで、駅前商店街の再興を図る。空き家を利用したコミュニティカフェや遊技場を住民の手で企画・運営することで、住民同士の談話の場や地域の集会の場として地域住民が気軽に立ち寄れる、立ち寄りたくなる場として整備する。 加えて、商店街前の街路を、休日に歩行者天国として開放し、歩行者にとって安全な通行だけでなく、憩の場として街路を利用する。また、歩行者天国でフリーマーケットや市などの地域イベントを開催することで、地域内外の交流の場・にぎわいのある空間を創出する。(図9 に駅前商店街の修景図を示す)

図9 荒川沖駅西口の駅前商店街 修景図

2.3.4 住宅街のポケットパークの整備
 現在の荒川沖東口の住宅街は、近所のつながりが薄く人通りも少ない地域であり、ヒアリングより、大人と子供の交流の場が欲しいとの意見も挙げられている。この住宅街に多く存在している空き地をポケットパークとして整備する。整備の段階から小中学生や住民に参加してもらうことで親しみのあるポケットパークを目指し、また自治会が当番制で管理し、安心・安全で、子供は遊び大人は一息つけるような場として整備することで、近所のつながりの場として機能するような空間を創出する。

図10 ポケットパーク 修景図

■2.4 神立・おおつ野地区
2.4.1 現状と課題
 おつ野ヒルズの実態を確認するために、現地見学とおおつ野自治会長の武田氏へのヒアリングを行った。ヒアリング結果を表8に示す。ヒアリングより、人口や世帯の増加に伴った公共施設の不足と、住民間のコミュニケーション不足が課題として挙げられる。
 表9に業務系用地における未利用地面積を示す。業務系用地の約40%が未利用地である。施設予定地には、土浦協同病院(建設中H27年竣工予定)の移転やスーパーの建設が確定しており、昼間人口の増加や商業施設の需要拡大が示唆される。

表8 おおつ野ヒルズにおけるヒアリング

表9 業務系用地における未利用地面積

2.4.2 将来像将来像

「あそびの文化」の創出による、住みよいふるさとづくり」

人生の拠点として、これからの歴史・文化を形成していくまちであるおおつ野ヒルズに、土浦協同病院と連携した文化・商業施設を業務系用地に計画し、住民の生活基盤の向上と快適な医療環境の形成をする。これを経て"あそびの文化"を創出し、住みよいふるさとづくりを目指す。以上を踏まえて、将来像として「"あそびの文化"の創出による、住み良いふるさとづくり」を掲げる。


2.4.3 町内会の活性化
1)月1の催し物
 完成して間もないおおつ野ヒルズを住みよいまちにするためには、第一に「人を知る」「まちを知る」「まちに愛着を持つ」ことが重要だと考えた。その実現の第一段階として、町内会の催し物の頻度を高め、町内会の活性化を促進させることを提案する。  図11 に町内会の活性化に向けた流れを示す。現在の年1回ほどの催し物の数を月1回に増やし、月ごとに各地区(5丁目〜8丁目)が催し物を開催し、企画・運営を行う。まずは頻繁に開催されるイベントを通して、住民の交流機会を増やし、住民が持続可能な、人のつながりを大切にした住みよいふるさとづくりを実現していく。

図11 町内会活性化の模式図


2)子供を主体とした企画「コドモ企画会議」
 住民参加を促す仕掛けとして、子供を主体として企画を行う「コドモ企画会議」を提案する。住民の小学生高学年から中学生までの有志を募集し、月に1・2回程度で催し物の企画を行う会議を開く。ファシリテーターや企画の実現、買い出しの準備、当日の運営などを自治会や保護者がサポートすることで、子供間から大人間へ、そして家族間の交流を促す。表10 に企画会議および催し物における住民の役割を示す。

表10 企画会議・催し物における住民の役割

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