3.重点整備計画

3-1.中心市街地

(1)まちづくりの方向性
 中心市街地の特徴として,人の流れが多く都市の中心的な機能を有する施設が多く立地していることから,「機能集積による求心力のあるまち」を目標とする.

(2)魅力と課題
 中心地の魅力と課題は以下のものが挙げられる.
魅力…交通の拠点,市の顔としての街並み
課題…低未利用地の活用

(3)提案
・土浦駅周辺地区整備事業
 土浦駅西口周辺の交通混雑の緩和,低未利用地の活用を目的として,一帯の区画整理を,平成18年度に都市計画決定された「土浦駅前北地区第一種市街地再開発事業」と連携して行う. 整備内容は (ⅰ)北地区区画整理事業 (A.道路整備 B.市役所移転計画 C.再開発ビル(Tsuchiu Labo)建設事業) (ⅱ) 東西ロータリー整備である.

(ⅰ)北地区区画整理事業
 図3-1中で囲われた地域において区画整理を行う.具体的な提案については以下の通り.

図3-1. 再開発地域の全体像

A.道路整備
 現在土浦駅北地区には細い路地や建物密集地区の問題,またモール505の老朽化などの問題がある,これらを解消するために新たに図3-2の太線で示した道路の新設,拡幅を行う. 道路拡幅前後の混雑度をJICA STRADAによって見てみると,図3-3のように混雑の緩和を確認することができる.施策前には駅周辺に混雑度が1以上の道路が多く見られたが,施策によって 混雑が解消し,再開発地区においては混雑度がすべて1以下となっていることがわかる.

図3-2. 北地区道路整備概要

図3-3. JICA STRADAによる道路整備結果(左:整備前 右:整備後)

B.市役所移転
 現在の土浦市役所は昭和38年に建設されたもので老朽化しており,駅からの利便性の悪さや駐車場不足も課題となっていることから,移転を提案する. 図3-4で示した土浦駅前の土地に市役所を移転し,駅前のショッピングセンター,図書館,また次に提案する再開発ビルとの連携を図る. 駅前に行政サービスを集積し,市民のたまり場を提供することで利便性が増すことが期待できる.

図3-4. 市役所移転先

C.再開発ビル(Tsuchiu Labo)建設事業
 図3-1で示した部分に,既存の商業テナントや就職情報センター,子育て支援センター,まちなかサテライト等の複合機能を備えた再開発ビルの建設を提案する. 再開発ビルには積極的な情報発信の場としての役割を持たせる.これにより市役所の移転や図書館の新設とともに人の流れが中心へと向かうことが予想される. また区画整理対象地区内の商業施設に対して移転先を提供するため,商業・住宅が入居する再開発ビルの建設も行う.

(ⅱ)東西ロータリーの整備
 現在土浦駅の東西ロータリー構造は複雑で交通のルールが守られていないことから,使いやすく安全なロータリーの整備を提案する.

①西口
 図3-5のようにバス,タクシー,乗用車それぞれに専用スペースを設け,他の車両が進入するのを防ぐ.バスの待機場と乗降スペースを十分に確保し, また自家用車との動線を分けることでロータリーの安全性も確保される.

図3-5. 西口ロータリー案

②東口
 図3-6のように,高架道からロータリーへの進入ができない構造とし,ロータリーから高架道へのアクセスのみができるものとする. また,現在のコインパーキングのスペースを自家用車の乗降スペースとし,バスターミナルへの乗用車の進入を規制し,安全を確保する.

図3-6. 東口ロータリー案

3-2.荒川沖地区

(1)まちづくりの方向性
 低層住宅が多く,今後の景観形成が容易であると考えられるため,「景観に配慮した親緑のまち」を目標とする.

(2)魅力と課題
 荒川沖の魅力は以下のものが挙げられる.
魅力…低層住宅が多く,街並み形成が容易
 土浦市が実施した景観まちづくりアンケートにおいて,現在の土浦における魅力的な景観はどのようなものかという質問に対して,霞ヶ浦などの水辺空間, 伝統・文化を感じさせる景観が魅力的と感じる割合が多いのに対して,緑の多い住宅地や歴史的街並みを魅力とする回答は極めて少なかった(図3-7). この結果から,住宅地に自然景観を取り込むことによって住宅地の魅力を増すようなまちづくりを提案する.

図3-7. 土浦市の魅力的な景観について(市民アンケートより)

(3)提案
・まちなみ景観助成制度
 景観を整えるため,住民とのワークショップを通じて屋根の色,植栽などのルール作りを行う.このルールに基づいた住宅などの改修工事に対して, 現在行われている生垣設置補助制度に加えて市が補助を行うことで,住民が主体となった景観づくりを行いやすい環境を整え,良好な住宅地景観の形成を図る.

3-3.神立地区

(1)まちづくりの方向性
 現在神立地域には工業団地が立地しているため土浦の市内における働く場所として想定でき,また学生世代が住んでいる世帯が多いため, 「働く場とゆとりある住環境のまち」を目標とする.

(2)魅力と課題
 神立の魅力と課題は以下のものが挙げられる.
魅力…子育て世代の人口が多い
課題…駅前の歩行空間の安全性向上

(3)提案
(ⅰ)神立駅東側道路整備
 神立駅付近の道路は,歩道がなく狭い上に交通量が多いため,非常に危険で使いづらい状況である. しかし沿道に歩道を整備するスペースはなく道路拡張も困難であると考えられるため,シェアドスペースを取り入れ, 代わりに交通量を負担するための2車線の道路(一部高架)を駅東側に新設する施策を提案する.施策実施前後の混雑率を比較すると(図3-8), 駅前シェアドスペースでの混雑は起こらず,以前混雑していた駅前の交通量が新設道路に移っていることがわかる.

図3-8. JICA STRADAによる神立道路整備結果(左:整備前 右:整備後)

(ⅱ)産婦人科(クリニック)の整備

図3-9. 土浦市周辺の女性人口と産婦人間の立地図


 図3-9で示す通り,神立工業団地は子育て世代が多く住む地区でありながら,産婦人科が立地しておらず土浦駅周辺まで行かなくてはサービスを受けられない状況にある. そこで神立駅前に産婦人科を整備し,移動にかかる負担を軽減させ,充実した子育てサービスを提供する.また,かすみがうら市内には産婦人科の病院は立地しておらず, この整備によってかすみがうら市に住む利用者を獲得することができる.

3-4.新治地区

(1)まちづくりの方向性
 新治は自然が豊かな地域で,活用できる資源が多く存在し,他地域にとっても魅力となるため,「地域を結ぶ自然のあふれるまち」を目標とする

(2)魅力と課題
 新治の魅力と課題は以下のものが挙げられる.
魅力…美しい自然,農業が盛ん
課題…耕作放棄地の活用

(3)提案
・農園利用型の市民農園の設立
 新治地区の課題として,耕作放棄地の増加が挙げられる.市内にある耕作放棄地の約5割が新治地区に集中しており, その活用方法として耕作放棄地を市民農園として整備し市民に提供する.運営方法については,農園利用型の方式とすることで, 市民が気軽に自然と触れ合える空間を提供し,地域愛着の育成を図る. 施策の効果としては耕作放棄地の解消,市民農園の管理運営による雇用の創出,農業体験で教育, 福祉が挙げられる.

3-5.市全体

(1)まちづくりの方向性
 市全域に関して,「子育て・教育・福祉の充実」という観点から,現在不足していると考えられる部分について提案する.

(2)魅力と課題
 市全域の魅力と課題は以下のものが挙げられる.
課題…公共交通の利便性の向上

(3)提案
・乗り合いタクシーの利用対象者拡大
 土浦市内のバス路線をみてみると,市街地には多くの路線画が走る一方で,周辺地域には利便性の悪い地域が存在している. この問題を解決するために現在乗り合いタクシーが運行されている.この乗り合いタクシーは65歳以上の方を対象とし,年会費を払えば低運賃で市内を移動することができる. 子育てのしやすいまちづくりをするという観点から,移動に面倒を伴う妊婦と出産後1年以内の方も対象とする.これにより今まで車やバスで病院へ行くしかなかった子育て世代も, 安い運賃で市内を移動することができ,子育て福祉の充実が実現する.また乗り合いタクシー側にとっても新しい顧客の獲得を見込むことができる.

3-6. 実現可能性の検証

 各施策の費用対効果(B/C)を検証することで,施策が現実的に可能なものであるかを検討する.費用対効果とは,施策に関わる費用に対して得られる便益を計るもので, 施策をしなかった場合の効果と施策を実行した場合の効果を比較する.

① 道路計画

対象:土浦駅北地区区画整理事業/神立駅東側道路整備

 茨城県南CUEを用いた費用便益分析では,道路建設における総費用および維持管理費用の合計は約121.3億円に対し, 割引率を考慮した40年間での便益は約484.8憶円という結果を得た.よって費用対効果は約4倍となることから,提案した道路整備行った場合非常に大きな効果があるといえる. (表3-1,表3-2)

表3-1 道路計画の費用概算表

表3-2 道路計画の便益概算表

② 市役所移転

 市役所の建設費用は約67億8700万円で,まちづくり交付金(約44億3800万円)を活用すると,市には約36億8000万円の費用がかかる(表3-3). これに対し,移転によって得られる効果は駐車場不足の解消,駅前の低未利用地の活用といった直接的な影響と,駅北側の図書館の新設や道路整備による影響が挙げられる. また駅前空間を多目的に利用できるなど駅前空間の魅力が向上するほか,市役所周辺の地価が上昇するといった間接的な効果も大きい.

表3-3 市役所移転費用概算表

③ 産婦人科(クリニック)の整備

 産婦人科の整備については,費用対効果(B/C)が1.45であり,施策による効果が大きいという結果が得られた

表3-4 クリニック整備費用と便益

④ モール505解体費用

 土浦駅北地区区画整理事業においてモール505を解体する際の費用を計算してみると,延べ床面積から約1億200万円かかるという結果が出た.

⑤ 市民農園

 耕作放棄地を農地として再生するには183万円/haかかる.

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