2-2 ものづくり
主な提案
・耕作放棄地の転作
・ビオトープの整備
■現状・課題
土浦市は地域・土地の性格上、農作物や畜産など豊富な資源に恵まれており、特に新治地区においては野菜、果樹、花き、養豚、ブロイラーなどの生産・育成をするために必要な土地を十分に有しているといえる。
しかし、現在、新治地区では農業における後継者不足、耕作放棄地の増加などが深刻な問題となっている。また、霞ヶ浦汚染の要因となっている畜産系排水は、主に新治地区における排泄物未処理が原因となっている。つまり、大きな問題として後継者不足・耕作放棄地の増加・水質汚濁という三点が挙げられるといえる。
土浦市における経営耕地に対する耕作放棄地の割合は、約19%であり、今後のさらなる高齢化や人口減少傾向の流れを考慮すると、その割合は増加するものと予測されるため、耕作放棄地の有効な活用方法、新たな農業経営方法等の対策案を講じる必要があると考えられる。また、農業に触れる機会や場を提供することで地元の人々や、共に農作業を行う仲間同士の交流が深まり、農業に対して以前より興味・関心をもってもらうことも期待できる。
耕作放棄地の再生にかかる費用算出(鳥取県耕作放棄地再生実証事業、長崎県大村市シュシュ村の事例参照)
土浦全域にある耕作放棄地は合計395haである。今回耕作放棄地の再生事業として、耕作放棄地のうち販売耕作放棄地を対象とする。(合計面積295ha)また、解消を目的とした耕作放棄地を5分の1に策定(59ha) 策定計画年数は国の定める5ヵ年事業より5年と仮定した。
実際にかかる費用を産出してみた。耕作放棄地再生利用活動補助金(国から得られる補助金)による支援等を考慮し、総事業費算出は約56万円/10aと想定できた。そこで、土浦市が負担する費用の算出を行うと、総事業費はおよそ1億6520万円になる。土浦市の農林水産事業費予算(H.20)は9億229万6000円であったため、コスト的には実現可能性が認められる。
以上のことから、耕作放棄地の有効利用と水を「活かす」方策を中心にして提案を行う。
2-2-1 耕作放棄地の転作
現在、土浦市の耕作放棄地面積の割合は年々増加傾向にあり、農業において重大な問題となっている。そこで、耕作放棄地の有効的な活用法として転作し、そば栽培を行うことを提案する。また、それに加えて、現在でも行われている「そばオーナー制度」の認知度を高め、農作業やそばづくりに興味・関心を持つより多くの人々に種まきから収穫、そば打ちなどのそばづくり体験をしてもらうことで、人と人の交流促進、農業の活性化を図ることを目的とするものである。
転作する主な作物にそばを選択する理由として、そばは他の農作物よりも高く、採算が取りやすいという点が挙げられる。また、小町の里にある有名なそば処 小町庵や各直売所におけるそばの販売など、認知度、売り込み意欲、共に高いといえる状況にある。したがって、今後そば産業の規模拡大を目指していくことで、地域ブランド化に向けた積極的な活動の促進にもつながると考えられる。しかし、耕作放棄地を再生利用するためには荒れ地整備に掛かる費用、その他労務費など様々なコストがかかるため、各耕作放棄地所持農家が基盤整備を行うのは困難であるといえる。
そこで、土浦市が耕作放棄地所持農家に対して、そばオーナー制度実施に協力してくれる農家を募集し、協力農家に対しては市が耕作放棄地整備の実施と整備にかかる諸費用を負担するシステムを構築することを提案する。耕作放棄地所持農家がオーナー制度を行うメリットとしては、そばの栽培、販売を各自で行うよりも、オーナー制度によってそばづくりを希望する人々から得られる金額の方が安定した収入を得ることができるということが挙げられる。
2-2-2 ビオトープの整備
霞ヶ浦周辺地域において水質改善、環境保全、環境学習を目的とし、ビオトープの設置を提案する。設置候補地としては耕作放棄地(休耕田含む)、水路、学校等の教育機関とする。
現在、霞ヶ浦には親水公園・水質浄化としての機能を有した「土浦ビオパーク」が設置されているが、市民生活の中により身近な形で「ビオトープ事業」を普及させることで、自然保護意識の高揚と市民活動の促進を図り、また、教育機関等にも取り入れていくことで幼少期から水に親しむ機会を確保することを目的とする。ビオトープ事業を通じて地域のコミュニティと自然の大切さを感じながら、人と自然が共生できる地域社会づくりを行うことがねらいである。
ビオトープ事業はトキビオパーク(佐渡市)、ビオトープ保全活動・推進事業(石原市)、みどりづくりの輪支援事業(大阪府)など数多くの事例があり、それぞれ地域各の個性・特徴を生かしながら行政・自治会・青少年活動団体が協同して活動を行っている。また、環境省や国土交通省、農林水産省をはじめとする中央省庁、多くの地方公共団体が、新しい環境政策としてビオトープ事業・自然再生事業に注目し、大いに期待を寄せている。
水路へのビオトープの整備の景観シミュレーション(左:整備前 右:整備後)
現在、霞ヶ浦北浦流域でビオトープを設置している学校等は113校ある。そのうち、市内には土浦市立東小学校、土浦市立荒川沖小学校など、11校ある。ビオトープづくりにおいては、規模・事業内容に応じて補助金を受け取ることができる。
現在、市内にある小学校全20校のうち11校は既にビオトープを設置しており、今回の提案ではまだ設置を行っていない9校に対し、環境学習の一環としてビオトープの設置を提案するものとする。さらに農業集落排水処理場にも設置を行うことで水質の改善を図るものとする。
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2008-2009 都市計画マスタープラン策定実習 1班