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第3章 重点整備計画

  • 「大人美モール」計画
  • 「教育と地域の活性」計画
  • 「自然への招待」計画

  • 「大人美モール」計画 〜大人を豊かな老後生活へナビ〜

      大人を豊かな老後へナビするために、介護施設の新設元気高齢者に向けた事業の整備、交通弱者に向けた公共交通の整備を行う。

    【介護施設の新設】


      図3-1は土浦市の高齢者人口推移である(土浦市高齢福祉課:平成17年3月)。このデータによると土浦市の場合、平成26年を期に後期高齢者(75歳以上)の人口が前期高齢者(65歳以上75歳未満)の人口を上回ることが分かる。




      土浦市には平成17年9月1日現在、施設サービスとして老人福祉センターが7施設、老人保健センターが3施設存在している(表3-1)。そして他市町村施設の利用者を含めた市民の施設利用者数はいずれも各施設の定員数を上回っていないため、これらの施設は今のところ比較的充実しているといえる。

      しかし、療養型医療施設は市内に存在しない。療養型の医療施設に入所している市民22人はいずれも他の市町村の施設を利用していることになる。

      後期高齢者が今後顕著に増加すること、中心市街地にマンションが建設され、高齢者人口の増加も見込まれること、中心市街地の高齢化率が他の地域に比べて高いことを考慮すると、療養型医療施設の新設が必要である。

      建設地は霞ヶ浦を望む川口運動公園跡地(予定)とし、同時に大人美モールの中心地として親水公園を整備する。



    【元気高齢者のライフスタイルを提案】
      2007年以降団塊世代が定年退職を迎え、数年後には「高齢者」と呼ばれるようになる。しかしこの世代は活力を持った世代であり、要介護認定を受けない「元気高齢者」の人数も増加すると予想される。

      東京ガス都市静活研究所がまとめたアンケートによると、団塊世代の方で6割を超える人が「健康である」と答えている(図3-2)。そのような健康な人々が高齢期を迎え、余暇時間が増加することが予想される(図3-3)。





      そこで元気な高齢者が余暇を快適に過ごせる場の整備を進める。例えば「いきいきネットワーク」が展開するミニデイケアサービス(いきいき館たいこ橋など市内6ヶ所)の推進を図る。

      また、この事業の一環として「老若しゃべり場」を提供する(この事業については後述)。この活動によって高齢者と若者がふれあい、高齢者の活力向上が期待できる。



    【コミュニティバスの整備】
      現在、土浦市のバス交通は関東鉄道をはじめとした6つのバス会社が運営する34のルートと、中心市街地を運行するまちづくり活性化バス「キララちゃん」の3つのルートがある。特にキララちゃんは地域活性化が目的であり、人口密度が高く商業が発達している中心市街地を通るように設定されている(図3-4)。

      これに対して、福祉に着目した循環バス路線(いずれも100円均一)を新設する。ルートは次のような条件の下に設定した。

    ・医療、介護施設を経由する
    ・高齢者人口密度の高い地域を通る
    ・既存路線と競合しない道路を通る
    ・CUET、JICA-STRADAによる分析で渋滞が少ない道路を通る


    ツワワさんルート
      新設する介護施設を発着地とし、高齢者人口密度の高い真鍋・都和・板谷地区を循環する。これらの地区は住宅が多く立ち並んでおり、需要はあるといえる。特に、板谷地区は既存路線がないため、利用者が見込める。また、交通渋滞が多い国道6号線を通らないように設定してあるため、定時制が確保できる。


    アララくんルート
      郊外でのコミュニティバスのニーズに応え、荒川沖にルートを設定した。こちらも高齢者人口密度の高い住宅地を循環し、介護・医療施設や商業施設が集まる駅東西口と繋ぐ。既存路線と渋滞の条件も満たされている。


    新ルート検証
      キララちゃん・アララくん・ツワワさんのルート200m圏内に居住する全人口と高齢者人口を調査したところ、アララくん・ツワワさんともキララちゃん3ルートの平均と同程度の人口規模があり、十分な需要が見込める







    「教育と地域の活性」計画
    〜若者を次世代で活躍できる大人へナビ〜

      将来的に大人美タウンを持続していくために、若者の教育が重要である。そこで、若者が活躍できる場の提供を提案する。これは、地域への参加を通して地元への愛着を高めることも目標としている。ここでは、産業福祉の2つの分野から4つの事業の提案をする。

    【産業】
    商学交流事業


      地元商店街と大学や専門学校を始めとする教育機関が協働し、商学交流事業を行うことによって地域の活性化を図る。現在の商店街は経営者が高齢であることが多く、空き店舗も多いため、若い力が必要である。また、学生側も実践的な学習として経験を積むことができる。

      実現可能性を市商工会議所とつくば国際大学にヒアリング調査したところ、商工会議所は「若い人にぜひ参加してほしい」、つくば国際大学は「地域貢献はしたいので機会があれば参加したい」との回答を得られた。このことから、商店街と教育機関の両者を繋ぐ機会を設ければ十分に可能な提案であると言える。

      具体的な内容としては、商工会議所、商店街、学生でワーキンググループを立ち上げ、3ヵ年計画の活性化プロジェクトを実行していく。事業の総合的な協議を行った上で、イベント・ビジネス、IT戦略、空間デザイン等のチームを結成し事業を行っていく。





    福学交流事業
      福祉への関心と福祉環境の向上を図るため、福祉施設と教育機関が協働し福学交流事業を行う。これは、福祉面での効果だけでなく世代間交流の場も提供できる。

      福祉施設でのインターンシップや演習・実習等を教育プログラムに組み込み、福祉の現状を実際に体験してもらう。また、現在不足しがちなボランティアへの登録を奨励し、地域貢献を呼びかける。一定の成果を納めた学生に対しては単位として認定する制度を取り入れる。





    若者自主活動応援事業
      若者の相互交流と豊かな心を育むことを目的として、商工会と社会福祉協議会の出資による「若者自主活動応援事業」を実施する。

      これは、若者が中心となって、自分たちの成長や地域活動の貢献等、自主活動を行っている団体(グループ・サークル)等を支援する事業である。対象となる活動はボランティア・文化・イベント・学習活動で、事務経費等を負担することとする。





    世代間交流事業
      高齢者から若者への教育として、「老若しゃべり場」という小学校の空き教室を利用した対話できる場を設ける。高齢者福祉施設「たいこ橋」へのヒアリング調査から高齢者は若者との対話を求めているということが分かった。若者は高齢者に様々な人生経験を聞くことができ、高齢者は若者との交流の場を持てる。これよって次世代を担う若者を大人へとナビゲーションする。





    「自然への招待」計画 〜大人を楽しめる場へナビ〜

      近年、効率化だけでは図れない心の豊かさを求める「スローライフ」への関心が高まっている。

      2006年2月18日に内閣府が発表した「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」によると「週末は農山漁村で過ごしたい」と希望する人は、都市に住む50歳代では45.5%に上ることが分かった。

      また、都市に住む50歳代のうち28.5%は田舎での定住を望んでおり、2007年から定年を迎える団塊の世代の間に田舎暮らしへの関心が高いことを示した。特に都市部の中高年の間では、「休日は農村で過ごしたい」「将来は農村で暮らしたい」という希望が多い。また、農業体験を通した教育を子供に望む親も多い。

      土浦市は新治エリア、おおつ野エリアにある田畑や蓮田、霞ヶ浦など自然環境が豊かである。それらを生かすと同時にレジャー環境の整備も進め、人と自然、人と人とのふれあいを大切にしたまちづくりを「自然への招待」として進め、地域活性を進める。

      自然への招待は、「自然と出会う」「自然に浸る」「自然で暮らす」という流れで、農村に人々を呼び込むための整備事業を進める。



    【自然と出会う 気軽なグリーンツーリズム】
      自然との出会いの場の提案として、グリーンツーリズムを推進する。

      「あぐりテーブル関東※」がインターネット上で行ったアンケートの結果より、72%の人がグリーンツーリズムを機会があれば体験したいと考えていることが分かった(図3-15)。また「子供たちが農業体験をする必要があると思うか」という質問に対して94%の人が必要だと回答している(図3-16)。また、グリーンツーリズムに参加するにあたっての問題(図3-17)から、グリーンツーリズムの参加への敷居が高いといえる。

    ※「あぐりテーブル関東」は関東農政局が行っている、情報提供やニーズ把握のためのインターネット上での取り組みである。





      土浦の都心からのアクセスの良さに着目し、都心の居住者をターゲットに日帰りで「気軽な農業体験」のプランを作成する。これまで農業体験の敷居の高さに阻まれていた潜在的な需要を掘り起こし、より多くの人に土浦の豊かな自然に触れてもらうことで、教育や農村活性を図っていく。農家側の受け入れ態勢を強化すると同時に、それらを知ってもらうために、情報発信の充実を図る。





    【自然に浸る クラインガルテンで週末は農村生活】
     気軽なグリーンツーリズムを体験したことで自然体験に魅力を感じ、より頻繁に農村での活動を行いたいという人も出てくると考えられる。そのような人々をターゲットに、新治エリア、おおつ野エリアでは クラインガルテン※を整備する。休耕地を整備し、滞在型クラインガルテン(宿泊施設付き市民農園)または日帰り型クラインガルテン(宿泊施設の無い市民農園)として貸し出す。

      クラインガルテンの先進事例として、茨城県の笠間市にある笠間クラインガルテンがある。ここでは「農芸と陶芸の融合」というテーマを掲げ、募集定員を超える応募が殺到するほどの成功を治めている。

      土浦市は笠間市よりも都心からのアクセスが良く、霞ヶ浦や筑波山といった豊かな自然があるので、都心から人を呼び込めることが期待できる。休耕地の利用を促進することで、同時に農業の活性も図る。

      クラインガルテンでは、定期的に土浦市の農家による農作物の栽培講習会を開催したり、利用者のコミュニティーによる農作物の販売会等を行っていく。それらにより、土浦市民とクラインガルテン利用者の交流を図っていく。

    ※クラインガルテンとはドイツ語で、直訳すると「小さな庭」いう意味であるが、日本では「市民農園」とも呼ばれている。





    【自然で暮らす 庭弄りからセミプロへ】
      週末だけ農村生活を送るのでは飽き足りなくなった人々、またエネルギーあふれる団塊の世代の人々が豊かな老後の生活を送るために、体験型農業だけでなく、「庭弄りからセミプロへ」という目標を掲げ、土浦の農環境を生活レベルでもっと親しめるようにする。そのために技術指導者育成、受け入れ体制の強化を図る。また、おおつ野などの農村エリアの住環境の整備も行う。環境と一体となった宅地開発も進み、活気ある農村へと発展することが期待される。








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