Toshi_2020_5

実態調査

保護者(利用者)、大学生(講師アルバイト)、企業の3つの観点から実態調査を行った。

大学生アンケート

《概要》

実態調査として、大学生アンケートと保護者アンケートを行った。
大学生アンケートの概要及び調査内容は以下の通りである。

《分析結果》

・基本情報
アンケート回答者は、筑波大学生153名であり、3年生が4割、4年生が3割を占めている。また、性別は男性52%、女性47%とほぼ等しく、留学生は1名のみであった。

・COVID−19前後の収支の変化
コロナ前後での支出の変化について、全体として支出は27%減少したことがわかった。ここで、収入減少割合と支出減少割合を比較すると、その割合は同程度であり、収入と支出がともに減っていることがわかる。




・アルバイト・オンライン家庭教師を始めたいか
アルバイトを始めたい学生は全体の2割にとどまった一方、オンライン家庭教師に興味を持った人は3割以上であることが分かった。 COVID-19禍での収入減少や困窮度はオンライン家庭教師への関心度にあまり影響を与えておらず、 教育系アルバイトに関心のある人々がオンライン家庭教師にも高い関心を持っていることがわかった。
オンライン家庭教師については、学生の4割が知らないと回答した。ここで、「オンライン家庭教師の認知度」と「オンライン家庭教師をやりたいか」のクロス集計を行った結果、認知度が高いほどオンライン家庭教師をやりたいと感じていることが明らかになった。このことから、認知度を高めると、より、オンライン家庭教師をやって見たいと考える人が増えると考察できる。 また、オンライン家庭教師として働く場合、やりたいと思える最低時給の平均は、1417円であった。

・ネットワーク環境 ネットワーク環境についてはすべての学生がネットワークを利用できることが分かった。また、利用するデバイスに関する質問では97%がPCと回答した。さらに、7~8割が、「ネットワークやデバイスの問題で接続が途切れること」は全くない・ほとんどないと回答した。接続の問題を抱える学生は一定数存在するものの、ネットワーク環境は整っていることが分かる。

《まとめ》

・勤務先の営業自粛により、全体として収入が減少していた。
・生活に困っている人は2割であり、収入減少やその対策が影響している。
・教育系アルバイトへ興味がある人はオンライン家庭教師バイトを始めたい傾向がある。
・オンライン家庭教師を行いたい人は3割である。
・オンライン家庭教師の認知度が高い人はオンライン家庭教師を行いたいと回答している。
・オンライン家庭教師の不安要素としてコミュニケーションの心配が多く挙げられた。
・ネットワーク環境は整っているが、2割~3割の学生において通信不良や端末不具合が発生していることがわかった。

保護者アンケート

《概要》

保護者アンケートの概要及び調査内容は以下の通りである。

《分析結果》

・基本情報
アンケートに協力していた方は小中高生にお子様をもつ保護者101名である。その内小学生が47名(46.5%)、中学生が31名(30.7%)、高校生が23名(22.8%)である。受験を控えている方は29名(28.7%)である。

・休校中の学習時間と学習満足度
休校中の学習時間(平均185分)は勉強してほしい学習時間(平均258分)と比較して短くなっている。また、「休校中の学習時間と勉強してほしい学習時間に差がある」という仮説をたて、t検定を行った結果、有意な差があることがわかった。 学習状況の満足度について休校前と休校中で平均値の差を検定したところ、休校中は休校前より満足度が有意に低下した。 る家庭が6割前後であることがわかった。ネットワークの接続状況においては、約28%の方が「動画視聴において映像・音声が途切れる」と回答している。端末の不具合については、約23%の方が「画面が固まる・急に電源が落ちる」と回答している。


・オンライン授業の受講経験・不安要素
オンライン授業の受講経験について、48.5%が「受講したことがある」と回答している。小中高別でみると、中学生の中で受講したことのある方が67%と、小学生・高校生に比べて経験率が高いことがわかる。 各授業形態に分けてみてみると、受講経験者について録画配信が27.7%、Live配信が32.7%の方が「ある」と回答している。オンライン家庭教師を受講したことがある方の割合は5.9%と少ないことがわかった。また、3種のなかでLive配信が最も経験率の高く、中学生のうちLive配信を受講したことのある方が64.5%と高いことがわかった。 多くの方が不安と感じる要素として、「生徒と先生間のコミュニケーションがうまくとれない(52.5%)」「長時間の画面視聴(45.5%)」「集中力が続かない(42.6%)」があげられる。端末の不具合(11.9%)や接続状況(27.7%)について不安に感じている方が私の予想に比べて少ないことが意外であった。また、「家族の声が入る(19.8%)」や「部屋が映る(14.9%)」などプライベートについての問題を不安に感じる方が少ないことがわかった。

・オンライン家庭教師の利用意図


約43%の方が「オンライン授業を利用してみたい」と回答している。各授業形態に分けると、3種の中でLive配信が最も利用意図の高い授業形態であった。オンライン家庭教師が他の授業形態と比べ利用意図が低い結果となった。ここで、オンライン授業の利用意図およびオンライン家庭の利用意図への影響要因を分析する。 まず、各不安要素とオンライン授業の利用意図に関係があると考え平均値の差のt検定を行ったが、調査項目にあげたすべての不安要素に対して有意な差は無かった。 そして、私はオンライン授業の経験有無とオンライン授業の利用意図が大きく関係しているのではないかと推測した。そこで、オンライン授業の受講経験と各オンライン授業の利用意思について一元配置分散分析(図5)を行った。オンライン授業で受講したことのある子供の受講者は、受講したことのない及び子供がオンライン授業を経験したかわからない保護者に比べて、オンライン授業の利用意図に有意差があった。また、受講したことのない子供の保護者と子供がオンライン授業を経験したかわからない保護者のオンライン授業の利用意図に有意差はなかった。さらに、各オンライン授業の受講経験とそれに対応するオンライン授業の利用意図に関係があるかどうかt検定を行ったところ(図6)、録画配信・Live配信において受講経験と利用意図に有意差があった。オンライン家庭教師では有意差は見られなかったが、オンライン家庭教師を経験したことのある方が少ない為だと考えられる。

・ネットワーク環境・端末所持状況
回答者全員の家庭にネットワーク環境があり、95%の家庭でこどもが教育用に使える端末を所持している。スマートフォン・PC・タブレット端末、それぞれを所持している家庭が6割前後であることがわかった。ネットワークの接続状況においては、約28%の方が「動画視聴において映像・音声が途切れる」と回答している。端末の不具合については、約23%の方が「画面が固まる・急に電源が落ちる」と回答している。

《まとめ》

・学習満足度は休校中に低下している。
・約半数はオンライン授業の受講経験があるが、オンライン家庭教師の受講経験率は6%であった。
・オンライン家庭教師の利用意図は他のオンライン授業と比較して低いが、経験と利用意図に相関関係が見られた。
・オンライン家庭教師の主な利用目的は「苦手克服」・「復習」・「わからない問題を質問すること」であった。
・支払い意思額は2200(円/1時間)前後であった。
・95%の家庭に教育用に使える端末がある。
・約25%の家庭で通信不良・端末の不具合が発生している。

大学生、保護者のマッチング


利用希望時間を学校がある時期と休みの時期に分けて調査した。学校がある時期の場合、平日の18~21時と休日の9~12時に需要が高く、学校が休みである時期の場合では、全曜日の9~12時と平日の12~15日に需要が高く、平日の夜遅い時間以外で一定の需要があることがわかった。大学生との希望利用時間帯を比較すると保護者側の需要は大学生側の需要とマッチしていることがわかる。


ヒアリング

教育系企業へのヒアリング調査

ヒアリング調査として、教育系企業3社へのオンラインインタビューを行った。

《ヒアリング項目》

《ヒアリング調査結果》

 

【学生家庭教師会への調査】
・授業形態:通常は対面での家庭教師(その他の支部では塾も経営)ヒアリングを行った時点では緊急事態宣言が解除されたこともあり、対面での家庭教師を再開していた 対策として→コロナ禍では申請のあった3名の生徒に対してのみ、オンラインでの学習指導が行われた
・オンライン授業の課題:慣れの問題などもあり、授業効率の面であまり有効な対応策として機能しなかった
・学生アルバイト:学生家庭教師会では登録制のアルバイト採用を行っているが、登録者全体の約8割は大学生アルバイトである。しかし、実際に授業を行う教師の割合は大学生と社会人で半分ずつであり、登録は行っているが実際の学習指導は行わない学生が多い
・学生アルバイトを雇うメリット:生徒側が学生の家庭教師を望む場合が多く、その要望に沿える
・学生アルバイトを雇うデメリット:生徒の学習指導を最後までやり遂げられない
→大学での講義や実習によって働くことのできる期間が限られてしまうため、長期間にわたる学習指導を継続することができない
・料金設定の問題:対面式と同等の価格設定であっても、同水準の教育サービスを提供できるのかわからない
→コロナ禍において3名の生徒に対して行われたオンラインでの学習指導では、通常の対面授業と同じ料金体系が取られた
・学習指導の効率:全ての生徒に対してオンライン家庭教師による教育サービスを提供するのは困難である
→学力や学習意欲の高い生徒に対しては有効な手段であるかもしれないが、学習に前向きな姿勢をとれない生徒に対しては導入すべきでない
・オンライン家庭教師の利用時間帯:夜遅くの授業は好ましくないが、マッチング率の良い平日18時~21時の時間帯であれば導入することも可能
学生家庭教師会は動画配信サービスを提供する会社と契約済みであるため、オンライン化へも柔軟に対応できるのではないか

【日本公文教育研究会/掘割校への調査】
・授業形態:通常は対面でのプリント学習による授業
対策として→コロナ禍ではプリント配布による家庭学習、一部生徒にはzoomによるオンライン指導を行った
・学生アルバイトを雇うメリット:真面目で仕事の覚えが早い、生徒に活気が出る
・学生アルバイトを雇うデメリット:シフトの融通がきかない、長期間働けない
・働いてほしい人材:真面目でシフト融通がきく大学生アルバイト
・オンライン家庭教師の利点:学生は機器の操作になれている/コロナ終息後にも需要が見込める/全国の子供に(島に住む子供にも)サービスを提供できる
・オンライン家庭教師の不安要素:コミュニケーションの問題/オンライン家庭教師の認知度が低い点
→コミュニケーションの問題は、実際に授業を行っていけば解決できるかもしれない
→体験授業を行うことで知名度の上昇が図れる
・オンライン家庭教師の利用時間帯:マッチング度の高い平日夕方に活用できる
→最近は不登校の生徒が増えているため平日の昼間にも需要が見込めるのではないか

【K社への調査結果】
・授業形態:通常は録画配信授業(通塾)+対面指導
対策として→コロナ禍では録画配信授業(自宅)+ビデオ通話または電話による指導
・学生アルバイトを雇うメリット:生徒と同年代であるためコミュニケーションがとり易い、人件費が安い
・学生アルバイトを雇うデメリット:コンプライアンスの問題(特定の生徒と個人的に連絡を取るなど)発生率が社員より高い
・オンライン家庭教師の利点:時間的な制約がないのでいつでも利用できる/全国各地から学生を雇用できる
・オンライン家庭教師の利用時間帯:利用希望と勤務希望時間のマッチング結果の通り平日夕方および休日の午前中
・オンライン家庭教師の不安要素:コミュニケーションがうまく取れずサービスの質が低くなる可能性、セキュリティーや管理の問題
→セキュリティーや管理の問題が解決されるかどうかは運営してみないと分からない
・実現性:授業料を安くするまたは普通の家庭教師にはない付加価値をつけ、実績を証明するといった対応策が必要になるのではないか