2019年4月、セブンイレブン・ジャパンの24時間営業をめぐる加盟店との問題は社長交代にまで及び、同月25日には非24時間営業を希望するフランチャイズ加盟店が約100店舗あると発表した。この事件を発端とし、労働の24 時間化が人々の生活に及ぼす影響についての関心が高まりつつある。これまで日本では長時間労働に対する関心は高い一方、労働の「時間帯」への関心はほとんど払われていなかった。しかし、黒田・山本(2011)[1]は深夜や早朝の時間帯での就業率の上昇を背景とする過労やストレスの問題を指摘しており、高本・古村(2018)[2]は大学生の深夜のアルバイト就労による抑鬱状態や精神的不調を指摘している。平成29年度の警視庁の発表によると、コンビニ強盗の発生率は午前3時から午前4時までが25.3%と最も多く、午前2時から午前5時までは全体の67.1%を占めている。
また、大手コンビニ企業は、「コンビニが24時間営業をする理由」を主張する。例えば、市場原理主義の考え方において、政府による市場への介入や規制の極小化を主張する。そして、ローソンの竹増貞信社長は、10年以上前のローソンの時短営業の実験において24時間営業をしているときより、朝、昼の売り上げが減る(AERA 2017年12月18日号)ことを指摘し学習院大学の小塚荘一郎教授(法学科)は、営業時間を短縮する店舗により、消費者は各店舗の閉店時間を調べてから利用するよりも、このチェーン店舗は全て深夜になると閉店しているかもしれないという前提で行動する可能性が高いと指摘している(日本経済新聞2019年4月10日)[3]。
加えて、岡田(2016)[4]はコンビニエンスストアが及ぼす正の外部性と負の外部性について指摘している。正の外部性としては、①商品購入やサービス利用のための移動時間削減による便益や②女性や子供がいざという時に駆け込めるという防犯面での便益が挙げられ、負の外部性としては、①騒音 (室外機等の音、商品搬入の音、たむろした利用客の話し声、車やバイクの騒音)②臭気(店舗からの排気、ゴミ箱からの臭気)③光(店舗や看板の照明)④景観悪化や住宅街のイメージの悪化⑤周辺道路交通量の増加が挙げられる。
これらのことから、私たちはコンビニの深夜営業に伴う深夜就業や犯罪の誘発、周辺環境の悪化を深刻な問題であると捉え、「コンビニが24時間営業をする理由」を検討し、24時間営業の必要性を検証する必要があると考える。