背景・目的

BACKGROUND & PURPOSE

   情報伝達や輸送システム技術の発達により、多くの情報・ヒト・モノ・文化が国家の枠を越えて地球規模広がるようになった。国際間の交流が進むにつれ、将来を担う若い世代は異文化同士の摩擦や習慣が違うといった厳しい環境の中で、力を発揮することが求められるようになっていく事が考えられるだろう。このように移りゆく時代でどのように生きていくのか、どのように世界とわたりあっていくのか、問題を発見し、それを解決していくことが今の日本の課題だ。

     そこで文部科学省が重要視したのが、大学の国際競争力を高めることである。グローバル化をめぐる様々な取り組みの中で特に学生寮および学生宿舎が注目されている。学生寮での国際交流は、留学したいと思わない理由で上位を占める費用の高さという壁、外国で暮らすにあたっての語学力への不安、また治安への不安という3つの問題点を克服する試みとして、首都圏の私立大学を中心に多くの大学で実施され始め、日本国内にいながら留学生と生活することで外国語の習得を促し、異文化交流を図るというだけでなく、日本人の留学に対する抵抗や不安を和らげる効果が期待されている。ルームシェア型やユニット型など、そのかたちは大学によって様々あり、筑波大学にもグローバルレジデンス整備事業という国際宿舎設置の動きがある。現在、全国で約30もの大学が国際寮を設置しており、これからこの動きはますます広がっていくことが考えられる。

      筑波大学は国際化拠点事業(グローバル30)の採択を受け、2009年に全体学生数の約8%であった留学生を2020年には25%まで引き上げる目標を定めた。(最新の2014年の調査では1889人)留学生の多くが学生宿舎に住む傾向があり、これによって近年そのかたちが大きく変わろうとしている。

      今後の留学生数の増加によって現在よりも多くの居室を留学生が占めるようになることが考えられ、日本人留学生ともに快適な宿舎生活を実現するためには学類・学年だけでなく国籍という大きな垣根を超えたコミュニケーションが必要となってくる。しかし現在の宿舎では、日本人同士でさえ相互不干渉のまま暮らしていることがうかがえ、留学生との混住も現段階では進んでいないことが考えられる。そこで日本人同士でのコミュニケーションが円滑に行われるために何が必要なのか、そして留学生との共同生活を浸透させていくために現段階から混住を進めていくための施策を議論する。本研究では特に、コミュニケーションの取りやすい学生宿舎の将来像を提案し、どのような効果が期待されるのかを明らかにする。また、そのために学生宿舎の共用スペースの使われ方と、宿舎制度・空間構成とコミュニケーションの取られ方の関係性を調査してゆく。
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