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定量評価分析Quantitative Evaluation Analysis

重回帰分析の実施

 地域別構想で提案した各地域の施策が、土浦市の転出率にどのように影響するのかを、SPSSを用いた重回帰分析で検証することを試みます。

 初めに、従属変数には、土浦市市民満足度調査[q-1](以後、満足度調査)から導かれる「定住希望率(%)」を導入します。満足度調査の設問に「あなたは、土浦市にこれからも住み続けたいと思いますか。」があり、ここでは市民の定住意向を問うています。回答項目は、「住み続けたい」、「どちらかといえば済み続けたい」、「住み続けたくない」、「どちらかといえば済み続けたくない」、「住み続けたくない」、「無回答」があり、満足度調査でも定住希望として扱っている「住み続けたい」と「どちらかといえば済み続けたい」と回答した割合の和を、「定住希望率(%)」として算出しました。

 従属変数である「定住希望率」の増加は、転出希望率の減少と等価とみなせて、ひいては実際の土浦市の転出率の減少に寄与すると考えられます。

 次に、説明変数には、以下の図Q-1で対応する満足度調査の「市民満足度」の各項目の数値を導入し、各地域の施策が、その数値に正の影響を与えることを仮定します。

図Q-1 各施策と市民満足度の項目の対照表

 満足度調査は、計7か年(H18、H20、H22、H23、H25、H27、R2)、計8地区(中学校区による分類)で行われており、今回分析に用いたデータ55個であり、以下の図Q-2の通りです。

図Q-2 分析に用いたデータ

 したがって、分析の回帰式は以下の図Q-3のようになります。

図Q-3 回帰式

 以下の図Q-4に重回帰分析の結果を示します。

図Q-4 重回帰分析の結果

重回帰分析の結果の評価

駅前など中心市街地のまちづくり

 図Q-4より、t値は2.188(≧2)であり有意です。非標準化係数は4.681であり、例えば、「駅前など中心市街地のまちづくり」の満足度が0.1増加した場合、「定住希望率(%)」が0.4681%増加すると解釈できます。偏相関係数の絶対値は、他の説明変数と比較して、3番目に高いため、この満足度はある程度「定住希望率(%)」に影響を与えていることが読み取れます。

 したがって、満足度調査(R2年)では、「定住希望率(%)」は71.6%であり、「駅前など中心市街地のまちづくり」の土浦市全域での満足度が2.60であったため、今回の中央地域の施策によって、この満足度が、概ねの平均値として設けられている3.10にまで増加した場合、「定住希望率(%)」は73.9%(+2.340%)に増加すると推定できます。

地域における子育て支援の充実

 図Q-4より、t値は1.391(<2)であり有意であるとはいえません。しかし、非標準化係数は10.331であり、例えば、「地域における子育て支援の充実」の満足度が0.1増加した場合、確率的には低いものの、「定住希望率(%)」が1.0331%増加すると解釈できます。

 したがって、満足度調査(R2年)では、「定住希望率(%)」は71.6%であり、「地域における子育て支援の充実」の土浦市全域での満足度が3.09であったため、今回のおおつ野地域の施策によって、この満足度が、概ねの平均値として設けられている3.10にまで増加した場合、確率的には低いものの、「定住希望率(%)」は71.7%(+0.103%)に増加すると推定できます。

幹線道路や身近な生活道路の整備

 図Q-4より、t値は2.807(≧2)であり有意です。非標準化係数は9.973であり、例えば、「幹線道路や身近な生活道路の整備」の満足度が0.1増加した場合、「定住希望率(%)」が0.9973%増加すると解釈できます。偏相関係数の絶対値は、他の説明変数と比較して、2番目に高いため、この満足度はかなり「定住希望率(%)」に影響を与えていることが読み取れます。

 したがって、満足度調査(R2年)では、「定住希望率(%)」は71.6%であり、「幹線道路や身近な生活道路の整備」の土浦市全域での満足度が3.00であったため、今回の神立地域の施策によって、この満足度が、概ねの平均値として設けられている3.10にまで増加した場合、「定住希望率(%)」は72.6%(+0.9973%)に増加すると推定できます。

バス路線や鉄道などの公共交通網

 図Q-4より、t値は-1.836(≦-2)であり有意であるとはいえません。また、非標準化係数は-4.499であり、例えば、「バス路線や鉄道などの公共交通網」の満足度が0.1増加した場合、確率的には低いものの、「定住希望率(%)」が0.4499%減少するように、そのままの意味では解釈できます。

 しかしながら、実際には各説明変数間には共線性があり、「バス路線や鉄道などの公共交通網」の満足度が増加した場合には、他の説明変数もいくらか増減があると予測されます。モデル全体としてみたときに、偏相関係数の絶対値は、他の説明変数と比較して、2番目に低いため、この満足度はあまり「定住希望率(%)」に影響を与えないことが読み取れるため、「バス路線や鉄道などの公共交通網」の満足度向上が定住希望に負の影響を必ず与えるとは言えません。

公民館や図書館、各種教室・講座等生涯学習の振興

 図Q-4より、t値は3.182(≧2)であり有意です。非標準化係数は12.572であり、例えば、「公民館や図書館、各種教室・講座等生涯学習の振興」の満足度が0.1増加した場合、「定住希望率(%)」が1.2572%増加すると解釈できます。偏相関係数の絶対値は、他の説明変数と比較して、一番高いため、この満足度は「定住希望率(%)」に一番影響を与えていることが読み取れます。

 したがって、満足度調査(R2年)では、「定住希望率(%)」は71.6%であり、「公民館や図書館、各種教室・講座等生涯学習の振興」の土浦市全域での満足度が3.47であったため、今回の新治地域の施策によって、この満足度が同調査の別の項目で記録した最高点であった3.62にまで増加した場合、「定住希望率(%)」は73.5%(+1.886%)に増加すると推定できます。

参考文献

[q-1]土浦市:アンケート調査(2025年2月17日閲覧)