図2-1-1 富栄養化現象と有機汚濁の概念図
図2-1-2 千葉県の利根川からの導水事業(合計491万人に給水:H11.3現在)
データ | 流量 | 出典 | データ | 流量 | 出典 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 雨量 | 265.7 | 気象庁 | 9 | 桜川(藤沢新田) | 89.9 | 建設省 | |
2 | 蒸発量 | 223.0 | 推計 | 10 | 花室川 | 11.6 | 〃 | |
3 | 浸透量 | 223.0 | 推計 | 11 | 小貝川(黒子 | 742.8 | 建設省 | |
4 | 上水道 | 20.9 | 中央配水場 | 12 | (中郷) | 744.0 | 〃 | |
5 | 工業用水 | 1.4 | 新治浄水場 | 13 | 利根川(布川) | 5437.8 | 〃 | |
6 | 簡易水道 | 1.8 | 市水道統計 | 14 | 谷田川 | 43.3 | 推計 | |
7 | 専用水道 | 0.2 | 〃 | 15 | 小野川 | 1.3 | 推計 | |
8 | 個人水道 | 2.0 | 推計 | 16 | 下水道 | 32.3 | 利根浄化センター |
次に、各データの詳細を示す。
(1)雨量
雨量は筑波山でのものを用いた。気温は土浦市での値をつくば市のものとする。蒸発量の推定の際に使うため、ここで表示した。気温は℃、雨量はmmである。
月 | 気温 | 雨量 | 月 | 気温 | 雨量 | 月 | 気温 | 雨量 | 月 | 気温 | 雨量 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 4.0 | 14 | 4 | 13.6 | 104 | 7 | 24.9 | 131 | 10 | 16.5 | 12 |
2 | 5.0 | 18 | 5 | 17.5 | 155 | 8 | 25.5 | 71 | 11 | 12.3 | 101 |
3 | 8.7 | 68 | 6 | 21.5 | 138 | 9 | 21.5 | 177 | 12 | 6.8 | 35 |
(2)蒸発量
蒸発量は東京管区気象台でのみ測定している。その値から、気温と蒸発量との間の相関係数は0.90であり,高い正の相関があった。降水量と蒸発量との間
では0.72と、高い相関はなかった。つくば市の蒸発量は、つくば市の気温を東京都の気温と蒸発量の回帰式に代入して求めた。表は東京都の気温と蒸発量である。気温は℃、雨量はmmである。
月 | 気温 | 蒸発 | 月 | 気温 | 蒸発 | 月 | 気温 | 蒸発 | 月 | 気温 | 蒸発 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 6.8 | 26.8 | 4 | 15.2 | 99.1 | 7 | 26.6 | 143.9 | 10 | 21.5 | 93.5 |
2 | 7.0 | 13 | 5 | 19.2 | 91.4 | 8 | 27 | 130.6 | 11 | 102 | 61.7 |
3 | 10.5 | 86.9 | 6 | 22.7 | 108.5 | 9 | 22.9 | 85.3 | 12 | 46.5 | 37.2 |
(3)浸透量
蒸発量と同じとする。
つくば市の総浸透量 868mm×259km2 =265.7×106 m3
(4)上水道量
年間流量は20.85×106m3 である。(出典:中央配水場)
(5)工業用水量
年間流量は1.4×106m3 である。(出典:新治浄水場)
(6)簡易水道量
年間流量は1.81×106m3 である。(出典:つくば市水道統計)
(7)専用水道量
年間流量は0.17×106m3 である。(出典:つくば市水道統計)
(8)個人水道量
給水人口が簡易+専用水道と同じために1.98×106 m3 と推計した。
(9)桜川(藤沢新田)
流量は以下のとおりである。年間の総流量は189.85×106 m3 であった。
月 | 流量 | 月 | 流量 | 月 | 流量 | 月 | 流量 | 年総量(106 m3 ) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 67.35 | 4 | 13.98 | 7 | 9.59 | 10 | 7.73 | 189.85 | |
2 | 19.91 | 5 | 13.01 | 8 | 10.04 | 11 | 7.68 | 平均(m3/s) | |
3 | 11.93 | 6 | 11.36 | 9 | 8.54 | 12 | 9.18 | 6.02 |
月 | 流量 | 月 | 流量 | 月 | 流量 | 月 | 流量 | 年総量(106 m3 ) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 0.74 | 4 | 1.00 | 7 | 1.27 | 10 | 0.60 | 11.56 | |
2 | 0.73 | 5 | 1.54 | 8 | 1.23 | 11 | 0.60 | 平均(m3/s) | |
3 | 0.75 | 6 | 1.54 | 9 | 0.98 | 12 | 0.68 | 0.54 |
(11)小貝川(黒子)
流量は以下のとおりである。年間の総流量は742.80×106m3 であった。
月 | 流量 | 月 | 流量 | 月 | 流量 | 月 | 流量 | 年総量(106 m3 ) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 28.94 | 4 | 45.94 | 7 | 71.06 | 10 | 35.38 | 742.80 | |
2 | 21.04 | 5 | 144.73 | 8 | 93.97 | 11 | 33.46 | 平均(m3/s) | |
3 | 21.64 | 6 | 120.99 | 9 | 82.52 | 12 | 43.13 | 23.55 |
(12)小貝川(中郷)
年間の流量は774.0×106m3であった。
(13)利根川(布川)
流量は以下のとおりである。年間の総流量は5437.75×106m3であった。
月 | 流量 | 月 | 流量 | 月 | 流量 | 月 | 流量 | 年総量(106m3 ) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 237.09 | 4 | 397.98 | 7 | 474.67 | 10 | 373.37 | 5437.75 | |
2 | 177.62 | 5 | 680.81 | 8 | 635.48 | 11 | 265.08 | 平均(m3/s) | |
3 | 194.83 | 6 | 759.79 | 9 | 910.26 | 12 | 344.20 | 172.43 |
(14)谷田川
谷田川の流量は市が年4日間測定している。以下の式で年間の流量を推計した。
谷田川の年間流量=0.5(谷田川の4日間の流量/(桜川の4日間の流量/桜川の年間の流量))
+0.5(谷田川の4日間の流量/(花室川の4日間の流量/花室川の年間の流量))
=0.5×(0.329/(1.225/189.9)+0.5(0.329/(0.106/11.56)
=43.43
採水日 | 谷田川の流量 | 桜川の流量 | 花室川の流量 |
---|---|---|---|
H9. 5/29 | 0.113 | 0.387 | 0.032 |
H9. 7/30 | 0.138 | 0.316 | 0.036 |
H9. 9/24 | 0.054 | 0.280 | 0.023 |
H9. 11/25 | 0.024 | 0.242 | 0.015 |
年4日流量 | 0.329 | 1.225 | 0.106 |
年間総流量 | 43.43 | 189.9 | 11.56 |
(15)小野川
小野川の流量は市が年4日間測定している。以下の式で年間流量を推計した。
小野川の年間流量=0.5(小野川の4日間の流量/(桜川の4日間の流量/桜川の年間の流量))
+0.5(小野川の4日間の流量/(花室川の4日間の流量/花室川の年間の流量))
=0.5×(0.01/(1.225/189.9)+0.5(0.01/(0.106/11.56)
=1.32
採水日 | 小野川の流量 | 桜川の流量 | 花室川の流量 |
---|---|---|---|
H9. 5/29 | 0.001 | 0.387 | 0.032 |
H9. 7/30 | 0.001 | 0.316 | 0.036 |
H9. 9/24 | 0.003 | 0.280 | 0.023 |
H9. 11/25 | 0.005 | 0.242 | 0.015 |
年4日流量 | 0.010 | 1.225 | 0.106 |
年間総流量 | 1.320 | 189.900 | 11.560 |
(16)下水道量
利根浄化センタ−では7市町の排水を除去している。合計処理量は32.3×106m3
である。うちつくば市の負担は17.2×106m3である。以下に7市町の下水道量を表示する。
自治体名 | 年間流量 | 自治体名 | 年間流量 |
---|---|---|---|
つくば市 | 17.22 | 河内町 | 0.035 |
茎崎町 | 2.53 | 利根町 | 1.37 |
牛久市 | 5.90 | 新利根町 | 0.061 |
竜ヶ崎市 | 5.16 | 7市町合計 | 32.27 |
流入 | 流量 | 出典 | 流出 | 流量 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|
雨量 | 265.7 | 気象庁 | 蒸発量 | 223.0 | 推計 |
上水道 | 20.9 | 中央配水場 | 下水道 | 17.2 | 浄化センター |
工業用水 | 1.4 | 新治浄水場 | 花室川 | 11.6 | 茨城県 |
簡易水道 | 1.8市水道統計 | 谷田川 | 43.3 | 推計 | |
専用水道 | 0.2 | 〃 | 小野川 | 1.3 | 〃 |
個人水道 | 2.0 | 推計 | |||
桜・小貝川 | 228.0 | 推計 | 地下浸透 | 223.0 | 推計 |
合計 | 520 | 520 |
データ | 濃度 | 出典 | データ | 濃度 | 出典 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 雨量 | 0 | 推計 | 9 | 桜川(藤沢新田) | 3.1 | 測定 |
2 | 蒸発量 | 0 | 推計 | 10 | 花室川 | 2.2 | 〃 |
3 | 浸透量 | 2.3 | 推計 | 11 | 小貝川(上流) | 2.6 | 〃 |
4 | 上水道 | 0.4 | 県水道統計 | 12 | (中郷) | 2.4 | 〃 |
5 | 工業用水 | 0.5 | 新治浄水場 | 13 | 利根川(布川) | 3.4 | 〃 |
6 | 簡易水道 | 0.4 | 市水道統計 | 14 | 谷田川 | 2.5 | 〃 |
7 | 専用水道 | 0.4 | 〃 | 15 | 小野川 | 2.2 | 〃 |
8 | 個人水道 | 4.8 | 推計 | 16 | 下水道 | 15.3 | 利根浄化センター |
次に、各データの詳細を示す。
(1)雨量、(2)蒸発量 0.0(mg/l)とする。
(3)浸透量
田の測定値をとって2.3(mg/l)とする。
(4)上水道
茨城県水道統計から窒素濃度は0.4(mg/l)であった。以下に測定結果を示す
(単位:mg/l)。環境基準(V:水道3級)は0.4(mg/l)以下である。
採水日 | 窒素濃度 | 採水日 | 窒素濃度 |
---|---|---|---|
H9. 4/ 22 | 0.28 | H9. 9/ 17 | 0.52 |
H9. 5/19 | 0.52 | H9. 10/ 21 | 0.30 |
H9. 6/ 17 | 0.38 | H9. 11/ 18 | 0.30 |
H9. 7/ 15 | 0.55 | H9. 12/ 16 | 0.19 |
H9. 8/ 19 | 0.56 | 平均 | 0.40 |
(5)工業用水
窒素濃度は0.5(mg/l)であった。環境基準(W:工業用水)は1.0(mg/l)以下である。
(6)簡易水道
市の水道統計をもとに0.4(mg/l)と推計した。環境基準(V:水道3級)は0.4(mg/l)
以下である。
(7)専用水道
市の水道統計をもとに0.4(mg/l)と推計した。環境基準(V:水道3級)は0.4(mg/l)
以下である。
(8)個人水道(地下水)
個人水道のデータはつくば市内では1箇所しかなかったため、県内36カ所の値の平
均値をとった。1.0(mg/l)以下の値は不検出となっているため0.5(mg/l)として計算した。各値
は下表(単位:mg/l)のとおりであり、平均は4.8(mg/l)であった。
番号 | 所在地 | 窒素濃度 | 番号 | 所在地 | 窒素濃度 | 番号 | 所在地 | 窒素濃度 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 水戸市 | 2.6 | 13 | 岩間町 | 1.3 | 25 | 玉里村 | 9.5 | ||
2 | 日立市 | 1.3 | 14 | 岩瀬町 | 2.1 | 26 | 八郷町 | 6.0 | ||
3 | 下館市 | 2.1 | 15 | 那珂町 | 11.0 | 27 | 新治村(1) | 3.8 | ||
4 | 結城 | 13.0 | 16 | 緒川村 | 不検出 | 28 | 新治村(2) | 不検出 | ||
5 | 下館市 | 不検出 | 17 | 水府村 | 2.8 | 29 | 新治村(3) | 不検出 | ||
6 | 常陸太田市 | 1.9 | 18 | 美里村 | 7.1 | 30 | 伊奈町 | 不検出 | ||
7 | 高萩市 | 不検出 | 19 | 旭村 | 8.9 | 31 | 協和町 | 17.0 | ||
8 | 北茨城市 | 不検出 | 20 | 波崎町 | 2.1 | 32 | 八千代町 | 11.0 | ||
9 | つくば市 | 不検出 | 21 | 麻生町 | 7.9 | 33 | 境町(1) | 2.2 | ||
10 | ひたちなか市 | 4.4 | 22 | 北浦町 | 24.0 | 34 | 境町(2) | 4.2 | ||
11 | 鹿島市 | 4.9 | 23 | 河内町 | 2.1 | 35 | 利根町 | 不検出 | ||
12 | 美野里町 | 不検出 | 24 | 桜川村 | 不検出 | 36 | 牛久市 | 13.3 |
(9)桜川
本研究での測定値は※3.1(mg/l)であった。以下、参考に市の測定値を示す。
採水日 | 窒素濃度 | 採水日 | 窒素濃度 | 平均 |
---|---|---|---|---|
H9. 5/30 | 2.0 | H9. 11/25 | 1.8 | 2.3 |
H9. 8/4 | 1.4 | H10. 1/26 | 3.2 | |
H9. 9/25 | 2.3 | H10. 3/16 | 3.0 | |
H11. 6/4 | 3.1※ |
(10)花室川
本研究での測定値は※2.2(mg/l)であった。以下、参考に市の測定値を示す。
採水日 | 窒素濃度 | 採水日 | 窒素濃度 | 平均 |
---|---|---|---|---|
H9. 5/29 | 1.7 | H9. 11/25 | 1.3 | 1.8 |
H9. 7/30 | 1.4 | H10. 1/26 | 2.7 | |
H9. 9/24 | 1.5 | H10. 3/16 | 2.1 | |
H11. 6/4 | 2.2※ |
(12)小貝川(中郷)
本研究での測定値(H11.5/28)は※2.4(mg/l)であった。
(13)利根川(布川)
本研究での測定値(H11.5/28)は※3.4(mg/l)であった。
(14.1)東谷田川
本研究での測定値は※2.9(mg/l)であった。以下、参考に市の測定値を示す。
採水日 | 窒素濃度 | 採水日 | 窒素濃度 | 平均 |
---|---|---|---|---|
H9. 5/29 | 2.2 | H9. 11/25 | 2.4 | 2.7 |
H9. 7/30 | 1.2 | H10. 1/26 | 3.7 | |
H9. 9/24 | 2.6 | H10. 3/16 | 3.8 | |
H11. 6/10 | 2.9※ |
(14.2)西谷田川
本研究での測定値は※2.5(mg/l)であった。以下、参考に市の測定値を示す。
採水日 | 窒素濃度 | 採水日 | 窒素濃度 | 平均 |
---|---|---|---|---|
H9. 5/29 | 2.7 | H9. 11/25 | 2.9 | 3.5 |
H9. 7/30 | 1.4 | H10. 1/26 | 5.1 | |
H9. 9/24 | 3.1 | H10. 3/16 | 5.6 | |
H11. 6/10 | 2.5※ |
(15)小野川
本研究での測定値は※2.2(mg/l)であった。以下、参考に市の測定値を示す。
採水日 | 窒素濃度 | 採水日 | 窒素濃度 | 平均 |
---|---|---|---|---|
H9. 5/29 | 1.7 | H9. 11/25 | 3.5 | 3.6 |
H9. 7/30 | 0.9 | H10. 1/26 | 5.7 | |
H9. 9/24 | 3.7 | H10. 3/16 | 6.2 | |
H11. 6/10 | 2.2※ |
(16)下水道
放流水中の窒素濃度は15.3(mg/l)であった(出典:利根浄化センター)。
(17)霞ヶ浦木原取水場
茨城県水道統計から窒素濃度は0.9(mg/l)であった。以下に県の測定結果を示す(単位:mg/l)。
採水日 | 窒素濃度 | 採水日 | 窒素濃度 |
---|---|---|---|
H9. 4/8 | 0.95 | H9. 9/2 | 0.78 |
H9. 5/13 | 1.30 | H9. 10/7 | 0.79 |
H9. 6/3 | 0.89 | H9. 11/4 | 0.67 |
H9. 7/1 | 1.20 | H9. 12/2 | 0.84 |
H9. 8/5 | 0.88※ | 平均 | 0.93 |
以上の値に、流量をかけてつくば市の年間の窒素化合物の流れを明らかにした。流入 の殆どは桜川・小貝川からであり、上流からの汚染が原因になっている。流出量は、地下に 浸透するか、河川に流れるかしている。しかし、下水道の窒素量が263.2トンと高く、人間な どの生物活動が利根川の汚染に影響していることは明らかである。
流入 | 窒素量 | 出典 | 流出 | 窒素量 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|
雨水 | 0 | 推計 | 蒸発量 | 0 | 推計 |
上水道 | 8.4 | 中央配水場 | 下水道 | 263.2 | 利根浄化センター |
工業用水 | 0.7 | 新治浄水場 | 花室川 | 25.5 | 測定 |
簡易水道 | 0.8 | 市水道統計 | 谷田川 | 116.9 | 〃 |
専用水道 | 0.1 | 〃 | 小河川 | 2.9 | 〃 |
個人水道 | 9.6 | 茨城県 | |||
桜・小貝川 | 640.0 | ||||
農薬など | 4.8 | 推計 | 地下浸透 | 500.0 | 推計 |
合計 | 664 | 合計 | 909 (mg/l) |
つくば市近辺での窒素の流れは以下の図で明らかにできる。つくば市の物質循環を考え たとき、利根川の窒素濃度を抑えることが必要である。現状では、河川の窒素濃度は比較的高 く、廃水処理場を経由する度に値は上昇している(参照:参考文献(1))。
図2-4-2 つくば市近辺の年間の窒素の流れ(単位:トン)
つくば市に流入してくる窒素664トンの殆どが、河川からのものである。そのうち500トン
が地下に浸透している。地下水の窒素濃度が4.8(mg/l)と、河川の窒素濃度よりも上回ってい
ることから、窒素化合物は地下に蓄積している事が分かる。これは、人間以外の生物活動の影
響だと思われる。水道利用者の窒素化合物の安全基準は10.0(mg/l)であるが、窒素濃度のばら
つきを考えると、個人水道の利用者は安全とは言えない。上水道・簡易水道の整備は必要であ
る。つくば市の窒素負荷量は263.2トンであり、これは廃水処理場からの流出量に当たる。この
ことから、窒素化合物の量を減らすためには、廃水処理場での窒素除去が最も有効な手段であ
ると言える(参照:参考文献(2))。現在、利根浄化センターでは窒素除去は行われていない。
次節では、利根浄化センタ-での窒素除去導入のための分析を行う。
図2-5-1 廃水処理設備の概要
(2)ペガサスによる除去率の増加
現在の利根浄化センターの窒素除去率は45.6%である。ペガサスを導入することで、
除去率を約80%に向上できる。これにより、窒素化合物の放流量を494トン→216トンへと
削減できる。これは、利根川下流域の窒素化合物の1.6%以上を除去できる事を示している。
表2-5-1にペガサスを導入している4つの処理場の除去率を表示する。利根浄化センターでは、
高速凝集沈殿法と急速濾過法を合わせて行っているため、以下の数値より除去率は高まるこ
とが予想される。
処理場名 | 処理水量(・/日) | 流入 (mg/l) | 流出 (mg/l) | 除去率 (%) |
---|---|---|---|---|
宗像終末処理場 | 11,300 | 40 | 10 | 75 |
芳賀佐山浄化センター | 2,680 | 49 | 7 | 86 |
陸前高田浄化センター | 2,800 | 42 | 10 | 76 |
Bellozanne下水処理場(英) | 77,760 | 55 | 10 | 82 |
利根浄化センター | 88,000 | 28 | 15 | 46 |
(3)ペガサスの導入費
次に設備改造の工事費について表示する。利根浄化センターのエアレーションタンク
にはサイズに2種類あり、それぞれ第1、第2系統とする。第1系統は計画処理水量が一日
132,000m3であり、第2系統は一日268,000m3 である。工事費の概算は、開発・施工を
行っている日立プラント建設に依頼した。以下に工事費を表示する。なお、これは機械設備
のみであり、現実にはこれに電気設備の費用がプラスされる。
機械名(反応タンク設備) | 形式 | 数量 | 価格 (千円) | 備考 |
---|---|---|---|---|
流入ゲート | 鋳鉄性手動可動堰 | 24 | 0 | 既設 |
自動スクリーン | 自動微細目スクリーン | 24 | 360,000 | |
無酸素タンク撹拌費 | 水中機械式撹拌装置 | 72 | 525,600 | |
包括固定化担体 | 24 | 3,024,000 | 好気タンク設備一式 | |
好気タンク設備 | 担体分離スクリーン | 3A+3Bの複合価格 | ||
(硝化促進型) 散気装置 | ||||
循環水路設備 | ||||
風量調節弁 | 電動クシ歯付バタフライ弁 | 24 | 60,000 | |
風量計 オリフィス式 | 24 | 19,200 | ||
機器費計 | 3,988,800 | |||
据えつけ費 | 289,440 | (機器費?硝化漕設備)×0.3 | ||
直接工事費 | 4,278,240 | |||
間接工事費 | 797,760 | 直工費×0.2 | ||
工事原価 | 5,076,000 | |||
一般管理費 | 913,680 | 工事原価×0.18 | ||
合計 | 5,989,680 |
表2-5-3 第2系統の概算工事費
機械名(反応タンク設備) | 形式 | 数量 | 価格 (千円) | 備考 |
---|---|---|---|---|
流入ゲート | 鋳鉄性手動可動堰 | 20 | 0 | 既設 |
自動スクリーン | 自動微細目スクリーン | 20 | 400,000 | |
無酸素タンク撹拌費 | 水中機械式撹拌装置 | 40 | 720,000 | |
包括固定化担体 | 20 | 5,780,000 | 好気タンク設備一式 | |
好気タンク設備 | 担体分離スクリーン | 3A+3Bの複合価格 | ||
(硝化促進型) 散気装置 | ||||
循環水路設備 | ||||
風量調節弁 | 電動クシ歯付バタフライ弁 | 20 | 60,000 | |
風量計 オリフィス式 | 20 | 20,000 | ||
機器費計 | 6,980,000 | |||
据えつけ費 | 360,000 | (機器費?硝化漕設備)×0.3 | ||
直接工事費 | 7,340,000 | |||
間接工事費 | 1,468,000 | 直工費×0.2 | ||
工事原価 | 8,808,000 | |||
一般管理費 | 1,585,440 | 工事原価×0.18 | ||
合計 | 10,393,440 |
ここで、3つの案について検討する。案1は第1系統を改造、案2は第2系統を改造、 案3は第3系統を改造するものである。案1では総額は59.90億円、案2では103.73億円、 案3では163.83億円となる。現在の利根浄化センタ−の処理水量は一日88,000m3 であるから第1系統のみの改造でもほぼ全ての窒素化合物を除去できることが分かる。 現在の利根浄化センタ−の年間の窒素放出量は494トンで、窒素除去率は45.6%である。 ペガサスを導入すると、除去率を約80.0%に向上させ、窒素放出量は216トンにまで押 さえる事ができる。次に、ペガサスを導入したときの、各市町の返済計画について表示する。
(4)自治体の返済計画案
現在の廃水処理における市町分担金は、排水1m3 あたり50円である。この総額は
7市町で年間16.06億円(表2-5-4)である。7市町の下水道使用料金の総額は、年間21.42
億円(表2-5-4)である。この額に、建設費を上乗せして7市町で分担するものとする。建
設費のうち、国からの補助が55%支給されるため、自治体の負担額は45%である。この負
担額を起債を発行して返済するものとする。起債は利子3%で20年間で返済すると仮定する。
年間返済額は、単純に20で割ったものとし、以下の表に各案での返済計画を示した。結果と
して、案1では下水道料金が11.4%、案2では19.7%、案3では31.1%の増加となる。案1でも
ほぼ全ての窒素を除去できるため、結論として、案1を採用すれば利根浄化センタ−からの窒
素化合物の放出量を約300トン削減することができる。自治体の返済計画を表2-5-5に示した。
廃水処理分担金 | 使用料金総額 | |
---|---|---|
つくば市 | 861,000 | 648,000 |
茎崎町 | 127,000 | 200,000 |
牛久市 | 295,000 | 523,000 |
竜ヶ崎市 | 258,000 | 596,000 |
河内町 | 1,800 | 4,200 |
利根町 | 69,000 | 164,000 |
新利根町 | 3,000 | 6,800 |
合計 | 1,611,800 | 2,142,000 |
案1 | 案2 | 案3 | |
---|---|---|---|
計画処理水量・/日 | 132,000 | 268,000 | 400,000 |
概算工事費 | 5,989,680 | 10,393,440 | 16,383,120 |
国庫補助 | 3,294,324 | 5,716,392 | 9,010,716 |
自治体負担額 | 2,695,356 | 4,677,048 | 7,372,404 |
返済総額 | 4,868,112 | 8,447,268 | 13,315,381 |
(利子3%20年返済) | |||
年間返済額 | 243,405 | 422,363 | 665,769 |
H9年度下水道料金総額 | 2,142,000 | 2,142,000 | 2,142,000 |
下水道料金増分 | 11.4% | 19.7% | 31.1% |