第3章 提案
3−1.住民管理の検討
これまでの調査で市の管理については、予算の壁があり、限界があることがわかった。そこで、住民による管理について考えたい。住民による管理ならば人件費はかからず、掃除用具などの費用のみで維持管理が可能である。また、2-2-3の住民へのインタビュー調査により、13人中9人が住民管理に参加してもよいと答えている。確かにサンプル数が13と少なく、住民参加の可能性が高いというには不十分だが、可能性としては期待できる結果ではないだろうか。問題は、住民管理により、本当にきれい指数を上昇させ、維持していくことができるのかである。
そこで住民による掃除により、すずかけ公園のトイレをどの程度きれいにできるのか、またそのためにはどの程度の負担がかかるのかを検証するため、私たちインフラ班が実際に掃除を行った。
掃除日程
第1回
6月1日(火) 第1回 16:00〜18:00 内容:便器の黒ずみ取り 床の念入り掃除
第2回
6月4日(金) 第2回 14:00〜18:00 内容:ペンキ塗り
第3回
6月8日(火) 第3回 16:00〜16:10 内容:床のブラシ掃除 便器の簡単な拭き掃除
第1回の掃除により、タイルの汚れ、便器の黒ずみなど目立つ汚れは落ちた。しかし、蓄積した便器の黄ばみなどは、様々な洗剤とスポンジの組み合わせを試したが、なかなか落ちなかった。
第2回のペンキ塗りでは、最初に雑巾で軽く水拭きをしてからペンキを塗った。効果は予想以上で落書きはもちろんのこと、細かな汚れも目立たなくなった。トイレの印象を悪くしていた壁の落書きが目立たなくなったことで、トイレの印象はだいぶ改善された。
第3回は、第1回・第2回の大掛かりな掃除のおかげで便器をブラシでこすり、床をデッキブラシで磨くなど10分間の簡単な掃除で済んだ。

図3-1 掃除前のすずかけ公園のトイレ

図3-2 掃除前のすずかけ公園のトイレ
表3-1 掃除前のきれい指数 表3-2 掃除後のきれい指数

ごみ等の散らかりの項目は、掃除により改善された。床や内外壁・便器の汚れに関しては、蓄積した黄ばみ等がなかなかしつこく完璧に落とすことができなかった。落書きは、ペンキ塗りにより、ほぼ目立たなくすることができた。内外の破損放置状況については、インフラ班では、改善することができなかった。
最終的に、きれい指数を0から5に上昇させることができた。しかし、そのためには、相当の時間と労力をかけなければならないことがわかった。
住民にすべてを任せるとなると、きれい指数の上昇・維持を達成するためには相当の負担を強いることとなり、活動時間の設定が困難であったり、住民参加の期待が低くなってしまうことが考えられる。
3−2.市と住民の両者による管理の検討
私たちインフラ班による掃除により、すずかけ公園のトイレのきれい指数を0から5へと上昇させることができた。しかし、そのためには、それなりの時間と労力が必要となり、かなりの負担がかかることが分かった。よって、すずかけ公園のトイレ掃除をすべて住民に任せるというのは困難である。
ここで、市の管理と住民の管理について、表3-1のようにまとめることができる。
表3-3 市の管理と住民の管理との比較
市の管理の利点である住民に負担がかからないということ、住民の管理の利点である低コストでの維持管理が可能であるということがそれぞれ、住民の管理の問題点である住民の負担が大きいということ、市の管理の問題点である予算が制限されているということに対応し、相互に補い合えるのではないかと考えた。
そこで、市と住民の両者による管理を提案する。
具体的には、市が月1回、約1時間程度でしっかりと掃除をしてもらう。そして住民に月3回(または4回)、約10分程度の簡単な掃除をしてもらう。つまり、市が月1回きれい指数を上昇させ、次の市の掃除までの間を住民により、維持してもらうということである。インフラ班の掃除の結果、経験からもこれできれい指数の上昇・維持は十分に期待できる。
ここからは、問題点としても挙げた、予算の制限、住民の負担について検討していく。
まず、市の予算問題だが、従来では調査からも分かるとおりすずかけ公園のトイレ掃除にかかっている人件費は年間16,640円であり、きれい指数も0である。そこで今回の提案により掃除回数を月1回、年間12回にすることで
9,400円×(0.085×4)×12回≒15,340円
となり、従来よりも低コストで実現できる。
次に住民の負担についてだが、先程も述べたとおり、今回の提案では月3回(または4回)、約10分程度と設定した。その掃除内容だが、便器については洗剤をつけてブラシでこするだけ、床については洗剤をつけて、デッキブラシで磨くだけというもので、これは、インフラ班の掃除結果と経験によるものだが、1人で月3回やるわけでもないので、ほとんど負担にはならないと考える。それに加えて、市へ破損箇所などの報告を行ってもらえれば、破損についても従来よりも早い対応が望める。
このように、今回の提案が実現されれば、市の予算を新たに割くことなく、住民の負担も軽減し、そのうえできれい指数の上昇・維持が見込める。
最後に実現に向けてだがすずかけ公園を含む竹園二丁目にある竹園二丁目会という自治会に注目したい。竹園二丁目会は、竹園二丁目に住む120世帯からなる自治会である。竹園二丁目会では、毎月第一土曜日にすずかけ公園、竹園公園のゴミ拾いを、9班に分かれてそれぞれの持ち回りで行っており、毎回、10人程度の方が参加している。
この竹園二丁目会で今回の提案を実現させるためには、次のようなステップを踏まなくてはならない。
ここで、最も重要なことは、住民の方に納得してもらうということであり、それをクリアできれば住民側としては実現できると言える。その住民の納得については、3-1で述べたようにインタビュー調査の結果から可能性としては十分に期待できるのではないだろうか。後は、説得力のある説明が必要である。
さらに、きれい指数を維持するために意識啓発ポスターの掲示により利用者の意識を高め、壁面に絵を描くことで落書きなどの予防、トイレのイメージアップにつながるのではないだろうか。

図3-3 ポスター例
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