3.調査概要

3−1.調査概要
3−1−1.調査趣旨

 現時点での葛城地区の環境バランスを知るために、私達はエコロジカル・フットプリ
ントという指標を用いることは前述した。そして葛城地区のエコロジカル・フットプリ
ントを算出するには、実際に葛城地区に住んでいる人々の様々な消費行動を知る必要が
ある。そこで私達は葛城地区居住者に対して、その消費行動を知るためのアンケート調
査を行うことにした。
3−1−2.予備調査概要

 葛城地区でアンケート調査を行うにあたって、まず私達は模擬アンケートを作成し、
予備調査を行った。参考にしたのは「NPO法人エコロジカル・フットプリント・ジャ
パン」によって作成された診断クイズである。この診断クイズでは人間の消費行動を
食品・住まい・商品・サービス・交通・その他への消費量や支出額、利用量を問うこと
によって割り出し、そこからエコロジカル・フットプリントを算出している。
3−1−3.本調査概要

 予備調査の結果から、葛城地区で行うアンケート調査は、食品、交通の2項目に絞っ
たアンケート調査とした(別紙参考資料-1,2)。その理由として、食品については茨城
県が食料自給率70%と全国でも高いことをふまえ、地産地消を推進して環境負荷を減ら
すことができるのではないかと考えたからである。また交通については、車社会である
つくば市において、自転車利用を促進することで環境負荷を減らすことができると考え
たからである。両者に共通していることは、輸送エネルギー消費(CO2排出)を削減させ
、エコロジカル・フットプリントを減少させるというところにある。
 また、今回調査しない住まい・商品・サービス・その他の項目については、葛城地区
居住者の平均支出が日本人平均と比較して著しく異なるとは考えにくいということから
、エコロジカル・フットプリントの算出には日本人平均を用いることとした。

 アンケート調査の対象となった場所、依頼先、配布及び回収方法は表3-1、図3-1の通
りである。また、回収率はマンション全体で25.9%、戸建住宅全体で64.9%となった(
表3-2)。戸建住宅に関しては諸依頼先の手厚い協力に加え、綿密な事前の準備(別紙
参考資料-3)により非常に高い回収率となった。なお、結果としてマンションと戸建の
回収率に差があったため、両者のデータを合わせて取り扱うにあたって、歪みがないこ
とを確認してから行った。


図3-1:調査対象地地図




表3-1:調査対象地、依頼先、配布及び回収方法



表3-2:回収率



3−2.調査結果

 図3-2は葛城地区居住者が普段購入する食品の産地について表したものである。グラフ
の右側ほど茨城県産のもの(肉に関しては国産)を多く購入し、グラフの左側ほど茨城県
外産のもの(お肉に関しては外国産)を購入しているということを表している。食材ごと
に順番に見ていくと、野菜は茨城県産と茨城県外産のものを半々で購入するという世帯
が多く、米に関してはいつも県外産のものを購入する世帯といつも茨城県産のものを購
入する世帯の割合が高かった。次に牛乳に関しては、茨城県外産のものを購入する世帯
の割合が高く、卵に関しては野菜と同じような傾向が出た。最後に肉に関してだが、こ
れについては国内産のものを購入する世帯の割合が高く出た。


図3-2:葛城地区居住者が購入する食品の産地

 下の図3-3、図3-4はアンケート調査の結果をもとに、葛城地区居住者の勤務地と学校
所在地をプロットしたものであり、赤色のプロットが自動車での通勤、青色のプロット
が自動車以外(自転車、鉄道など)での通勤である。図3-3は関東規模で表したもの、図3-
4はつくば市周辺の規模で表したものである。図3-3より、遠くは水戸(茨城県)や桶
川(埼玉県)、鶴見(神奈川県)などに通勤しているが、かなり高い割合の葛城地区居
住者が、つくば市内かTXの沿線、東京23区内に通勤・通学しているということが分かる
。また、図3-4では、つくば市内に通勤している人は、筑波研究学園都市内に通勤して
いる人が多いというのも分かる。また、図3-4のプロットには赤色の点、つまり自動車
で通勤する人の勤務先を表した点が多く見られるのにも注目したい。
 この図3-4を受けて次に見ていただきたいのが左下の図3-5である。これは、つくば市
内に自動車で通勤する人の通勤時間の割合を表したグラフであるが、ここで我々が注目
したのは10分未満と10〜20分の部分である。それほど長くはない通勤時間ながら、移動
に自動車を使っているという人がかなり高いというのが分かる。


図3-3:自動車通勤者の勤務地(関東)     図3-4:自動車通勤者の勤務地(つくば)



図3-5:つくば市内自動車通勤者の勤務時間割合

3−3.エコロジカル・フットプリント算出
1 エコロジカル・フットプリントの構成要素

 今回の区分は、エコロジカル・フットプリントジャパンの算出方法における区分を参
考にしており、食品、交通、住まい、商品・サービス、その他、の5種類に分類した。
その中でも、葛城地区の特性を踏まえ食品と交通に関してはアンケート調査の値を反映
し算出している。

2 個人のエコロジカルフットプリントの構成

 今回の調査では、アンケート調査から世帯の消費量を設定し、世帯あたりのエコロジ
カル・フットプリント(以下、EF)をもとめ、居住者人数で除することで個人のEFを算
出した。そのため、世帯の中での平均を個人のEFとして扱っている。
 なお通勤通学においては個人別に調査したものを合計し世帯あたりに直した後、居住
者数で除して個人のEFを算出している。

3 エコロジカル・フットプリント算出の基本式

 EF = 消費量(原料) / 土地の生産性

でもとめることができる。

 例えばトマトならば、私たちが1年間に食べるトマトの量を、トマトを生産する土地
の生産性で除することによって算出される。
 ここで生産性とは、簡単に言えば単位面積当たり、どれくらい食品を収穫できるかで
あり、トマトの場合は

土地の生産性 = 収穫量 / 作付面積

という式で算出している。

4 食品のエコロジカル・フットプリント
 食品のEFは、その食品を生産するために必要な土地のEFと、食品の輸送によって発生
するCO2を吸収するために必要な土地のEFを合計した値とした。

食品のEF = 生産に必要な土地 + CO2吸収に必要な土地 … 【※1】

 ここで、生産に必要な土地は、算出対象とした食品の個人の1年間の消費量(表3-3)
を土地の生産性で除することによって算出している。

生産に必要な土地 = 食品別消費量 / 食品別土地の生産性

 また、CO2吸収に必要な土地に関して、CO2排出量を森林のCO2吸収量で除して得てい
るため、その大小はCO2排出量に左右される。排出量は貨物輸送のトンキロ法よりもと
めた。輸送距離によって左右されるため、茨城県産と県外産によって異なる輸送距離を
設定している。

CO2吸収必要な土地 = CO2排出量 / 森林のCO2吸収量 … 【※2】

 【※1】の計算を食品別に、茨城産と県外産に分けてEFの値を設定した。その全てを
合計して食品のEFを算出している。

5 輸送距離の設定

 上記より、食品のEFは輸送距離によって変化することがわかる。
 輸送距離の設定のため食品別に出荷地を設定した。茨城県内では最も近い場所を、県
外では最も遠い場所を代表としている。牛乳を例にすると、茨城県内の出荷地は古河市
であり、県外は北海道と輸送距離に大きな差が出る。
 産地から出荷地までの距離を食品別に考慮する必要があるが、全てのデータを入手す
ることはできなかったため、牛乳や、ピーマンなどいくつかの食品について調査し、県
外産の食品には、平均的な値として1.5を出荷地から小売店までの距離に乗じた値を
、個々の食品の総合的な輸送距離と設定した(表3-3)。

6 食品別のエコロジカル・フットプリントにおけるアンケート調査のランクの反映

 個々の食品のEFについて地産池消の意識を反映するために、アンケート調査より得た
1〜5のランクに応じて茨城産の割合、県外産の割合を設定し(表3-4)、以下の式より
値を算出している。

食品別のEF = 茨城産のEF × ランクにおける茨城産の割合
             +県外産のEF × ランクにおける県外産の割合

7 交通のエコロジカル・フットプリント

 交通のEFは大きく通勤通学、自家用車、その他移動の3つに分けて算出した。全てに
おいてCO2の排出量をCO2吸収に要する土地の生産性で除することによってEFを算出して
いる(前頁【※2】)。
 ここでもやはり距離がCO2排出量を左右するため、距離を求める必要がある。以下に
各交通のEFにおける距離の算出方法を記す。
A)	通勤通学、その他移動
 アンケート調査より各移動手段に要する時間を調査した後、評定速度(表3-5)を乗
じて距離を算出し、その距離からCO2排出量を算出している。
B)	自家用車
 アンケート調査から得た1年間の走行距離を基にCO2排出量を算出。

8 個人のエコロジカル・フットプリント算出の結果

 以上のアンケート調査を基に算出した食品、交通は、日本人平均の住まい、サービス
、またその他を合計すると葛城地区の住民1人あたりのEFは3.13(gha)となり、この値を
公平割り当て面積1.8(gha)で除すると1.72となる。この値1.72は、世界人口65億人が
、葛城地区の住民と同じ生活をしていると仮定した場合に必要になる地球の個数を表し
ている。つまり地球0.72個分のかけるべきでない負担を伴う生活を葛城地区の住民がし
ていると言える。

表3-3:算出対象の食品の消費量と輸送距離
表3-4:アンケートランクと割合


表3-5:交通手段別評定速度



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