分析
事前アンケートと事後アンケートの氏名でマッチングしたパネルデータで分析した結果、ガソリン価格の安い4月よりも、ガソリン価格上昇した5月の方がわずかながら自動車の利用を控えようという統計的に有意な結果が得られた。このことから、ガソリン価格の低下によって、4月においては自動車利用意図が増大していたと考えられる。
自民党:道路整備がまだ必要な地域があるので、道路整備を優先させるべき。それ以外にも交通問題(交差点整備、渋滞など)解決のために税金を使うべき。
アンケート調査で?暫定税率を維持するべきか、廃止するべきか。?道路財源を一般財源化することに賛成か反対か。の二つの質問とそれぞれの意見の理由を質問した。この結果により、4つのグループに分けてみた。
表1.ガソリンの意見別グループ名
この分析より自動車の利用回数が少なく、バスの利用回数が多い。社会問題などについて考えているなどの理由から「バス志向タイプ」が望ましいタイプと考える。
ここで、自動車志向タイプの中で車を持っていない人は自分にとってメリットがあまりないであろう「暫定税率廃止、一般財源化反対」にする理由があまりないと考えられる。
では、車を持っていない「自動車志向」タイプの人たちは何故その意見なのか。
アンケートで得られた意見を見てみると
暫定税率についての意見
・計画性なく無駄に使われているとしか思えない。
・増税だけでなくコストを減らす努力をするのが先なのでは。
・国民の負担増える。不信感も与えるのでは。
・ガソリンが高い。車を持つ気がおきない。
・消費税がすでにかかっている。
一般化についての意見
・どうせ無駄に使われる。
・目的範囲を広げると余計無駄遣いが出る。
というような意見が多く見られた。これらの意見は政府、国の姿勢自体に不満を持っているという見方ができるのではないか。
このことから、車を持っていない「自動車志向タイプ」の人々は国、政党の財源利用使途や計画に関する説明不足によってその意見になっていると推測できる。これは非常に好ましくないことである。
それを解消するために
・役人が国民に納得のいく財源の使い方をし、無駄使いをなくす
・国民の信頼をとりもどす
・ガソリン税の使い道を明確にして無駄使いをなくす
上記のような行動をし、国の信頼を回復することが「バス志向タイプ」への意見の移行、ひいては自動車利用の減少につながるのではないだろうか。
これは本来当たり前になされることであり、これが自動車利用抑制の第一歩であると考えられる。
各グループ別に実験群と制御群の自動車利用意図について分析、比較した。その結果、自動車志向タイプのグループのみ統計的に優位に違いが見られた。既往研究のモビリティ・マネジメントの結果からは、自動車志向タイプすなわち自動車強依存者の態度変容は困難であるとされているが、本研究では、既往研究の結果に反し、自動車志向タイプでのみ有意な態度変容が見られた。これは自動車志向タイプが今回のガソリン価格の上昇(構造的方略)に大きな影響を受け、それと同じタイミングでコミュニケーション(心理的方略)をとったことでより大きな効果が得られたと考えられる。
また、その他のグループに関しては、自分はあまり自動車を使っていないと思っていたのではないかと考えられる。
表2.説明文別暫定税率の意見
暫定税率の意見 | |||
維持 | 廃止 | 合計 | |
説明文 短文 | 68 | 62 | 130 |
長文 | 73 | 46 | 119 |
合計 | 141 | 108 | 249 |
表3.説明文別一般財源化の意見
一般財源化 | |||
賛成 | 反対 | 合計 | |
説明文 短文 | 83 | 36 | 119 |
長文 | 66 | 45 | 111 |
合計 | 149 | 81 | 230 |
結果は、長文の方が暫定税率:維持、一般財源化:反対の傾向が強いというデータが得られた。
人々は判断要素に批判的な情報を与えられたことで心理的リアクタンスが働いたと考えられる。
心理的リアクタンスとはBrehm, J. W. によって提唱された説得への抵抗を説明する有力な理論のことである。
人は自分の意見や態度を自由に決定したいという動機を持っており、これが脅かされたとき、人は自由の回復をめざすべく動機づけられる。この動機づけ状態を心理的リアクタンスと呼ぶ。生起するリアクタンスの大きさは、自由が確保されているほど、自由が重要であるほど、自由への脅威が大きいほど、大きくなる。
人が説得を受けるとき、唱導方向に態度を変えるよう圧力をかけられると、受け手は態度決定の自由が脅かされたと感じ、唱導された態度を取らないことで自由を回復しようとするのである(ブーメラン効果)とこの理論では説明する。
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