6.考察



 ここまでのつくば市の住民に対するアンケートや各水道事業者に対するヒアリングを行ってきた 結果、つくば市の上水道サービスに潜む問題点が浮かび上がってきた。



@ 水道水の安全性と住民の意識間のギャップ

 公共サービスである水道水の提供において、水道水の安全性の確保は大前提であると考えられる。 実際、各水道事業者に対するヒアリング調査の結果、すべてのセクションにおいて安全性への配慮が なされており、水道水自体の安全性は間違いなく確保されていると断言できる。しかしながら、 住民の多くはその安全性に対して確信を持てずにいる。この状況は、水道水供給者と水道利用者、 双方にとって望ましくない状況といえる。例えば、水道水の安全性に不安を持っている住民の多くは、 その補足的効果を浄水器やミネラルウォーターに求めていることが分かった。
 しかし、こういった安全性の確保のための行為が、完全なる無駄な行為であることは明白である。 なぜなら、水道水の安全性は水道水供給側によって確保されているからだ。この住民の代替的行動に よって、社会的には多くの損失が生み出されている。例えば、住民は浄水器の設置や維持・管理に 多くの費用をかけ、またミネラルウォーターの購入にも多くの費用をかけている。そして、 消費されたミネラルウォーターのペットボトルにかかる廃棄・リサイクル費用は社会にとって大きな 負担となる。
 こうしたことから、水道水の安全性と住民の安全性に対する意識のギャップは水道供給のうえで 大きな問題といえる。


A 情報提供の方法

 前述したように、水道水の安全性と住民の意識間のギャップは存在している。しかし、この状況に 水道水供給側がただ手をこまねいている訳ではない。各セクションにおいてホームページを作成し、 その業務内容や安全性をPRしている。
 しかし、その情報はそのセクションだけの話に終始しているので、いかに住民の元に水道水が 安全に供給されているか,という流れがつかみにくい。例えば、浄水場の安全性をPRされたところで、 その次の段階でどうなっているか、浄水場のホームページを見たところで分からないので、住民の 水道水に対する信用にあまり訴えかけることができないという問題がある。


B 私有地内における水道管理問題

 前述のように、水道水の安全性は水道水供給者によって確保されている。しかしながら、 水道水が住民の口に入る直前の部分に関して、つまり私有地内の配水管やタンクに関して行政側は 全く関知していないので、その部分の管理・維持は住民の判断に依っている。よって、いくら安全な 水道水が供給されていようとも、個人の管理の部分の管理が不十分な場合、水道水の安全性に悪影響を 及ぼす可能性が出てくる。この問題は,特に公務員宿舎(集合住宅)の住民にとって深刻な問題と いえる。公務員宿舎のような集合住宅の場合、そこに住む多くの人の意思統一が維持・管理の大きな 問題となってくるからである。それに対し、戸建て住宅の場合はある程度自由な選択ができるため 不満は少ない。
 問題は、こういった個人管理の部分における管理方法などの情報提供が少なすぎることだ。 行政がすべての部分を管理することが安全面のみを考えた場合、最善であることは明白だが、 財政面を考えた場合あまり望ましくないと思われる。よって、現在のように個人に私有地部分の管理を 任せる方法を行政はとっているのだが、現在の行政の対応を見るとただ丸投げしているようにしか 見えない。こういった行政側の対応によって住民が水道水に不信感を抱いている現状は問題といえる。




← もどる │ 次へ →