5.結果・分析(3)
5.4 水道水のイメージ分析
水道水のイメージを調べるために、Osgoodによって意味を測定する方法として提唱されたSD法を
用いて分析をおこなった。
SD法による分析
分析方法
因子分析
因子抽出法: 主成分分析
回転法: Kaiserの正規化を伴うプロマックス法
主成分分析により分析を行い、回転法として斜交プロマックス法を用いた。
主成分分析により抽出された因子間に相関があると考えられるため、その影響を無くすために
回転法を用いた。
分析では、5つの因子が抽出された。今回、因子数の決定として、回転前の主成分分析の抽出された
因子の固有値が大きく減少する所まで用いることとすると、分析を行った結果、固有値が、
第1因子が9.603654であり、第2因子が1.639563と大きく差があった。よって、第1因子と、
式の精度を上げるため、第2因子まで用いて分析する。
回転後の因子の寄与率(※1)は
因子1= 38.8821854%
因子2= 21.41668334%
※ 1 他の因子を無視したときの単独の因子の寄与率.加えても累積寄与率にならない。
まず第1因子であるが、“健康的な”、“安全な”、“純粋な”と言った項目から、安全性
(安全である度合い)と名づけることにした。次に第2因子であるが、“身近な”、“必要な”、
“頼もしい”といった項目から日常性(日常的な生活にどれだけ重要であるか)と
名づけることにした。
SD法による分析は心理的尺度による分析である。この複数の項目からなる心理的尺度が、
どの程度安定しており、信頼できるものか客観的に計算、つまり信頼性
(同一の対象者に同一の特性について繰り返し測定を行ったときの測定値の安定性に関する
心理統計学的概念)の検討を行う。
信頼性の推定方法:クロンバックのα係数=内的整合性係数・・・その心理尺度の項目同士が
高い相関をもっており、安定性をもっている程度を計算。
安全性(因子1)
評価項目(健康的な、安全な、いい臭い、純粋な、清らかな、美味しい、綺麗な、新鮮な、自然な、
好き)
α=0.9355
日常性(因子2)
評価項目(必要な、身近な、頼もしい、正確な)
α=0.7394
安全性、日常性ともに0.7以上あり、心理尺度として用いても差し支えはない。
特に安全性については0.9以上と高い値を示しており、高い信頼性があるといえる。
分析結果
因子と美味しさの偏相関係数により分析すると次のことがいえる。
| 安全性 | 日常性 |
美味しい | 0.794604163 | -0.125514299 |
<因子と偏相関係数>
・美味しさは安全性との関係が強い
・美味しさは日常であまり重視されていない

<因子と各項目の関係>
また図より次のことが言える
・美味しさは安全性だけでなく水の美しさとも関係がある
・美味しさは臭い(※2)との関係がある
※2 物のにおいを修飾する形容詞はくさいしかないため、図にはくさいと書いているが、
これは、良い意味でくさい(良いにおい)と言うことである。
水の美味しさと言う物が、味だけでなく、安全性や、美しさによって判断されていることが
わかる。
このような項目間にどの程度の相関があるか調べることとする。
美味しさと、これらの項目の相関係数を下記の表に示す。
| 安全性の項目 | 綺麗さの項目 | 臭い |
健康的な | 安全な | 純粋な | 清らかな | 綺麗な |
美味しさ | 0.71072 | 0.578003 | 0.590252 | 0.644971 | 0.518355 | 0.690223 |
<美味しさと他の項目との相関係数>
・美味しさと安全性の間には中程度の相関がある
・美味しさと綺麗さの間には中程度の相関がある
・美味しさと臭いの間には中程度の相関がある
この様に、主成分分析でも述べた様な結果が導きだせる。
この様な結果をもたらした原因は、以下のようなものが考えられる。
飲食物は安全であることが不可欠である。不味い物は危険、または危険である物は不味いという
固定観念にとらわれていると考えられる。このことが美味しさに影響を与える一因になっている
と考えられる。
水道水は見た目では透き通っており、他の水と見分けがつかない。しかし、美しさと相関がある
のは矛盾した話である。水道水に関係した汚いもの(例えば水源の美しさ)のイメージが影響して、
このような結果となったと考えられる。
くさい物は不味いと言った固定観念が、美味しさとにおいの間の関連性に影響を与えたと
考えられる。
水のイメージ分析のまとめ
SD法により、心理的な面を調べた結果、美味しさが様々な要因(安全性、綺麗さ、におい)が
影響していることがわかった。水道水の美味しさの改善には、物理的な改善は勿論のこと、
心理的な面から考えた要素の改善(例えば、霞ヶ浦の浄化や安全性の向上)も必要であると
考えられる。
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