4)結果
@保全団体へのヒアリング調査結果
実施対象
土浦市 宍塚の自然と歴史の会 会長 及川ひろみ 氏
実施日時
2001年 6月2日(土)
もともと、里山として成立していた宍塚大池という豊かな自然が多く残る地域を、開発者から保護しようということで活動がスタートした。その後、開発計画が白紙に戻されると、都市内に存在する身近な緑の大切さや、その緑が与える良い影響を市民に伝え、また自分たちも自然に深くふれあっていこうという活動に変化していった。
全国的に見てみても、かなり活発に活動している保全団体である。つくば市近辺の里山を語る上で、すでに存在し、活発に活動している保全団体の実態及び意向を把握するためにヒアリング調査を行った。
表1.保全団体へのヒアリング結果
活動内容 |
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田んぼ塾(水田の復活,農業体験学習,救援米,浅い池造り) |
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里山さわやか隊(ゴミ拾い,春を楽しむ会,収穫祭) |
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谷津田米オーナー制(米の産直,農家の支援) |
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観察路グループ(観察路の草刈り,補習と整備,看板設置) |
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谷津田グループ(休耕田の草刈り,オ二バス池造り,小川の整備) |
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ふれあい農園グループ(休耕田を畑地化,農園の開設と運営,自然農) |
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縄文の森グループ(林の草刈り,キノコ栽培,間伐,植林,炭焼き(今後)) |
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ハス刈りグループ(ハス刈り,ハス堀,大池の管理) |
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子供部会 |
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観察会 |
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会報の発行 |
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サミット(オニバス・里山・サシバ)の開催・参加 |
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環境調査(鳥,虫,蝶,キノコ,水質,ほ乳類等) |
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本の出版 |
地主関係 |
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地主約400人 |
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大地主約10人で半分の面積を保有 |
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土地を提供してくれる等協力的な人も存在 |
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地主の中に会員もいる |
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相続税などの問題で検討中 |
土浦市との関係 |
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かつては開発に躍起 |
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現在は活動に理解を示す |
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土浦市役所と合同でゴミ拾い・ハス刈り |
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土浦市のパンフに紹介写真掲載 |
収入 |
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110万円(1997) |
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財源・財団等からの助成金 |
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年会費1500円 |
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谷津田で作った米を5キロ4000円で買ってもらう |
広報 |
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会報(五斗蒔だより)の発行 |
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知る人ぞ知る,ではなくオープンに |
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宍塚地区の住民に会報を手渡し |
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土浦市内の小学校に会報配布,子供のために… |
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マスコミを利用して多くの人に報道 |
今後 |
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現在の状態で残したい。 |
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条件闘争はしたくない(何割だけ残せばいいっていうのはだめ) |
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自然環境教育・生涯学習の場 |
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現在は理想の里山管理を探る段階 |
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農業の観点から周辺住民をどれだけ巻き込めるか |
以上のヒアリング結果をまとめると
実態
・保全団体に参加している人々が、進んで作業を行い、その作業を通して、自然と触れ合うことの楽しみを得ている。
・作業することで、里山自体が整備される。その結果保全団体には参加していないが里山を訪れるという人々に心地よい環境を空間を提供している。
・地域の子供達に里山の大切さを教えるようなイベントを催している。
意向
・管理の強度(どれほど人工的なものを里山内に持ち込むか、どれほど自然のままの姿に留めておくか)に関しては、現状を維持し、これ以上人工物を里山内に持ち込まないことが会の大前提である。
・活動面では地権者をも含めた地域住民のさらなる活動への参加を促すために、さらにPR活動を行う。
・近隣に在住する住民のみではなく、HPなどを利用し大きな規模
・分野の人々に参加・協力を呼びかける。
・行政に対しては、これ以上の協力はあまり期待していないが、今後また開発計画などが再燃しないように呼びかけ、保全団体の認可や、多少なりの管理負担の軽減などを陳情する。
・大手企業や、環境保護団体、地域企業からの助成金を呼びかけている
里山保全活動をおこなううえでもっとも強いインセンティブは
里山から楽しみを得る
より多くの地域住民の参加と強力
であることが明らかになった。
また以上のようなインセンティブを満足させる大前提としては
里山が管理されていないと楽しみが得られない
里山自体が存在していないと何もできない
この前提をクリアするために活動していることが分かった。
保全団体の実態と意向を踏まえた上での、保全団体及び、里山を
取り巻くものと里山の関係図の整理し、サイクルを明らかにする。
里山管理に対するサイクル
・保全団体が里山から楽しみを得る
さらに楽しむために作業する
・保全団体が作業する
市民が楽しめる空間を提供
お返しとして市民は労力・費用という形で保全団体に協力
・保全団体が市民に対してPR活動を行う
理解のある市民が労力・費用面で協力
里山存続に関するサイクル
・保全団体が地権者に対してPR活動を行う
地権者が土地の貸与という形で協力
・保全団体が行政に対し陳情する
行政が里山に対して法的保全措置を行う
里山が存続し保全団体は楽しみを享受する機会を得る