1) 広域的な課題
常磐新線、首都圏中央連絡自動車道の建設等により、土浦市の取り巻く環境は大きく変化してきている。さらに、県南の中核都市としての役割を明確にし、自立性の高い都市を形成していかなければならない。
そこで以下の課題を十分に踏まえた対応策を明らかにしなければならない。
第3章 県南の中核都市としての成長
第4章 高齢化社会に対応できる福祉施設の充実
第5章 霞ヶ浦のレクリエーション拠点としての有効利用
第6章 つくば・牛久をはじめとする周辺市町村との連携強化
2) 市域にみる課題
土浦市における土地利用の課題は山積しており、市街化区域、市街化調整区域それぞれの課題を把握し、今後の土地利用に十分反映させていかなければならない。
[市街化区域]
第7章 中心市街地における都心機能の充実と高度利用の促進
第8章 亀城公園周辺の歴史景観の保護
第9章 市役所移転とその跡地利用
第10章 荒川沖・神立駅周辺の都市基盤整備
[市街化調整区域]
第11章 霞ヶ浦湖岸環境の整備
第12章 優良農地の保全
第13章 市街地隣接区における計画的な都市的土地利用への転換
第14章 インターチェンジ周辺地区の有効利用
2.交通計画
第1節 交通構想
現在土浦市に限らず、多くの地方都市において、交通の現状として自動車交通に大きく依存している。日本の多くの都市は自動車によって大きく発展してきたという事実はあるが、しかし、自動車交通には、子どもや高齢者などの自動車を持たない交通弱者が存在するため、自動車交通へ重点的に投資をする交通計画には不公正さがあると思われる。また、近年自動車の排ガスであるとか、騒音の公害等による環境問題、自動車の燃料である石油資源の有限性の問題など、増え続ける自動車交通による弊害も見られるようになってきた。こうした問題だけを考えてみても、現状の自動車に過度に依存した交通から、将来、自動車だけでなく、バスや電車等の公共交通が充実したバランスのとれた交通へ移行していくことが望まれていると思われる。
しかし、いきなり公共交通を充実させるといってもなかなか難しいと思われる。土浦市の現状としては、都市のスプロール化などによって、都市部が広範囲に広がっているため、大都市のような人口の集中が見られない。そのため、バス交通は、なかなか事業として成立することが難しい。そういった状況を考慮して、今すぐドラスティックな交通体系の変革を行なっていくのではなく、まず差し迫った問題から段階的に対応して、将来の理想へ近づけていくことが望ましいのではないだろうか。
土浦市における現在の主要な道路として、南北方向には常磐自動車道と国道6号線があり、6号と土浦市中心部でクロスする形で東西方向に伸びているのが、国道125号線と国道354号線である。これらの道路は茨城県南地域において重要な幹線道路である。また、現在土浦市の南側に首都圏中央連絡自動車道(通称圏央道)の計画が進められており、茨城県南の東西方向の主要幹線道路として期待されている。その圏央道と土浦市を結ぶ道路としての位置づけで、国道6号線バイパス(牛久土浦線)、地方道土浦竜ヶ崎線、土浦江戸崎線が計画されている。東西方向の道路整備として、国道125号線バイパス、国道354号線バイパスの整備が進められている。JICA-STRADAによる分析を行なった結果、道路の現状の問題点としては、土浦駅西側、国道6号線の混雑が挙げられる。
土浦駅西側の混雑に関して、土浦市の中心部の混雑は集客性、利便性等にもかなりの影響を及ぼすと考えられる。混雑の原因としては、西側に商業施設等の施設の集中が見られること、中心部の外側に、通過交通のためのバイパス整備が十分でないことが挙げられる。
国道6号の混雑に関しては、6号は土浦市の南北を通る重要な幹線道路であるが、バイパス整備が遅れ、現状の交通量に対応しきれていないと思われる。
公共交通に関しては、鉄道は常磐線の神立駅、土浦駅、荒川沖駅の3駅があり、それぞれ利用者は増加傾向にある。バス交通は、土浦駅の東西バスターミナルを中心にバス路線が整備されているが、利用者数の減少とともに路線数も減少傾向にある。
上の現状の問題を改善していくことと共に、土浦市は業務核都市として、周辺地域との交流を促進するような交通計画を進めていかなければならない。また、圏央道、常磐新線など、土浦市に大きな影響を与えるであろうプロジェクトや、市役所移転などの施設計画を考慮した交通計画が望まれる。
そこで、基本方針として以下の4つを掲げる。
・ 土浦駅前の混雑解消
・ 国道6号線の混雑解消
・ 周辺地域との交流を促進するための道路整備
・ 公共交通の充実
3.部門別計画
第1節 都市基盤
○ひとの集まる街「human port」の基盤づくり
1)周辺市街地
周辺市街地については,南の荒川沖駅前・北の神立駅前の再開発を中心に行う。また,両駅周辺地区の地域特性をいかした商業・業務の充実,工業地区開発,都市計画道路の整備,良好な住宅地の提供を図る。
その上で,常磐高速道・常磐線・国道6号線による荒川沖駅‐土浦駅‐神立駅の南北の軸をより一層強化し,同時に,つくば市との連携など東西地区とのつながりを形成する。
@ 荒川沖駅前再開発
土浦市の南の拠点として,荒川沖駅の西口駅前広場の整備を推進するともに,荒川沖駅西口再開発事業を行い,商業・業務機能の充実を目指す。また,宍塚地区に建設予定の「ふくしむら」へのアクセスをみこして,高齢者や心身障害者などに配慮した移動施設の設置,駅のバリアフリー化などを検討する。
交通に関しては,西を走る常磐道や土浦市の南を走る予定の県央道など,荒川沖駅周辺の後背地交通の利便性を意識して,流通業務系の利用形態を進めていく。
居住環境に関しては,駅の再開発に伴い,荒川沖駅北部の地域に良好な住宅地を提供していく。
区分 | 計画面積(ha) | 開設施設数 | 開設面積(ha) | 整備率(%) | |
住区基幹公園 | |||||
街区公園 | 8.73 | 27 | 8.73 | 100.0 | |
近隣公園 | 8.00 | 4 | 6.00 | 75.0 | |
地区公園 | 4.04 | 1 | 4.04 | 100.0 | |
小計 | 118.40 | 35 | 71.20 | 60.1 | |
緑地 | 0.90 | 2 | 0.90 | 100.0 | |
合計 | 119.30 | 37 | 72.10 | 60.4 |
A 霞ヶ浦総合公園
霞ヶ浦総合公園は,ひとの憩いの場として,より一層総合公園としての機能を充実させていく。特に,水辺環境の整備(マリーナ,人口島の整備など)を推進していく。また,川口運動公園の,運動公園としての機能の一部を移転させる。それに伴い,駐車場などの整備も行い,「ひとのあつまる公園」を目指す。
B 宍塚・上高津福祉公園(新設)
ふくしむら敷地内に建設予定の福祉公園。みどりあふれる自然公園で,レクリエーション機能よりも,人々が安らげる「憩いの公園」を目指す。また,自然との共生をコンセプトに,隣接する上高津貝塚を通り宍塚大池へ抜ける自然散策遊歩道の整備行う。
C 常名運動公園
土浦市のスポーツ需要に対応するため,川口運動公園に代わる運動公園として建設を予定している。川口運動公園の運動公園としての機能の大部分の移転に加え,中核的公園としてのシンボル性・景観などを配慮したふれあいの場としての機能も有した運動公園として常名運動公園の整備を推進していく。
第2節 産業
○ひと(human)を活かす産業の振興
1) 農林水産業
土浦市の農業は,都市化の進展や産業構造の変化などにより,他市の例に漏れず,農家戸数は年々減少傾向にある。さらに今後も,農業従事者の減少,後継者不足,経営耕地面積の減少など,土浦市の農業を取り巻く環境はますます厳しいものになっていくものと考えられる。
したがって,土浦市では,市の自然条件・立地特性をいかした都市近郊型の農業の発展を目指す。
市の自然条件の優位性を利用した農業政策として,霞ヶ浦北岸地域一帯を一大農業地域として,主に土浦市の特産品でもあるレンコンの生産地としていく。また,霞ヶ浦ではワカサギや鯉・ウナギ・ヘラブナの放流増殖施設の設置などにより漁業資源の確保を推進する。
林業については,平地林の整備・造林対策などをすすめる。また,宍塚ふくしむらの建設に伴い,宍塚周辺の森林保護にも努める。
また,常磐自動車道により,東京まで約1時間という立地特性をより生かすため農地・農村の交通網の整備を促進する。
2) 商業・業務
土浦市はこれまで,県南の中心的商業地として発展してきた。しかしながら,近年では,自動車を利用した買い物客が増加しており,駅前商店街の街路幅員の狭さや駐車場不足の問題から中心市街地では慢性的な交通渋滞が発生している。それに加え,国道沿い大型ロードショップなどの急増により,駅前商店街からは買い物客の足が遠のき,駅前の急速な空洞化が進んでいる。
以上のような現状にはどめをかけるため,土浦市では中心市街地活性化計画を掲げ,魅力ある土浦市中心市街地の再生を目指す。
また,土浦駅のみならず,土浦市の南北の拠点である荒川沖駅・神立駅の再開発により荒川沖駅‐土浦駅‐神立駅の南北ラインを強化すると同時に,交通アクセスの向上に取り組み,つくば市など東西との連携強化によって地域一体となった発展を図る。
<中心市街地活性化事業>
・ 駅東口への市役所移転とそれに伴う業務施設の集積
・ 霞ヶ浦湖岸公園整備
・ 駅西口商業地区(モール505など)の再活性化
・ 亀城公園再整備に伴う歴史的遺産の保護
・西口と東口の橋渡しともいうべき土浦駅北口の建設
3) 工業
工業計画は,主に土浦市北部を中心に進めていく。まず,土浦・千代田工業団地に続く工業団地として建設されたテクノパーク土浦北への優良企業の積極的な誘致を促進していく。また,土浦市北部地域の千代田町・新治村との連携を促進し、工業地域のの広域開発を図る。
4) 観光
土浦市の観光としては,土浦駅東口から徒歩数分の距離に日本で2番目の大きさを誇る湖・霞ヶ浦があり,西口にも亀城公園をはじめとする歴史的な建造物が多く残されている。また,上高津貝塚など数多くの自然的・歴史的な遺跡などが残されており,観光的にたいへん恵まれた地域であるといえる。
・霞ヶ浦
霞ヶ浦観光計画としては,まず老朽化した川口運動公園をみどり豊かな湖岸公園をして再生する。また,現在,風車やネイチャーセンター・水生植物園など多くの観光スポットを持つ霞ヶ浦総合公園の再整備,それに伴う霞ヶ浦湖岸道の整備を行う。さらに,霞ヶ浦遊覧船の運行整備や,現在運行が停止されている土浦‐潮来線の復活などを計画する。
第3節 生活環境
○ひと(human)の受け皿となる生活環境の整備
1) 豊かな自然環境の保全
土浦市の自然環境の代表としてまず語られるのは,霞ヶ浦である。しかし,その霞ヶ浦の水質は,都市化の進展に伴う生活排水・産業排水の増加による生態系の自然浄化作用低下が原因で,年々その汚濁度を増している。また,生活の都市化により,霞ヶ浦とのふれあいが希薄になったため,市民の水質に対する意識が低下していることも汚濁進行の一因といえる。
そこで土浦市では,以下のような4つの霞ヶ浦浄化計画を掲げ水質改善の促進を図る。
<霞ヶ浦浄化計画>
@ 市民の霞ヶ浦水質に対する意識向上化
霞ヶ浦を臨む土浦駅東口への市役所移転,それに伴う川口運動公園の親水公園化,そして霞ヶ浦湖岸の歩道整備などにより市民が霞ヶ浦と接する機会を増やすことで,霞ヶ浦の水質汚濁問題に関心を持ってもらうよう促す。
A 家庭排水対策の強化
水質汚濁問題への意識を高めるだけでなく,実際に市民が水質向上運動に参加できるよう,粉せっけん使用の推進・食用廃油回収事業の拡大など,日常生活の中で行える有効な水質改善事業の情報を提供していく。
B 工業・農業排水規制の強化
現在,工場・事業場排水に関しては条例で厳しく規制されているが,小規模な未規制事業場や,農業排水などの規制を強化し,同時に処理施設の整備促進を図る。
C 下水道整備事業の推進
汚濁負荷削減に最も重要な公共下水道の整備を推進するとともに,土浦市の下水道普及率の向上に努める。
自然環境に関しては,霞ヶ浦のほかにも大池を中心とした宍塚周辺・貝塚を中心とした上高津周辺の豊かな自然も,ふくしむら建設計画と平行して保全を図っていく。
2) 安全な交通環境の提供
現代社会において,欠くことの出来ない重要な交通手段として自動車がある。土浦市の自動車の登録台数は年々増加傾向にあり,それに伴って下表のように交通事故発生件数も年々増加している。
また,土浦市の交通体系は,常磐自動車道をはじめ国道6号線・国道125号線・国道354号線の国道幹線道路に加え多くの主要地方道が走っており,これらの通過交通量も年々増加傾向にある。
こうした状況にあるにもかかわらず,交通災害共済制度加入者数は年々減少傾向にある。
このような状況を打破し安全な交通環境を提供するため,土浦市は交通安全教育や,交通安全施設の整備・充実を推進していく。また,交通災害共済制度の加入推進に努める。同時に,土浦駅前など中心市街地では自動車ではなく自転車の利用を推進する。そのために,自転車駐車場の整備や不法駐輪の規制などを強化し安全で円滑な駅前の交通を提供する。
年度 | 元 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
発生件数(件) | 760 | 804 | 886 | 1108 | 1234 | 1335 |
負傷者数(人) | 948 | 989 | 1099 | 1312 | 1444 | 1513 |
第4節 文化・教育
1)学校教育の充実
@個性を生かす教育内容の充実
変化する社会情勢に対応できるよう,基礎的・基本的な内容を重視しながら,個性を生かす学校教育を推進する.
A体育・健康教育の推進
生涯を通じて体育・スポーツに親しみ,健康な生活を送るための学校体育と健康教育を推進する.
B心身障害者の教育の推進
心身障害者への理解と認識を深めるとともに,就学指導の充実に努め,障害の状況に応じた適切な教育を推進する.
2)生涯教育の推進
@地域生涯学習推進体制の充実
市民の生涯に渡る学習活動を支援するために地域における生涯学習推進体制の充実を図る.
A生涯学習指導者の養成・施設の整備
市民の多様な学習ニーズに的確に対応できる指導者の養成を図るとともに,生涯学習を支援する拠点として,市立図書館や公民館などの生涯学習施設の整備に努める.
3)青少年の健全育成
@健全な青少年の育成
先見性と行動力を持った青少年を育成するため,教育機能の充実を図るとともに,青少年のための望ましい環境づくりを促進する.
A次代を担う青少年活動
青少年の団体活動やボランティア活動などの社会活動を積極的に支援し,社会情勢の変化に柔軟に対応し土浦市の次代を担う青少年を育成する.
4) スポーツ・レクリエーション活動の推進
@生涯スポーツ活動の推進
市民が気軽にスポーツを楽しむことができるよう,生涯スポーツ活動推進を促進するとともに,競技スポーツの充実のために各種スポーツ団体との連係をはかり,選手強化を推進する.
Aスポーツ・レクリエーション指導者の養成及び環境の整備
年齢や性別を問わず楽しめるニュースポーツやファミリースポーツの普及をはかるとともに,多様化するスポーツニーズに対応できる指導者を養成する.
B社会体育施設の整備
市民のスポーツ活動を促進するため,体育施設の充実をはかるとともに,自然環境を生かしたスポーツやレクリエーション活動のための施設整備を進める.
5) 芸術・文化活動の推進
@芸術・文化活動の推進
市民の文化活動の活発化を図るため,芸術に親しめる体制を充実していくとともに,指導者の育成を図る.
A文化財の保護と活用
土浦にある貴重な文化遺産を保護し伝承するために,文化財を積極的に公開し,市民の理解・認識をはかるとともに,調査体制の充実に努める.