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POLICY 03

体験宿泊観光

背景と課題

土浦市観光基本計画によると土浦市の課題として、観光都市として認知されづらいことやコロナ過に中止した年度を除き、土浦全国花火競技大会や土浦カレーフェスティバルなどのイベントに依存度が高いことが指摘されています。また滞在型観光地ではなく日帰り通過客が多いことが指摘されており、実際に土浦市の観光客数に占める宿泊者数の割合は7%前後で推移しています。加えて土浦市は観光のイベント依存度の高さや観光客の滞在行動が少ないために、市民の観光客を迎え入れる意識が十分に醸成されないことも課題として指摘されています。

土浦市観光動態

図1:土浦市観光動態

宿泊者数推移

図2:宿泊者数推移

図3から市内の宿泊施設は土浦駅前に集中して立地していることが読み取れます。観光資源密集地の中に宿泊施設が立地していることはなく、良くも悪くも住み分けが発生していると考えます。また土浦市の観光資源は駅前だけに集中しているわけではなく、リンリンロードとの接続性は良いとは言えません。

土浦市内の観光資源と宿泊施設、リンリンロードとの立地関係

図3:土浦市内の観光資源と宿泊施設、リンリンロードとの立地関係

土浦の観光をより高めていくために、先行的に宿泊機能を観光資源の近接地へ配置すること、土浦らしさを備えた宿泊空間と体験の一体的な創出を行うこと、市内各地の観光資源とリンリンロードとの接続性を向上することが不可欠であると考えます。 観光テーマ

図4:観光テーマ

そこで土浦市の歴史・文化・自然・食・サイクリングの資源を活かしながら、観光客数の増加だけでなく、宿泊者数の増加、市民の地域愛着を高めていくパッケージ型の体験宿泊型の観光を提案します。体験宿泊型観光のテーマは「プチ土浦マニア観光」とし、提案する宿泊型観光を通じて、観光客や市民が土浦市について理解・関心を深め、最終的に、“プチ”マニアになってもらうことを目指します。

施策内容

〇新治(山ノ荘)エリア

新治エリア観光イメージ

図5:新治エリア観光イメージ

新治地域には、自然だけでなく多くの神社仏閣があります。例えば、1300年以上の歴史をもつ日枝神社は古くから流鏑馬が伝えられてきたという歴史があります。山ノ荘地域に伝わる日枝神社流鏑馬祭は、村人に害をなした大猿を、小神野おかの従羅天と弓の達人・市川将監が退治したという伝説を儀式化したものです。物語性を持つ流鏑馬として全国的にも珍しく、現在も毎年4月に地域の重要な祭事として大切に受け継がれています。そこで既存の体験活動に加え、山ノ荘エリアに点在する神社仏閣をスタンプラリー形式で巡るハイキングコース体験を提案します。内容として参加者が地域に根付く歴史や信仰文化を辿り、そうした歴史の追体験が行えるようなツアーを目指します。 また6月には水辺にゲンジボタルが見られるため、「夜の生きもの教室」を行うほか、人工の光が少ない環境を活かし、「夜の星空観察教室」を実施するなど、自然体験もあわせて提供します。 これらの取り組みにより、自然景観を楽しむだけのグランピングとは異なり、自然・歴史・文化を学びながら滞在する、新治(山ノ荘)ならではの宿泊体験を創出することが期待できます。

〇旧城下町エリア

旧城下町エリア観光イメージ

図6:旧城下町エリア観光イメージ

土浦旧城下町には歴史的建築物が今なお多く残っています。土浦の教育者である沼尻墨僊は“天章堂”という私塾を琴平神社境内に開いたほか、天体観測の記録をとり、観測器具である渾天儀や大輿地球儀を作成するなど、土浦の教育に貢献したという功績が残っています。そのほか土浦は野田、銚子を含めた醤油の三大名醸地と呼ばれ醤油の生産が江戸時代から活発に行われてきたという歴史があることや、江戸時代、土浦では藺草の生産が真鍋から新治で活発に行われ、和蠟燭や行灯の材料として加工された灯芯は重宝されたという歴史があります。こうした歴史的背景を踏まえ、沼尻が作成した地球儀の模様をした提灯の作成体験やオリジナル醤油づくり、蝋燭の絵付体験を提案します。 これらの体験は、その場で完結するものではなく、街中散策のきっかけや、持ち帰った醤油や蝋燭を家庭でも楽しむことで、旅の記憶が日常へとつながり「帰った後にも土浦らしさを感じる体験」を提供します。

〇上高津貝塚エリア

上高津貝塚エリア観光イメージ

図7:上高津貝塚エリア観光イメージ

上高津貝塚とは縄文時代後期に形成された桜川沿岸に位置する貝塚で、汽水産のヤマトシジミが主な貝殻となっています。周辺には桜川があり、海に流れ込む桜川の河口に貝塚が位置していたことがわかります。上高津貝塚では完形性塩土器や大型炉が出土しており、1998年には史跡指定を受けています。他にもヤス状の刺突器や魚類の骨が出土しており、漁が活発に行われていたことが分かっています。ここではかつて貝塚で暮らしていた縄文人のように竪穴式住居で生活を体験するアクティビティを行うことを提案します。上高津貝塚には現在2棟の復元された竪穴式住居が存在しますが、それとは別に1棟の竪穴式住居を建設し、この1棟で宿泊付きの縄文時代生活体験を提供します。例えば、火起こしや黒曜石を用いた調理、焚火など、縄文時代後期の不便な暮らしを追体験することで、日常の「ゆたかさ」を再発見する空間を提供します。

〇サイクルロード整備事業

サイクリングロード延伸図

図8:サイクリングコース延伸図

既存のりんりんロードから、観光資源・サイクルサポートステーションを結ぶ新しいサイクリングロードを整備します。これにより市内の観光資源と自転車ネットワークの繋がりを強化し、回遊性向上を目指します。サイクルサポートステーションの中にはサイクリスト優待店も含まれています。また新規サイクリングルートを設置する場所は既存のサイクリングルートと市の方針、国のナショナルルート整備基準となる交通量を参考としています。

収支計算

本施策における概算費用と収支見込みは以下の通りです。

サイクリングコース整備費用

費用 約8,550万円
(内訳:新規設置距離 約18km、単価 4,750円/m)

体験型宿泊観光事業
費用 収入
初期費用:約8,957万円 売上:約2,628万円/年
ランニングコスト:
約1,587万円/年
年間利益:約1,041万円
約8年7か月後に黒字化目標

松本市のサイクリングロード整備費用を参考にサイクリングコース整備費用は約8,550万円、体験型宿泊観光事業は年間利益が約1,041万円となり、約8年7か月後に黒字化する試算です。

期待される効果

提案に共通するのは、観光客に対して「その場限りの体験」ではなく、「帰った後も記憶と行動が持続する体験」を提供する点であり、市民による主体的な地域の語り手の創出につながる構造を持っていることです。「プチ土浦マニア観光」というテーマのもと、点在する資源をパッケージ化し、宿泊を伴う体験として再編集することで、土浦市は「イベントのあるまち」から「語れる物語を持つまち」へと転換する可能性を持ちます。