背景Background
土浦市は、人口減少や高齢化、歳入減少に加えて中心市街地の衰退や医療介護サービスの低下など、様々な問題を抱えています。
このままでは、人々の交流が減少し「顔が見える関係性」が低下することや、賑わい不足による都市の活気の低下、財政の逼迫により行政や医療サービスの維持が困難になることが予想されます。

基本構想Basic Concept
土浦市が今後も持続していくためには、人々の交流機会を増やし、転出率を抑えながらも賑わいを創出していく必要があると考えます。そこで、本マスタープランでは土浦市の目指す将来都市像を以下の通り定義しました。
人々の交わりを生み出すことで、顔が見える関係性が広がり頼れる存在が増え、安心感が生まれることから住み続けられる都市が実現します。また、まちでの活動が増えればまちが賑わい、地域全体の盛り上がりに繋がると考えました。
達成条件Achievement Conditions
ここで、「住み続けられる都市」と「地域全体が盛り上がる」ことの条件を定義しました。30年後を想定した場合の条件の通りです。

以降では、人々が安心と賑わいを感じられ住み続けられる都市を目標に、人が集まることと、地域経済の活性化・医療の均一化・財政の安定化をそれぞれ掛け合わせた施策を提案します。
部門別構想Department Concepts
人口・財政Population・Finance
人口については、日本全体で少子高齢化・人口減少が見込まれる中で土浦市では20代から60代の流入が多い一方で流出も20代から60代が多いという特徴があります。その状況を踏まえて現在住んでいる人を大切にすることで流出人口を減少させ、現状維持を図っていくことを目指します。 具体的な数値目標として先の基本構想で述べたように現在5%となっている転出率を30年後に4%に低減させます。また、本市に働きに来る人や観光にくる人など土浦に関係がある人々の人口を増やすことで土浦市内の賑わいを創出していきます。
財政については、財源の減少が見込まれる中で業務や施設の効率化を図ることで不要な支出を減らし、財源の確保に努めます。具体的な目標として、現在は基金からの補填を含めることで歳入と歳出のバランスを保っていますが、30年後には基金に頼らず財政収支が赤字にならない状況を目指していきます。
中心市街地Central City Area
土浦駅周辺には亀城公園や中城通りの歴史的建築物、モール505、りんりんポートなどが存在しますが、それぞれが独立してしまっておりこれらを上手く繋ぐことができていません。そこで、相互の回遊性を向上させるとともに魅力的な街路を創出することで中心市街地の活性化を目指します。具体的には、多くの人が出歩く休日の中心市街地の昼間人口を現状の2.3万人から2.5万人へ向上させることを目指します。
世代間交流Intergenerational Exchange
土浦市ではコミュニティの衰退により、世代間での交流が分断され始めています。また、高齢者人口の増加が見込まれており、高齢者の持つパワーを上手く生かすことの重要性が高まってきます。そこで、若年層から高齢層まで多世代で交流できるような土浦市を目指すために世代間での交流を促し、交流のための場を創出します。
観光Sightseeing
現在の観光資源として土浦全国花火競技大会や霞ヶ浦りんりんロードなどが存在しますが、観光客数は土浦全国花火競技大会が大きな割合を占めているという現状です。しかし、花火大会は過去5年で3回が中止になっており不確定要素が大きいです。花火大会のようなイベントに頼りすぎず、他の観光資源でも観光客を誘致する必要があります。
そこで、霞ヶ浦りんりんロードにより人を呼び込むために霞ヶ浦りんりんロードへのアクセス性を強化するとともに、新しく開通するスマートICをはじめ、常磐道・圏央道、常磐線を利用する人が土浦に立ち寄りたくなる施策を実施していきます。
工業Industry
土浦市の製造品出荷額は6000億円で横ばいとなっており、土浦市内の工業団地区画はほぼ埋まっている状況です。常磐道や圏央道があり、物流の面で利点がある土浦においてはまだポテンシャルがあると考えるため、今後製造品出荷額を増加させることや新たな雇用を生み出すために新規工場の誘致を目指します。具体的には30年後に就業者数を2%増加させることを目指します。
医療Medical Care
現在土浦市では土浦協同病院をはじめ、多くの病院や診療所があります。しかし、これらが集中して立地している地域とあまり立地していない地域があり、地域間の格差が生じています。また、現在の訪問医療・介護は緊急性の高い案件において迅速に対応できるリソースがありますが、今後は医療・介護需要が増加していくことを見込むと訪問診療についても供給が不足してくることが考えられます。実際にヒアリングより現場からも訪問医療の需要が増えているとの声もあります。そこで、地域間にある医療格差を是正し、市全体でより充実した医療体制を目指すとともに今後特に需要増加が見込まれる訪問医療・介護について需要増に対応できる体制を整備していきます。具体的な数値としては、医療施設・診療体制の市民満足度現状の3.34から全項目最高数値である3.62に向上させることを目指します。
農業Agriculture
土浦市はれんこんの生産高が全国第1位です。また、そばの栽培が盛んです。こういった農業資源がある一方でその認知度は低いという現状があります。そこで、観光や商業と農業資源を絡めて土浦市内外での消費量を増やすことで農業を振興し、農業の活性化を目指します。
公共施設Public Facilities
土浦市は人口減が見込まれており、それに伴って人口動態も変化が見込まれています。現状の施設配置では効率的ではないものも出てくる可能性があります。また、土浦市の財政も悪化しています。そこで、持続可能な行政サービスを維持するために複合・集約化を進めて財政負担を軽減させるとともにより効率的な運用を目指します。
都市防災Urban Disaster Prevention
土浦市は近年大きな災害が起こっていないものの、桜川の氾濫による中心市街地の浸水や、土砂災害の危険性があります。特に中心市街地の浸水については実際に起こってしまった場合には大きな被害に見舞われることが想定されているので、災害対策は重要な項目です。実際に土浦市民満足度調査によると防災対策の重要性は全項目最高の4.48であり、市民のニーズとしても防災対策は高いです。しかし、被害危険性が高いとはいえ中心市街地を移転することは困難であり、現状ではハードでの対策に限りがあると考えます。そこで、各個人の防災意識に働きかけるなどソフト面の対策によって災害に強い土浦を目指します。