地区別構想
中央地区
若者活躍拠点×市街地活性
<現状>
中央地区では近年駅前の大型規模店舗が次々に撤退し、イオンモール土浦や阿見アウトレット、イーアスつくば等の大規模ショッピング施設の進出による影響を受けた、中心市街地の空洞化が問題となっている。また市民満足度調査においても、全55項目のうち「駅前開発などの中心市街地の整備」、「中心市街地のにぎわい対策」という項目の満足度は土浦市の20歳以上の住民で最下位となっている。駅の周辺には、全国で2番目の大きさを誇る霞ヶ浦や、MALL505、りんりんロードの拠点などの魅力的な資源が存在している。また、2017年にはアルカス土浦がオープンしており、中心市街地のにぎわい創出と住民の利便性向上が期待される。この効果を最大限に活かすためにも、中心市街地でより人が集まるような施策を提案することが必要である。そのような地区の特色を考慮すると、中央地区で解決すべき課題は、「中心市街地の賑わい喪失」と「観光資源が活かされていない」の2つが主に挙げられる。
<提案>
中心市街地の衰退やアルカス土浦の建設を経て、中心市街地の魅力を引き出す一体的な整備が必要であると考えた。中央地区には発展時代の土浦の面影を残す構造物が多く残る。
中でもMALL505と土浦高架道は、ほかの都市にはない特有のものであるため、これらを整備してつなげることで中心市街地の活性化を図る。
○土浦高架道改装 自転車専用レーン整備
私たちは土浦高架道の片側車線に自転車専用レーンを設置することを提案する。魅力的な市街地空間とし、土浦市の誇る新たなランドマークを生み出すとともに、市民に愛着の持てる空間とする。これにより、にぎわいを衰退している商業施設まで波及させる。


県道24号線と土浦高架道をつなぐ場所に新たな昇降口を設け、高架道上のバス停留所による歩道橋に自転車が上り下りできるようなスロープを設置し、MALL505やその他市内施設との連絡を図る。現在あるバス停のスペースを、休憩場などにしたり、高架道と県道24号との合流後つくば市への動線にしたりと、自転車専用レーンとしての機能だけでなく、駅利用者が気軽に立ち寄れたり、若年層の集客を目指したりと市内、市外の人が来たくなるような土浦市の魅力の場として整備を行う。

<費用>
設置費用 | 1.4億円 |
改修工費 | 4.38億円 |
総工事費 | 5.78億円 |
<効果>
車通勤者一人当たりのCO2排出量 | 3720.72t/年 |
高架道の片道におけるCO2排出量 | 1.60948t/年 |
○花火大会時の高架道開放と有料観覧席設置
自転車レーンを整備することに加え、土浦花火大会時に高架道の一部を歩行者天国とし、有料観覧席を設ける。

これにより、花火鑑賞スペースを14,400m²確保でき、そのうち5,000m²を観覧席とする。
1席あたり4m²(2m×2m)、価格を25,000円とすると、鑑賞席は1,250席、全席完売時には3,125万円の収益を得ることができる。

○ MALL505の改修
私たちはMALL505の3階部分、駅側半分を減築して2階建てにすることを提案する。MALL505の構造上、高架道路下の歩行空間に光が入りにくくなっており、昼間でも薄暗い印象が見て取れた。小学生が通学路として利用する姿も見られたが、市民の印象はあまり良いものではなく、「廃れている」や「薄暗くて一人で歩くのは不安」といった負のイメージばかりという現状がある。そこで減築を行うことで歩行者空間に光を取り込み、MALL505の薄暗いイメージを払拭する。また、外壁の塗装と内部の改修も行う。


○MALL505の空き店舗で「土浦夢市」を開催
MALL505の空き店舗を使って、起業希望者や芸術家を目指す人たちの夢を育てるために活用する。毎月第1土曜日に、作品を販売したり、1日起業体験のような形で店を開いたりして、夢を持つ人たちの支援をする。夢を育てる人と、それを応援する人の相互の関係を構築し、モール505の再興を狙う。

<費用>
減築費用 | 1億円 |
内装改修費用 | 0.91億円 |
外装改修費用 | 0.17億円 |
総工事費 | 2.08億円 |
<効果>
1.歩行空間の環境改善による歩行者の増加
2.土浦夢市の開催による商業活性と来訪者数増加
北部(おおつ野)地区
「福祉×空地利用」
<現状>
北部(おおつ野)地区は、土浦市の北の拠点である神立駅周辺を中心とした神立副都心を核としながら、土浦・千代田工業団地、土浦北工業団地などの工業団地、市内で最も新しい住宅地であるおおつ野地区など様々な面を持つ地区である。平成28年3月に土浦協同病院が移転し、今後成長のチャンスが見込まれると考えられるおおつ野地区について今回取り上げる。おおつの地区にある工業団地、おおつ野ヒルズは、JFE商事株式会社を事業者とした土地区画整理事業により開発されたまちで、商業・業務施設、都市公園を中核とした職住近接を目指す複合市街地である。この地域の特性としては大きく分けて2つ挙げられる。
1つ目はおおつ野ヒルズ内の住宅街に空地が多く散見されることである。空地の存在は景観の悪化につながるだけでなく、火事や不法投棄の温床となる可能性がある。また、治安の悪化を助長させる要因でもある。
2つ目は土浦協同病院という全国有数の医療機能を持つ総合病院があるにもかかわらずこれを活用したまちづくりがあまり行われていないことである。そのような地区の特色を考慮すると、北部地区で解決すべき課題は、「工業団地のさらなる成長のチャンスを逃している」「高齢者福祉の介護における担い手が少ない」の2つが主に挙げられる。
<提案>
新しく分譲を始めたおおつのヒルズだが、協同病院の設立と住宅地の開発が進み、残る分譲地区をどう利用するかは要解決課題といえる。
そこで、宅地となっておらず、いまだに空き区画として存在しているスペースにおいて提案をし、課題解決につなげる。
○ヒーリングガーデン
私たちは上記の課題を解決するために、宅地開発が進んでおらず空き地となっている空間を「ヒーリングガーデン」として暫定的に利用することを提案する。このヒーリングガーデンは地域住民の自主的な活動によって維持・管理するオープンスペースであり、土浦協同病院の入院患者のリハビリや知的障碍者の園芸療法としての利用を目的とするものである。地域住民と土浦協同病院に通う患者の交流によって、地域住民が福祉の担い手になることに加え、高齢者や患者自身が園芸療法に参加することで介護等の福祉の負担を軽減できるという効果が見込める。また、ある土地に恒常的に作るのではなく、今後宅地等に転換されるまでの間だけの暫定的な利用とする。

<費用>
土地整備費用 | 10万円 |
初期用具等備品費 | 8万円 |
土地借用料 | 15万円/月 |
<効果>
1.景観の改善によって町の安全性が高まる
2.地域住民が福祉の担い手になることで福祉従事者の人件費を削減できる。(例)介護士(月収15万円)の場合、一人 当たり約173,000円の削減が見込める。
3.園芸療法によって入院患者や高齢者の健康が促進され、社会保障費が削減できる。
新治地区
「多世代間交流×廃校活用」
<現状>
新治地域では特に高齢者の割合が多く中心市街地からも離れているため、新治地区3小学校統合の決定をはじめ、年々過疎化が進行している。それに伴って高齢者の数が増加し、新規就農者の不足も問題視されている。しかしながら高齢者の割合が増加してしまうことは一概に悪いこととは言えず、第4次土浦市生涯学習推進計画市民アンケートによると、『ボランティア・地域活動をしたい割合が最も高いのは60歳以上』という結果が出ていることからも地域貢献の場が新治地区にあることでリタイア層を中心とした新しい拠点の創出ができるといえるだろう。そのような地区の特色を考慮すると、新治地区で解決すべき課題は、「廃校などの公共施設の維持管理」と「農業の採算性の低さ」「新規就農者数の不足」「市民協働」の4つが主に挙げられる。
<提案>
課題を踏まえ、廃校を利用した多世代交流拠点を作り、地区の特色産業である農業にも焦点を当てる。
○あぐりパーク土浦
私たちは上記の課題を考えるうえで他世代間交流複合施設である「あぐりパーク土浦」を提案する。
あぐりパーク土浦とは、リタイア層を中心とし、新治地区にある旧斗利出小学校を活用した農業複合施設であり、使われていないストックを生かすため、校舎と校庭の双方を施設として活用したい。
提案内容のコンセプトは「農業に触れる」と「自然を感じる」と「土浦市民の交流の場」の3つである。
○農業体験コーナー
1つ目に関しては校庭の一部を農地として整備し、農業体験ができる場所を提供する。子連れの親子が我が子とともに農業体験をしながら農作物を収穫することで子供の環境教育や親子の触れ合いの場をもたらすと言えるだろう。
また、校舎内ではレンコンなどの土浦で収穫できる農作物を販売もしくは味わえるレストランなどを設けたい。
○グランピング施設
2つ目に関しては校庭をグランピング施設として整備することで、自然を感じながら快適に過ごせるキャンプ施設を提供する。旧斗利出小学校はりんりんロードから比較的近い位置に存在するため、複数人のサイクリストたちがリンリンロードや霞ケ浦を走行した後の終着点としてこのあぐりパーク土浦を訪れ、手ぶらでグランピングを楽しむことができ、土浦の広大な自然を満喫できるだろう。
○他世代間交流スペース
3つ目に関しては、校舎の空き教室を用いた多世代間交流の図れるスペースを提供することで幅広い世代で交流可能にする。特に旧斗利出小学校出身の人たちが思い入れのある教室をいくつか残し、それらを共用ラウンジという形でそのままの黒板や机を用いての現存や、グランピングだけではなく校舎内に泊まれる施設の整備を考えている。




<費用>
農地運営費 | 875万円 |
初期用具等備品費 | 880万円 |
改修工費 | 120万円 |
総工事費 | 1875万円 |
<便益>
市民協働による人件費削減 | 2580万円/年 |
グランピングによる収益 | 547.5万円/年 |
合計 | 3127.5万円 |
南部地区
「自転車×公共交通」
<現状>
南部地区は主に土浦市のベッドタウンとして位置づけられており、特に市内でも年少人口から高齢者まで幅広い年齢層が見受けられる。加えて比較的高齢者が多く存在している地域特性と車社会が加速していること、バスのような地域に根差した公共交通の不足からも、車を使用することのできない交通弱者への対応が疎かになっていると言えるだろう。
また、上記の現状は日々の買い物や土浦駅という中心地へのアクセスの粗悪さを露呈している。
そのような地区の特色を考慮すると、南部地区で解決すべき課題は、「自動車社会における交通弱者への配慮」と「南部地区における日常の買い物が不便であること」と「中心市街地へのアクセスの悪さ」の3つが主に挙げられる。
<提案>
課題を踏まえ、自転車を使った新しい公共交通の形を導入する。
○シクロポリタン
私たちは上記の課題を解決することを目的に、南部地区に中心地である土浦駅周辺部分を加えた範囲を活動範囲とした環境配慮型自転車タクシーである「シクロポリタン」の導入を提案する。騒音や公害もなく、時速約15kmで移動する小型のタクシーであるため、高齢者が日常生活において幾分自宅から離れたところにしかないスーパーや病院などに訪れる際にシクロポリタンを用いることでわざわざ遠いバス停等を経由することなくDoor-to-doorで目的地までたどり着けるメリットがある。また、シクロポリタンは公共交通という位置づけであり、ガソリン車の代わりに運用することで1kmあたり約223gのCO2排出を削減できる環境を考えた構造であるため今後行き着くと考えられる低炭素社会への貢献へと寄与するだろう。


<費用>
初期用具等備品費 | 1000万円 |
改修工費 | 120万円 |
総費用 | 1120万円 |
<効果>
CO2排出削減量 | 11.4t/年 |