4. 部門別構想
住民のアイスブレイクを目的に以下の部門別構想を定める。

○3rd Place 憩い・交流空間
・体制整備 サードプレイス維持のための体制政策
・平日空間 気軽に立ち寄れる空間作り
(中央地区&モール505編)
・週末空間 楽しく活き活きと過ごせる空間作り
(産業&観光編)
○移動手段
・交通政策 人々がアクセス・交流しやすい交通政策
5.部門別計画
5-1.体制整備 アイスブレイクのためのNPO
私たちは商店街・モール505の空きスペースの駐在者や運営者、また里山・霞ヶ浦の活用者として、NPO を活用する。NPOは地域に根付き、自発的に活動できるため、地域の社会的課題へ迅速&多角的な対策を行うことができる。
私たちは市民団体へのヒアリングからNPOの不透明性や人材不足、NPO間の連携不足が問題となり、人材育成機会の損失や市民活動の衰退、小規模な活動などの結果を導いていると考えた。

表1 つくば市と土浦市のNPO数
またつくば市と比較しNPO数が少ない現状も踏まえ(表1)、NPOを支援するNPOを設立する。NPO支援組織の役割を以下に示す。
【役割】
・人材育成
→ まちづくりリーダーを育成する。
・NPOマネジメントノウハウ提供・継続的支援
→ NPOの立ち上げ・継続をより容易にする。
・人材派遣・NPO間ネットワーク促進
→ 人手不足を解消し、イベント規模の拡大を目指す。
・行政や企業⇔NPOの相互理解の促進
→ より連携しやすい環境に
<参考事例> 認定NPO法人
茨城NPOセンター・コモンズ(水戸市)
茨城県唯一の中間支援NPOであり、役割としては
1.資源(人、モノ、カネ、情報)の仲介、
2.NPO間のネットワーク促進、
3.価値創出(政策提言、調査研究)
5-2.平日空間(モール505編) 市民活動でアイスブレイク
モール505は商店の他に事務所・倉庫として利用されているが図書館の建設予定地と近く、図書館との連携が可能であると考え、図書館と連携した文化的なサードプレイス空間を1,2階に提案する。
またステージや高架下の広場スペースなどイベント空間が整備されNPOが活動しやすい空間であることから3階には空き店舗対策として共同NPO事務所を入居させ、NPO協働を促進する。
・文化サードプレイスエリア
図書館と連携した文化サードプレイス空間として整備し、市民に活躍の場を提供する。

図3 文化サードプレイスの位置
1,2階のステージ前に入居している店舗を同階の空きスペースへ移動し、図書館に近いステージ前スペースを文化サークルスペースとする(図3)。
土浦市は公民館でのサークル活動が非常に盛んであり、そのニーズをモール505で取り込む。
・NPO共同事務所
前述のNPOを支援するNPOやその他のNPOが集積することで、NPO間の交流が期待でき、ノウハウや情報の共有、ネットワーク形成、NPO同士の協力が期待できる。
<参考事例>NPO共同事務所「びおとーぷ」(福岡市)
役割として1.活動の拠点、2.情報交換&交流、3.地域への関わりetc.を掲げて、活動している。
5-3.平日空間(中央地区編) 商店街でアイスブレイク
中央地区の特徴として、亀城公園と駅を繋ぐエリアであり、市役所移転で周辺に人が増えることと、 人が多い中心市街地で高齢化率が高い地域であることが挙げられる(図4)。

図4 土浦市中心部の高齢化率
私たちはこの地区の亀城公園側を高齢者のサードプレイスとして地域コミュニティ商店街を、駅側のアーケード街を働く人と訪れる人のサードプレイスとして飲食店を立地させる。
・飲食店エリア
飲食店を落ち着いた雰囲気の景観へ変更し、働く人と訪れる人のサードプレイスとする(図5)。
・地域コミュニティ商店街
地域と関わり、地域に生かされる商店街とする。
商店街が警察などと協力し定期的にお年寄への訪問や声掛けを行う高齢者見守りネットワーク(東京都目黒区, 大田区などで実施)やデイケア・サービスを実施し、 クリニックを配置することにより、老人と商店街の交流を実現する。

図5 中央地区アーケード
修景前 修景後
5-4.休日空間(産業編) 生産者と市民のアイスブレイク
私たちは土浦市の農家や商業者が住民と交流できる空間が整備されていないことと、市役所移転により休日土浦駅前の賑わいが喪失することを考え、住民と産業の交流を目指し、月1回土浦駅前でマーケットを開催する。
マーケットで住民と産業が積極的に交流することで新規アイデアが発掘され、単なるマーケット以上の影響が期待できる(図6)。
<参考事例>つくいち
月1回つくば駅前公園で開催されている「つくいち」は『こだわりの商品を自分たちの手で』というコンセプトを掲げ、[つくいっぴん]というつくいち限定商品の販売などを行っている。

図6 マーケットイメージ
つくいちの共催者へのヒアリングによると、「コンセプトにあった店舗選び、空間作りを行っている」、「店舗の質が評価されている。」などの声が聞かれ、持続的な開催にはプロジェクトデザインをする必要性があると私たちは考えた。
マーケットコンセプト
「土浦アイスブレイクマーケット」
出店条件
「土浦で」 土浦のモノを使っている店
「打ち解け」 来場者や他店とコミュニケーションを取れる店
「生み出す」 新規性のある商品、企画を提供できる店
5-5.週末空間(霞ヶ浦編)
私たちは市民からの整備要望の高い霞ヶ浦で、特に利用者が少ない土浦港をより住民が活用しやすい憩い・交流空間へ整備する(図7)。

図7 主な観光・レクリエーション施設の入り込み数
霞ヶ浦でのヨット教室などを行うNPO土浦スポーツ健康クラブへのヒアリングから、土浦市の現状として活動場所の不足や、子供が遊び親子で触れ合う空間が不足しているという課題が挙げられた。
そこで私たちは「見るだけでなく、住民が何か『する』」ことをコンセプトにNPOによる空間活用のために空間整備(図8)と行政主導のNPOの霞ヶ浦利用推進を行う。
霞ヶ浦をより利用しやすい空間とするため、現在土浦市が進めている整備と合わせ、回遊性の高い歩道の整備や温浴施設の設置、オープンスペースの確保など自由度の高い空間にする。
さらにNPOに霞ヶ浦にてスポーツ教室やレジャーを開催することで住民訪れる目的を霞ヶ浦に作る。


図8 霞ヶ浦の空間整備
空間整備後には動物の放牧(例えばポニーの放牧)(図9)を行い、親子で訪れる空間を創出したり、NPOのスポーツ・レジャー教室を開催することでより良い交流空間が生まれる。

図9 動物の放牧イメージ図
5-6.交通政策

私たちは、公共交通の衰退が図10のような負の連鎖に陥っていると考え、「自分たちで使って自分たちで残す」公共交通を実現する。
住民の公共交通利便性を向上させるため、サイクル&ライドによるバス停カバー人口の増加を図り、さらに公共交通利用の手本として市役所職員の通勤に公共交通を利用することを提案する。
・サイクル&ライド
公共交通を使う場合を想定し、現状とサイクル&ライドを行った場合でのカバー人口の差を算出した。(図11~12)

図11 人口メッシュデータとバス停

図12 サイクル&ライド
実施前 実施後
分析対象:通勤に使用可能と考えられる朝夕30分以上の頻度でバスが停車するバス停,鉄道駅
サイクル&ライド拠点:人口密度が高い地域に7箇所設定
算出方法
カバー人口=Σ(圏域のメッシュ含有面積/メッシュ面積 ×メッシュ人口)
各種圏域(参考:土浦市地域公共交通総合連携計画)
徒歩移動時のバス停圏域:300m
自転車移動時の駅圏域:2000m
自転車移動時のバス停圏域:1000m
カバー人口
サイクル&ライドを行わない場合:94578人
サイクル&ライドを行う場合:117286人
サイクル&ライドによりカバー人口が66%から82%に上昇し、住民の利便性が向上することがわかった。
・市役所職員の公共交通通勤
私たちは、公共交通の利用者減少が続いていることと、市役所移転により道路混雑や駐車場コストが発生することから、市役所職員が市民に手本として公共交通を使って通勤することを提案する。
職員の公共交通利用により、公共交通事業者は5275万円以上の増収(内バス事業者4315万円)が見込まれ、バス会社との協議によるバス増発が期待される(詳細は定期券詳細参照)。
また公共交通通勤を実施することにより、市役所の駅前移転で予想される道路混雑が解消され、環境負荷も軽減される(図13)。
<定期券詳細>
本庁者に通勤する職員がパーク&ライドやサイクル&ライドにより全員公共交通を使い通勤することを仮定し、以下の条件で算定。
・計算式
運賃収入=(各市町村に住む職員の公共交通からの
勤者数×片道運賃)×往復×20日×12ヶ月
職員住所,各市町村に住む職員の公共交通への
・転換数
市職員の住所と現通勤手段から算出
(出典:3班実施アンケート)
・片道運賃
土浦市内:160円(路線バス初乗り運賃)
つくば市:510円(つくばセンター⇔土浦駅間バス運賃)
かすみがうら市:190円(神立駅⇔土浦駅間鉄道運賃)
牛久市:230円(牛久駅⇔土浦駅間鉄道運賃)
阿見町:190円(荒川沖駅⇔土浦駅間鉄道運賃)
石岡市:320円(石岡駅⇔土浦駅間鉄道運賃)

図13 JICA-STRADEによる駅前混雑分析