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   提案
  これまでに述べたように、広いオープンスペースに加え、表出の緑もある街路景観が、より好ましいことが分かりました。しかしながら、表出の緑は住民が自らの意思で自発的に接道部に出し、管理も住民自ら行っています。このような住民の自発性を、都市計画により促していくのは大変困難です。私達はあえて、このような住民の自発性を誘発するための新たなシステムを提案することにしました。


グリーン・シェア・システム(Green Share System)


[システムの概要]
  グリーン・シェア・システムは、「庭の模様替え」をコンセプトに、緑をコミュニティーで共有するためのシステムです。システムな概要を説明していきます。まず、住宅地において、鉢やポット、プランター、コンテナなどに植えられた草花や低木などといった移動可能な緑を一箇所にストックしておきます。住民はそこから、自由に好きな花や緑を選び、持ち帰り、自宅のセミパブリック空間に飾り付けをします。その際、花や緑は持ち帰り過ぎてもいけないが、持ち帰らな過ぎてもいけません。一定の持ち出し量の幅をルールとして設定することにします。その家の住民も、通りがかりの人も楽しめるようにするためです。住民は、好きなときに好きな花や緑を持ち帰り、返すことができます。また、隣家と花や緑を共有することも可能であり、そこから近隣コミュニティーが生まれることも期待されます。(図-8)


[ナーサリーの確保]
  緑をストックさせておく場として、私たちは広場型スペースを考えました。このスペースを「ナーサリー」と名付けることにします。ナーサリーとは英語で「育てる場所」を表す単語です。緑が育つ場所、人々のつながりが育つ場所という意味を含めました。ナーサリーは、住宅地コミュニティーのシンボル的存在、住民が集まる憩いの場となることも期待されます。

  龍ヶ崎ニュータウンの新世紀邑、ビレッジつくば竹園等といった住宅地においては、住民の共有スペースとして「コモン広場」なるものが確保されています。(写真-8、9)私達は以上の住宅地に関してはこの空間をナーサリーとすることを提案します。


写真-8. 新世紀邑のコモン広場


写真-9. ビレッジつくば竹園のコモン広場

  また、コモン広場のような空間が無い住宅地に関しては、空き地や公園、または有志で個人の庭を借り、ナーサリーをつくることを提案します。

[ナーサリーの維持・管理]
  ナーサリー(図-9)の管理・維持は、行政からの補助金、コミュニティー内からの管理費をもとに行います。ここで、大切なのは管理を誰が行うかということです。前で述べたように、初めから市や業者に任せるのではなく、住民が行うということに意味があります。ここで1つの案として、管理人を当番制にするということを提案します。定期集会を開き、誰が管理・維持を担当するか、季節による住宅地の緑や花のコンセプトはどうするのかなど、全ての決定を住民に委ねます。

図-9 ナーサリーのイメージ図


[問題点]
  この提案には、問題として、住民の中にはグリーン・シェア・システムに参加したがらない人が出てくるのではないかという事が考えられます。この問題に対しての解決策をいくつか挙げてみます。まず、新規の住宅地に関しては、住む前に住民によるワークショップ等を開いて、積極的な取り組みを促すことができます。また、このシステムに参加することを前提として住民の入居を行えばよいでしょう。そして、既存の住宅地に関しては、ナーサリーの規模を小さくすることが考えられます。低木や大きなプランターは収容せず、鉢植えや小さなプランターを数も絞って置くことにします。その際、壁掛け用や極小スペース用など、表出の緑を置くスペースがない住民に対してのケアも必要でしょう。
  すべての住民に対して、このシステムを強要するのではなく、まずはこのシステムに積極的な住民から始めてもらい、徐々に輪が広がっていく事を期待します。

[今後の展開]
  グリーン・シェア・システムの楽しさは、自由に庭を模様替えできるところや、それを通し近隣の住民とのふれあいを楽しむところにあります。季節ごとの花や緑の提供なども考えられます。また、ナーサリー自体を美しく飾ることにより、ナーサリーをより親しみのある空間にすることができ、住民どうしのコミュニティーも養うことができます。その他にも、住宅地を代表するような花、緑を積極的にその住宅地内に配ることにより、住宅地の共用感を生み出す事もできるかもしれません。このシステムは、応用次第で様々な効果を生み出すことができると考えられます。

  以上が私たちの提案するグリーン・シェア・システムです(写真-10、11)。このシステムが、住民の自主性の向上に貢献できるのではないかと考え,これを私たちの提案とします。


写真-10 システム試行前


写真-11 システム試行後

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