3.結論・考察


 これまでのことをまとめていくと、以下の通りになる。

1)市民が参加していないシステムにおいて


保全団体側の視点から

保全団体のGive&Takeは下図13で表されるようになる。地権者との間では、土地の貸与を得るためにPRをし,行政との間では、保全団体の認可・管理負担の軽減を得るために陳情している。形的にはGive&Takeが成り立っているように思われるが, 里山を保全していくための管理費用を得るには、これらの関係だけでは、行政からの支援だけでは限界があり、実際には負担の見返りが十分ではないということができる。

図13:保全団体のGive&Take(市民抜き)

行政側の視点から

行政のGive&Takeは下図14の通りになる。図から分かるように、行政は地権者に税の優遇、保全団体に団体の認可・管理負担の軽減をし、また、里山には法的に保全措置をを加える、といったGiveだけで、享受するものが一つもなく、負担がとても 重い状態にある。このように、市民が参加していないシステムを見てみると、Give&Takeがうまくいってないことが分かり、システム的にはとても弱いものである。

図14:行政のGive&Take(市民抜き)

そこで次に、このシステムをより強度なものにしていくために、市民が参加した里山管理システムを考えていくことにする。 

2)市民が参加しているシステムにおいて


保全団体側の視点から

保全団体のGive&Takeは下図15の通りである。市民に活動内容などをPRすることができ、そうすることで新たな団体への加入者や、労力・費用の提供が期待され管理費用の面において、保全団体の負担が軽減されるといえる。また、活動内容を世間に 知ってもらうことによって、保全団体そのものが、社会的に認められることも考えられる。ここで、市民の視点でみると、保全団体へ、労力・費用の負担を提供することで、里山の管理がより十分になり、里山の魅力が増し、市民がより里山を 楽しむことができる。

図15:保全団体のGive&Take(市民参加)

行政側の視点から

行政のGive&Takeは下図16の通りである。市民へ里山の存在や、市のそれに対する保全方策を宣伝することで、“緑の多い都市”としてPRすることができる。そうすることで、市のイメージアップにつながり、市民の増加や、それに伴う税金の増加が期待でき、 里山管理にあたる費用は増すことが考えられる。行政にとっては、ここで初めてGive&Takeが成立したことがいえる。また、ここでも市民の視点でみると行政に支援することで、法的保全措置で より多くの里山が保全・管理され、更に里山を楽しむことができる。

図16:行政のGive&Take(市民参加)