第4章 実験
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4-1 実験1
4.1.1 ごみ撤去作業
対象場所:土木研究所裏(つくば市内篠崎地区)、常磐道側道(つくば市内梶内地区)
…つくば市内の不法投棄の観察を行った上で、ごみの種類と場所の性質
の異なった2箇所(土木研究所裏・常磐道即道)を選んだ。
実施期間:5月17日〜6月7日<3週間>
4.1.2 組成分析
目的:不法投棄におけるごみの質と量を知る。
方法:ごみを、燃えるごみ、燃えないごみ、カン、ビン、ペットボトル、古紙、粗大ごみ、危険物
の8分別で収集し、ばねばかりで計量を行う。またその結果を表にして表す。
結果:土木研究所裏と常磐道側道においてごみ撤去を行った結果、幾つかの特徴が見られ
た。
・常磐道側道の方が土木研究所裏に比べ全般的にごみの量が多い
・常磐道側道において古紙の多さが顕著である。
…容積比と比べて重量比における古紙の比率が大きい
→他のごみに比べ、古紙類は容積当たりの重量が大きい
・ 常磐道側道においては古紙の割合がもっとも大きく、一方土木研究所裏
においては不燃物の割合がもっとも大きい。
表4-1-2-1.容積によるごみの分類
分類 土木研裏容積(L) 常磐道側道容積(L)
分類1(燃えるごみ) 550 1350
分類2(燃えないごみ) 180 260
分類3(空き缶) 103 186
分類4(ビン) 70 100
分類5(ペットボトル) 80 110
分類6(古紙) 40 505
分類7(粗大ごみ) 0 0
分類8(危険物) 4 0
合計 1027 2511
表4-1-2-2.重量によるごみの分類
分類 土木研裏重量(kg) 常磐道側道重量(kg)
分類1(燃えるごみ) 37.65 200.4
分類2(燃えないごみ) 26.7 39.9
分類3(空き缶) 10.6 16.5
分類4(ビン) 16.5 21.6
分類5(ペットボトル) 1.6 4.3
分類6(古紙) 6 172.6
分類7(粗大ごみ) 0 0
分類8(危険物) 0.6 0
合計 99.65 455.3
図4-1-2-1.容積によるごみの分類
図4-1-2-2.重量によるごみの分類
図4-1-2-3.割合からみた容積によるごみの分類
図4-1-2-4.割合からみた重量によるごみの分類
考察:以上のような結果と、またごみ撤去を行った際の観察から、考察を行った。
@ 土木研究所裏…ごみの内容物は、建築廃材や塗料缶が目立ち、見積書などもあっ
た。
このことから建築関係の業者が関わっていると推測される。区長さ
んによると、ここは以前から不法投棄が多い場所で、最近では昨年
の11月に市役所の人と共同で片づけたが、また増加してしまった
とのことである。これより、この場所の不法投棄は習慣的に行われ
ていると思われる。
A 常磐道側道 …ごみの内容は、主に家庭から出されるものが中心であった。中には
新聞や賞味期限が記されているものがあり、その日付を見ると最近
捨てられていると思われるごみが多かった。また、雑誌などの刊行
物が多く、しかもそれらは主に若者向けのものであった。このこと
から、付近に通学する学生が定期的にごみを捨てているものと推測
される。さらに、プライバシーに関わる通帳や保険証も捨ててあり、
家財道具が雑然と捨ててあるところを見ると、推測ではあるが夜逃
げなどのやむをえない状況に陥った人々が関わっていると思われ
る。
また、結果から2箇所の不法投棄の種類を予想した。
@土木研究所裏…ポイ捨てごみと産業廃棄物が多く見られた
→ 主に業者による不法投棄ではないか
A常磐道側道 … 家電や引っ越しのごみが目立ち、またポイ捨てごみも多
く見られた
→ 個人による不法投棄ではないか
4.1.3 ごみ撤去後の経過観察
目的:ごみ撤去は直接不法投棄につながるのか、検証を行う。
方法:毎日、ごみ撤去を行った現場へ行き、観察を行う。変化があれば、写真に記録
する。
結果:土木研究所裏、常磐道側道の両箇所とも、新たな不法投棄は確認されなかっ
た。
考察:ごみ撤去は、直接的に不法投棄防止の効果があったと言える。
4-2 実験2
実験2.不法投棄のおとり実験
対象場所:@土木研究所裏、A常磐道側道
実施日時:6月8日(金)〜15日(金)(8日間)
方 法:6月8日にごみの実験投棄を行い、その後の経過を観察し、実験1と同様に廃棄物の収集、組成分析を
行い表にする。
計量結果:実験結果の組成分析の結果、土木研究所裏はほとんど変化が見られなかったので常磐道側道のごみの量
の変化を表、図に表わした。
表1 常磐道側道のごみの増加量(重量、容積)
以下の二つのグラフで、ごみの増加量を重量、容積別に割合で示した。
図1 常磐道側道のごみの増加量の割合(重量)
図2 常磐道側道のごみの増加量の割合(容積)
次に、以下の二つでごみの増加量の実際の数値をグラフにした。
図3 常磐道側道のごみの増加量(重量)
図4 常磐道側道のごみの増加量(容積)
土木研究所裏には、主だった変化は見られなかったが、常磐道側道の現場において、実験投棄後3日目
に、ごみの大きな増加が観察された。
増加の見られなかった土木研究所裏、わずかに弁当のプラスチック容器1個が増えたが、全体として増
加したとは言えなかった。
増加の見られた常磐道側道の現場では、正確な計量を行えるもので8kg強、鏡台などの大きなものも合
わせれば恐らく30kgを上回るであろうごみが新たに不法投棄された。
考 察: 常磐道側道の現場では容器や包装物が多い。近年、日本の政府が行った施策として、
・1991年4月:資源リサイクル法
・1997年4月:ガラス、ペットボトルに限定した容器・包装リサイクル法
・2000年4月:あらゆるプラ容器、その他の紙類も対象にした上法の完全実施
等があるが、それらの施策も、こうしたポイ捨てなどの不法投棄には効果はあがっているとは思えず、新たな法制度
の模索が必要であると考えられる。
結果は、常磐道側道で増加、土木研究所裏では変化無しということになったが土木研究所裏の不法投棄が増えなかっ
たことの原因には、実験1でも述べたように、不法投棄の主体が建築業者などであると考えられることから、一般の
家庭ごみの多かった常磐道側道とは、投棄のなされる周期に差があることが考えられる。
これまでに行った実験・経過観察により、
・実験1では、ごみのない状態では不法投棄が行われにくいこと
・実験2の、特に常磐道側道の結果から、初めから汚れている場所には、それに続く不法投棄を誘発しや
すいことが確かめられた。
このことで、不法投棄のなされやすい場所も、きれいに保つことで投棄を予防できるということが確か
められた。
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