第3章 調査
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3-1 現場の周辺調査
1、フィールドワークの実施
目的
不法投棄が行われている現場周辺の地理的特性を知るため。
方法
実際に現場周辺を散策して現場周辺の地図を用意し、また、つくば市役所から頂いたごみ集積所の地図を参照して、
現場周辺の土地利用図を作成した。
対象地区
○市内篠崎地区にある土木研究所裏
○市内梶内地区にある常磐道側道
土地利用図からの考察
これが篠崎地区における周辺土地利用図である。
図1 土木研究所裏における土地利用図
不法投棄されている現場を中心に赤色の同心円を描いた。また、赤い四角はごみ集積所を表している。
この図を見てわかるように、不法投棄現場は集落やごみ集積所から
かなり離れていることがわかる。
また、これが、常磐道側道の不法投棄現場における周辺土地利用図である。
図2 常磐道側道における土地利用図
この図を見てもわかるように、やはり、不法投棄現場は集落から離れていることが言える。また、梶内地区内にある
常磐道側道において我々が実験を行った場所と常磐道を挟んで反対側にある道路は割と交通量が多く、頻繁に車が行
き交っていた。
フィールドワークを通しての結論
このフィールドワークを通して、不法投棄現場の特徴は、民家・集落まで遠い、近くにごみ集積所がない、車で乗り
付け可能だが、交通量は少ない、公共的施設・幹線道路の陰に存在する、ということが判明した。よって、車で来る
ことが容易なわりには人目につきにくいので、粗大ごみなどの大型のごみや産業廃棄物なども運び込むことが可能と
なり、不法投棄が発生したものと考えられる。
3-2 不法投棄と曜日の関係
不法投棄はいつ起こりやすいのかを調べるために不法投棄検挙に関する新聞記事を集めた。集めた記事は3つである
が、すべて週末に不法投棄が行われていることがわかった。このように週末に起きやすい理由として以下のことが考え
られる。
不法投棄は労力がいる場合もあるので、男性の仕事が休みである週末に集中して発生すると考えられる。このことは
実験2の常磐道における結果でも示されている(月曜の観察で増加が確認されたので日曜日に不法投棄が行われたと考
えられる)。
60代男性が報賞金第1号/桐生
ごみの不法投棄を目撃、通報した人に報賞金を贈る制度を設けた桐生市は、同市内の60歳代の男性に報賞金1万円
を7月4日に贈ることを決めた。今年4月に施行した「桐生市不法投棄防止条例」に基づく報賞金第1号。同市の話
では、男性は今月10日午後5時半ごろ、同市菱町の山林くぼ地に軽トラックで乗り付け、板ガラス約10キログラ
ムを捨てている男を目撃、すぐ市役所に通報した。男性がメモした車のナンバーから身元が分かり、翌日、係員が自
宅を訪ねてただしたところ、 認めた。また約1か月前にも現場近くの水路に板ガラスを捨てたことを認め、いずれ
も13日に 片づけたという。同市は清掃管理事務所に4月、「不法投棄防止係」を新設。市内の要注意場所をパト
ロールを強化する一方、「ごみがごみを呼ばないように」(村上俊幸市民部長)、不審なごみは少量のうちに 清掃
している。これまでに、約80件の情報が寄せられるなど、市民の目も厳しくなっているという。
(平成13年6月29日火曜日 朝日新聞より)
不法投棄を初摘発 家電リサイクル法 40歳男を書類送検へ
不用になった洗濯機を市道に不法投棄したとして愛知県警生活経済課と中村署は10日までに名古屋市東区の男性タク
シー運転手(40)を廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで取り調べた。近く名古屋地検に書類送検する。
洗濯機や冷蔵庫など家電製品のリサイクル費を消費者が負担する家電リサイクル法が1日に施行されて以来、同法の対
象製品の不法投棄摘発は全国で初めてという。
調べによると、運転手は七日午後五時二十分ごろ、同市中村区稲葉地町の市道に洗濯機一台を捨てた疑い。転職して独
身寮に移り洗濯機が不要になった。「処分にお金がかかるのがいやだった。」と話しているという。
家電リサイクル法には不法投棄に関する規定はなく、廃棄物処理法が適用される可能性があり、名古屋市環境局事業部
作業課によると「名古屋市内で昨年、塗装缶などを川の堤防に捨てた塗装業者が四十万円、紙屑などを河原に捨てた風俗
業者が十万円の罰金を受けた」という。
(平成13年4月10日火曜 日産経新聞より)
3-3 他地域の対策例
不法投棄の状況と行政の対策について
1、 茨城県の状況と対策
(1)茨城県の不法投棄の現状
特徴
? 首都圏に近い県南、県西地区での発生件数が多い。また、県南、県西地区においては県外で発生した廃棄物の不法投棄が85%を占める。
? 不法廃棄物は建築廃材が多く、解体作業から排出された廃棄物が多い。
? 不法廃棄場所としては、山林原野等が65%と最も多くを占めている。
(2)茨城県における不法投棄対策(平成10年度)
? 廃棄物対策課に不法投棄対策班の設置(併任警察官2名、職員3名)
? 不法投棄監視班の設置(県内4つの地方事務所があり、職員4名、監視指導員3名)
? フリーダイアル不法投棄110番(いつもみんなでむらなくみはれ)
? 民間警備会社への監視委託(不法投棄は休日、夜間に行われることが多いため、監視対策の整っていない時間帯での監視業務を補うため、年間190日間の監視を委託)
? 不法廃棄防止警告大型看板の設置(県境付近に4カ所、高さ7b、幅2b)
? WASTEクリーンアップ茨城大作戦(平成10年4月より6ヶ間)
その効果
6ヶ月間で昨年同期の約3倍である491件の不法投棄110番通報
昨年同期の約2倍以上の364件(野焼き含む)を新規発見
24事件、72件、86名(内逮捕者27名)の検挙
? ボランティア監視員制度
県内各地に300名のボランティア監視員が活動。監視活動に必要な7つ道具を配布。
? 車両一斉検査(県境 )
(3)全国の不法廃棄防止取り組み事例(11年度)
? 監視員設置による監視活動 33都道府県
(ヘリや自動車によるパトロール、監視業務の委託、市町村の監視制度の補助・促進、ボランティア監視員の設置、モニター設置)
? キャンペーンの実施 4都道府県
? 不法投棄110番の設置 4都道府県
? 立ち入り検査の実施
? チラシ、ポスター、ステッカー、パンフレット、看板の作成
? 連絡協議会、講習会、研修会の実施
? 郵便局との提携(郵便配達員が不法投棄を発見したら通報してもらう)
2、 ポイ捨てに対する対策
ポイ捨て等のゴミの散乱防止政策はおもに4つのタイプがある。
(1) 市民意識に着目し、キャンペーン活動の実施や美化推進委員の設置等、普及啓発活動によりモラルやマナーの向上をはかる事例。これは最も一般的な手法で全国約3200の市長村が何らかの対策を実施している。
(2) 乱対象物(特に空き缶)に着目し、条例等で自動販売機の設置業者に対し販売機の届け出義務や容器の回収義務を規定し事業者処理責任の強化を図る事例
京都市「空き缶条例」
(3) ポイ捨て行為そのものに着目し、条例に禁止規定や罰則規定を置き、ポイ捨て行為の抑止効果を期待する事例。
平成4年に福岡県北野市で初めて制定され、現在70余りの市町村が施行している。これまでの、一斉清掃などの即時的な対策が対症療法にすぎないという反省に立ち、ゴミの散乱をもとから絶とうとする試みである。川崎市
(4)上記すべてに着目して総合的に取り組む事例
和歌山市「ビューティフル推進事業」
参考資料 平成11年度 茨城環境白書 pp16~pp27
都市清掃 月号 pp ~pp
考察
不法投棄に対する行政の取り組みは年々活発になってきているものの、まだ不法投棄対策をおこなっていない都道府県もあり、
市原市の監視カメラに関するヒアリングと監視カメラ設置場所の見学
ごみの不法投棄を防ぐためには、ごみを出さないことが得になる制度を作る方法や、不法投棄が良く起こる場所
の管理を徹底することなどがある。ここではその他の方法として、ごみの不法投棄をされる場所に監視カメラの有用
性について考える。
ごみの不法投棄の対策に監視カメラを導入した市がいくつかある。我々はfax,見学によって監視カメラが実際に
効果を上げているかどうかを確かめることにした。監視カメラを導入した市として、千葉県市原市、千葉県東金市、
千葉県千葉市若葉区緑区、岐阜県岐阜市が挙げられる。市原市には見学、他の町にはfaxで問い合わせて導入後どう
なったかということを聞いた。Faxでの市原市以外の回答が市原市と殆ど内容が同じだったためここでは市原市につ
いて書く。
3-3-1 目的
監視カメラの導入が不法投棄の減少に役立っているのかを導入している自治体に問い合わせ目で見て確かめる。
3-3-2 Faxの問い合わせ内容
1 監視カメラを用いた対策はいつから行われているのか
2 監視カメラを設置したきっかけは何か
3 監視カメラの設置費用維持費はいくらか
4 監視カメラを設置した不法投棄場所の地理的な特性、主な廃棄物は何か
5 監視カメラを設置したことによって不法投棄は減ったか
6 監視カメラを設置したことによって検挙された人はいるか
7 監視カメラを設置したことによる問題点はあるか
8 監視カメラの設置以外にとって要る対策は何かあるか
回答
1 平成12年8月
2 不法投棄常習地点が多数あり、夜間休日を含めた監視体制の強化のため
3 年間500万円程度
4 主な廃棄物 家電・木屑・プラスチック屑・鉄屑・建築廃材・引越しに伴うごみ
地理的特性 夜間人通りがなく、人家から離れておりかつ車を止めて作業できる場所
5 カメラを設置した場所では以後の投棄はない
6 いない
7 カメラ設置場所以外に投棄されている恐れが多分にある
8 不法投棄専任監視員の任命
郵便局との情報提供に関する協定
不法投棄監視委員の任命
職員によるパトロール
警備会社への不法投棄監視業務委託
3-3-3 ヒアリング内容
事前に送ったファックスでの回答と合わせて市原市市役所で話を聞いた。監視カメラを設置した理由は不法投機常習
地点での、夜間、休日の監視体制の強化のためである。監視カメラ設置場所は、夜間人通りが少ない、民家から遠い、
車を止めて作業をすることができる不法投機の典型的な場所である。常磐道側道でもたくさん見られたような引越しご
みや、家電・木屑・プラスチック屑・鉄屑などが捨てられている。監視カメラを設置するときに3日間延べ100人程の人
数で不法投機された場所を片づけた。監視カメラを設置しない場合1ヶ月程で元のごみがたくさん捨てられている状態
に戻ってしまう。監視カメラ設置以後は設置された場所に限ってはごみは捨てられていない。問題点は監視カメラ設置
場所以外でのごみの投機が無くならないこと、監視カメラを破壊される恐れがあること、新型の太陽光エネルギーを利
用したカメラは天気の悪い日に働きが鈍ることがあることなどがあることを聞いた。
3-3-4 監視カメラ設置場所の見学
市原市では4個所監視カメラを設置している場所がある。その内2つの場所を実際に見てきた。1ヶ所目は川沿いに走る
道である。やはり人通りはほとんどなく、近くに民家がなく、車を止めてごみ捨ての作業ができるところだった。設置
はされているものの監視カメラに写らない場所は草が覆い茂り不法投機場所となりうると考えられる。2ヶ所目は、
2車線ある道路で、ちょうどわれわれが掃除した近くの常磐道側道のような道路だった。車を止めるスペースがありぽ
い捨てにはちょうど良い場所だが、昼間の車通りは多いので主に夜間捨てられていたのではないかと考えられる。現在
は車を止めるスペースを杭とロープで囲み入れないようにした上で、監視カメラを設置した。
3-3-5 考察
以前はごみがたくさん捨てられていた場所も今は監視カメラによって捨てられてはいなかった。実際に監視カメラを
置いていないところで新たな不法投機場所が発生していたので、監視カメラの効果は設置した場所だけであるが、設置
した場合その場所では効果があるといえる。4ヶ所のカメラ設置で年間500万円は不法投機の場所となりやすいとこ
ろがたくさんある人口の少ない町では安いとはいえないが、片づけるのに多大な苦労をすることを考えれば設置を
考えても良いのではないかと考えられる。
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